カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

この町の闇

「地下に、シェルターが……?」

「そうだ、あいつらは地下の世界を作り、あろうことか、身分の低いものたちを弾圧した……」

crallessさんは、シェルターの中で起きていることを、詳細に語ってくれた。




この世界は、力の強いやつが正義だ、レベルの高い状態で、この街にたどり着いたやつは、レベルの低い先住民たちを支配していった。

そんな時、誰かが「地下にコロニーを作ろう」と言った。

レベルの低い者たちに地面を掘らせ、彼らは奴隷のような扱いを受けた。そうして掘られたコロニーの中で、レベルの高い者は何食わぬ顔で平穏な日々を送った。

「今度は俺が王だ!!」

「王の座は渡さん!!」

しかし、そんな状態で、平穏な日々など続くはずがない、地下のリーダーの座を巡り、争いが起こった。地下の王は、代わる代わる変わっていく。地下を掘り続けていたはずの奴隷、王のすぐ側で仕えていた側近、色んな立場の人間が王の座が欲しくて血を流す……




「どうだ? 怖ぇだろ? 地上にいるゴロツキどもは、王の支配から逃れようとひたすらに足掻いた奴らだ。その後ろには、壮絶な脱走劇があったはずだぜ?」

地下の帝国……一体どんなに恐ろしいところなんだろう……?

「じゃあ、crallessさんも、元々は地下に?」

「いや、あたしは後から来た。富裕層のクズ共を逆に利用してやろうと思ってな、」

「王の暗殺は……依頼されたりしないのか?」

「あたしらに頼んで王を殺して、『王は死んだから自分が王だ』なんて言っても、誰も聞いちゃくれねぇと思うぜ?」

「できることにはできるのか?」

「朝飯前だよ、もっとも、真正面からぶつかれってんなら話は別だがな、」

近接戦闘じゃ、王に勝つことは出来ないって訳か、

「シェルターの中で、人々はどんな生活をしてるんですの?」

NARIELさんの質問に対して、crallessさんは少し、眉をしかめた。

「普通に生活してるよ、やつら金が有り余ってるのか、カジノで集まってギャンブルやったり、闘技場で、強えやつ2人戦わせて、どっちが勝つか賭けるみたいなのもやってる、あんまりそこら辺には首突っ込まねぇ方がいいぜ?」

「シェルターはどこにありますの?」

「それは……」

「私が教えてあげるよ、」

しのがそう言って、そちらを見ると、しのがいつの間にか新しい仮面を被っていた。

「その仮面は?」

「スペア、こっちには呪いがかかってない、」

そういうと、しのは仮面を外し、もう一度素顔をのぞかせた。その後、再び仮面を戻した。

「もうみんなに素顔バレちゃったし、次からはこっちをメインで使おうかなって思ってる。」

その方がいいよ、わざわざ呪いの仮面被って自分を追い込む必要無いと思う。

「で、シェルターへの行き方だったよね? 私たちが最初に降りてきた場所から、右の路地に入ると、廃墟のお店が沢山並んでるゴーストタウンみたいな場所に出るの、」

ゴーストタウン、住んでる人が居なくなって、家や建物だけしか残らなくなった街の事だ。この隠れ家には、左の路地を進んで辿り着いたから、それと逆の方向に向かえばいいわけだ。

「そこの赤い屋根の1番大きな家の近くに、見張りの人がいるから、そこでゲートカードを見せると入れるようになる。」

「ゲートカード……?」

「これのこと、」

しのは、赤色のプラスチックカードのようなものを見せた。

「これを持ってる人、もしくはこれを持っている人の紹介を受けた人が入れる。」

会員制なんだ、誰もがシェルターに入れるわけじゃないんだな……




「さて、随分話し込んじまった。日付もとっくに変わってらァ、ここまで来ちまうともう外に出ることさえ危険行為になる、ベッドルームがあっから、そこで寝な」

crallessは、ベッドらしき影が見える暗い部屋を指さした。

「電気はぶっ壊れてっから付けんなよ?」
 
「crallessさん達はベッド使わないんですか?」

「あたしらは立って寝る。寝首を掻かれて死ぬのはごめんだからな。」

「Phoviaさんは?」

「私ですか? 私は今日は徹夜で実験をするつもりです。」

ちゃんと寝ようよみんな……いつか体壊すよ……?

「それじゃ、厄介になろうかな、」

私たちはベッドルームに向かった。部屋の中には、何台かのベッド、マットレスは少し固めで、老朽化しているのか結構ギシギシ言う……

「なるほど、従業員用の仮眠スペースみたいな場所だったのかな。」

「まぁ、眠れるならどんなベッドでも大差ないですわ、」

お嬢様口調のくせに意外と物にこだわりが無いんだな……

私は硬いベッドはあまり好きじゃない、幸い、この部屋にはベッドが沢山あるので、ある程度試して、1番寝やすそうなベッドで横になった。




「……ミさん……クミさん……起きてくださいまし……?」

「う~ん……なんですか……?」

暗くて顔が全然見えない……口調からしてNARIELさんだと思うけど……

「いえね、わたくしに少し付き合ってくださいませんこと?」

「へ?」

「先程、シェルターへの行き方教わりましたわよね、」

「教わりましたけど……まさか、行くんですか?」

「実は私、現実世界では、かなり厳しい家に生まれて、色々なお稽古をさせられたり、不自由な生活でしたの。」

お嬢様だな……

「それで私、色々な『悪い事』に憧れを抱いてしまって……その中のひとつが、『ギャンブル』でしたの」

出たぁ……お嬢様が悪癖にハマる典型的なやつ……

「それで、今からここを抜け出して、シェルターのカジノに行ってみませんこと? ゲートカードなら幻で作れますから、見張りの目はごまかせますわよ?」

「……あなた自分が何を言ってるかわかってます?」

「全く、私は止めたんですよ!!」

ポンちゃんが怒鳴るように言った。

「止めたんですけどこの人が『またとないチャンスですのよ!』とか抜かしやがりましてね!ぼくは巻き込まれたくないから行かないって言ったら『じゃあ一人で行きますわ』とか言って、1人でこの人を歩かせるわけに行かないでしょ!! !!」

めっちゃ大きい声で怒鳴り散らしてるけど、多分これ幻聴で話しかけてきてて、Tellさんには聞こえないから起きないんだよな……

「そういうことですの、なんかあったら化かせばいいんですし、一緒に行ってくれませんこと?」

「……えっと、」

真っ暗な部屋でも、NARIELさんの目が輝いているのが見える。

「分かりましたよ……行きましょ、」

「やった~!!!」

はぁ、どんな目に遭っても知らないぞ……

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