カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

守られるべきもの

「ネームレス……? 何を言って……?」

「聞こえなかった? 『KUMIを守れ』と命令したの」

誰も、この状況を飲み込めてはいなかった。全員分からなくなっていた。自分がどうするべきか……

「私はもう向かってるよ、KUMIちゃんの元に、」

そんな、ネームレスが、こっちに来ているの……?

「これ……私たちどうすれば……?」

「マーカーストーンを捨てろ、場所を移動する。」

私は襟元につけたマーカーストーンを外し、足元の草むらにそっと捨てた。

「どっちに行く?」

「さっきGENNのいた方向から遠ざかるように進みましょう、」

ネームレスの指示は続く、

「みんなでKUMIを探すんだよ、GENNよりも先に、」

「わ、わかった。」

とりあえず、みんなネームレスの指示に従い、ネームレスのことを刺激しないようにするつもりのようだ。

「みんな近づいて来ているな、マーカーストーンの方に」

「そうみたいですね、」

どうするのが正解なのかも分からない。みんなと合流した方がいいのか、それとも逃げるべきなのか……

「今チームAは、ネームレスの指示によって動いている。下手に合流したらどうなるか分からない。」

じゃあネームレスを遠ざけるためにも、誰とも合流しない方がいいってことか、

「どこか、隠れ場所を見つけよう、」

私たちはチームAのメンバーのマーカーストーンを、マップで確認しながら、彼らから遠く離れた地点に身を潜めた。

「ここなら安全かもしれない、しばらくここにいようか、」

「分かりました。」

ジメジメとした暗い木の洞、樹齢何年かも分からぬ巨木に、私達二人が入れそうなほどの空洞があった。

「しばらくはここで隠れるしか無いね、」

なんだか、こうして暗い森の中で2人でじっとしていると、私たちが初めて出会った時のことを思い出す。




「そうだ、何かお話をしてあげよう、俺がこのゲームで最初にスポーンした街の話」




あの時は、Tellさんが最初にスポーンした街の話を聞いたんだっけ




「本当は、誰にも迷惑をかけないで、死にたかったんだけどな……」




Tellさん、やっぱり私、怖いよ、このまま死にたくなんてない、




私の目的は『Tellさんと一緒にいる』ことであって、『Tellさんと一緒に死ぬ』ことではなかった。




Tellさんと一緒がいい、でも死ぬのは嫌、

やはり私は死ねない……できることなら……Tellさんと一緒に……『生き』たい……

「Tellさん、私作戦を思いつきました。」

「……えっ?」

「この島を出ましょう! GENNにもネームレスにも見つからないうちに!」

「なっ!? RAYたちを見捨てろってのか……!?」

みんなが大変になってる時に、自分勝手すぎるかもしれない、

それがなんだ、『自分勝手で何が悪い』、私はこの人と一緒に生きていく!!

「こんな場所にいたら、いずれ見つかって殺されます!」

「無理だ!! 俺は仲間を見捨てることなんてできない!!」

「なんでですか!!」

「KUMI、どうしたんだよ急に、呪いの装備のせいで、おかしくなってるんじゃ……」

「お願いです……私、死にたくないんです……でも、Tellさんとも離れたくないんです……!!」

「落ち着けって!!」

「バサバサッ!!」

「カァ~カァ~カァ~……」

私たちの声に驚いたのか、近くでカラスが飛び去った。

「なぁ……大丈夫だよ……きっとRAYたちが何とかしてくれるって……」

Tellさんが、優しくそう言ってくれて、ようやく私は我に返った。

「すいません……気が動転してました。」

「君のせいじゃないよ……その剣のせいだ。ソウルスラッシャーはゴーストに高いダメージを与える武器だ、きっと『死』への恐怖や、『死』に対する怒りなんかが、呪いとして込められてるんだろう……」

じゃあ私は……その武器の呪いに、取り込まれそうになっていたのか……

「落ち着いたみたいだね、良かった……」

でも、まだ恐怖は消えない……いつ襲い来るか分からぬ敵に対しての恐怖、それによってもたらされる死への恐怖……

「ねぇ、Tellさん、」

「どうした?」

「わたし、ずっとTellさんに聞きたかったことがあったんです。」

Tellさんはすごく強くて……並のモンスターになど絶対に負けない、そんな人がどうして……

「どうして、そんなに死にたがるんですか?」

「……どういうことかな……?」

「Tellさんだったら、弱いモンスターしか襲ってこない街でだったら、絶対静かに暮らせてると思うんです。『死ぬ瞬間までゲームを遊び尽くす』って、Tellさんは言ってましたよね?」

「ああ……そうだね、」

「でも、このゲームを遊ぶって言うことは、その分、自分が死ぬリスクも増えるはずなんです。安寧を捨ててまで冒険を続けるには、『遊び尽くしたい』って理由だけじゃ、弱いと思います。」

Tellさんの顔が少し曇った。

「教えてくれませんか? 『本当の理由』を……どうしてそんなに、死に執着するのかを……」

「……………………」

Tellさんはだんまりしながら、足元の虚空を見つめている。

「……ダメですかね?……理由を聞いちゃ……」

Tellさんは少し考えた、そして小さくため息をついた

「いつかは話しておかなきゃと思ってたんだ。いいよ、話してあげる」

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