カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

狙われたのは

「ビュンッ!!」

目の前から急にネームレスの姿が消えた!

「バァウ!!」

「カーンッ!!」

ネームレスは一瞬で上に移動し、空中から攻撃してきたが、ライナの巨大な犬歯がネームレスの刃を受け止めた、するとすぐさまレフィーナも大きく口を開け、そのまま噛み付こうとするも、ネームレスは2つの頭から逃れ、ダークオルトロスの体の下へと潜り込む、

「下だよ!!」

「グルル……ワン!!」

ダークオルトロスは華麗にヒラリと交わし、ネームレスの下からの攻撃も当たらなかった。

その上、前はダークオルトロスが、後ろ三方向は、キエちゃん、ランタロウ、アイちゃんに囲まれ、ネームレスの逃げ場を封じた。

「アイちゃん! ブレス!」

「ガァウ!! ビュオオオオオ!!」

強力な氷属性攻撃、地面さえ凍らせる程の攻撃により、ネームレスの足元が凍りつく、

「こ、これは!?」

ネームレスは身動きが取れなくなった、これで倒せるか……?

「ランタロウ!! 岩吐きアタック!!」

「ガァァウ!!」

ランタロウの口から吐き出されたのは、いくつもの巨大な岩だった。身動きが取れないこの状況なら、倒せる!!

「無駄だ!!」

「ゴォォォォ!!」

「なっ!?」

彼女の手足から放たれたのは、青色の炎だった。炎を手足から勢いよく放出することで、足元の氷を溶かし、そのままジェット機のように空へと上昇した。

「そんな、逃げられた!?」

まさか義足と義手にジェットを搭載していたとは……一体幾つの仕掛けを施しているんだ……?

「悪いけど、あんた達には構ってられないんだよね!」

「いいから降りて来なさい!!」

なんてやり取りをしていたため、ネームレスは、私たちの仕掛けた罠に気付かなかった。

「隙あり!!」

「シュルルっ!!」

「何っ!?」

二階の窓から放たれた縄が、ネームレスの体に巻きつき、彼女は窓から中へと引きずり込まれた。

「NARIELさん早く!!」

幻撃・眠り香げんげき ねむりが!!」

「グッ……!!」

……NARIELさんの幻術が発動した瞬間に、周りは静かになった。眠り香というくらいだから、彼女は眠らせられたのだろう。ともあれこれで、作戦成功だ。




「おはよ、どうしたの? みんな揃って、」

眠り香をくらって眠ってしまっていたネームレスだったが、すぐに起きてしまった。

しかし、恐ろしく手際の良いTellさんが、一瞬で両手両足をぐるぐる巻きにしてしまったため、ネームレスは暗器を出せない状態であった。

「お前は今拘束されている。」

「見ればわかるよ、そのくらい」

「依頼主の名前を教えろ!」

「難しい相談だね。」

「言わなければ拷問するかもしれないぞ?」

「したらいいんじゃない?」

「爪でも剥がしてやろうか……?」

「剥がされても義手だから痛くないよ?」

いちいち返してくるな……ああ言えばこう言うみたいな……

「ならば、お前が依頼主を言うまで拘束させてもらう。じゃないとTellの命が危ないからな……」

RAYさん、普段声高いのに、人を追い詰める時はそんなドスの効いた低音も出せるんだ……

「じゃあ悪いけど、ちゃんとご飯とか食べさせたり、お世話してね? 私が空腹で餓死したら依頼主の名前吐けないよ?」

「ああ、分かっている、」

仮面の状態でどうやって食べさせたらいいんだろう……

「とにかく、お前が依頼主の情報を吐けばすぐに済む話だ、早く吐け!」

「だから言わないって……」

脅しは効かないか……

「どうやら言う気は無いらしいな、じゃあまずはその仮面を外させてもらうぞ、」

RAYさんはネームレスの仮面に手をかけたが……

「グッ……グッ……」

「あ、あれ? ……外れないんだが?」

「ああこれ、呪いの装備だからね、1度装備したら外せない」

「なんだと!?」

「えっ……? じゃあ、物とか食べる時……どうするんですか……?」

「そういう時は仮面を透過モードにしてすり抜けさせる」

思ったよりハイテクだな……その仮面……

「呪いの装備は、同じ呪われた武器でしか壊せない、だから私の仮面を壊すこともできない、」

私たちに、ネームレスの素顔を知る術は無いという事か……

「……そろそろ君たちの話は終わったかな? 次は私の話をしてもいい?」

「何か、俺たちに話したいことがあるのか?」

「うん、Tell君に相談がある。ちょっとした取引をしたくてね、」

私たちと……取引……?

「取引だと……?」

「うん、私もね、依頼主が何を考えているか分からないんだ、だけど『殺す前に、Tellが自殺を遂行した場合は依頼は取り消す』って言ってたんだよ。」

「何……?」

「だからね、KUMIさんとのパーティを解散して、そのまま君が死んでくれれば、私は誰にも手は出さない。もちろんこの時、KUMIちゃんは後追い自殺をしないということも条件に加えておいてね?」

「そんな取引、するはずがないだろう!!」

RAYさんがテーブルを思いっきり叩きながら叫んだ。

「俺たちは、Tellを守るためにこの島まで来たんだ!! だから絶対に……」

「もしかして勘違いしてる?」

「……勘違い?」

一瞬だけ、時が止まったように、沈黙の時間が流れた……そして、ネームレスは私たちに、次のように告げた。

「私が受けた依頼は、Tell君を殺す依頼なんかじゃない……この島にいる、Tell君以外全員の抹殺だ……」

「……ッ!!?」

「なんでこんな依頼を私にしてきたのかは分からない、でも私にはどうでもいいんだ、『KUMIちゃん以外』の人間の生き死になんて、」

「そ、そんな!? やめてください!! 私にとってTellさんは仲間だし、Tellさんの仲間のギルドメンバーも、アミカさんも、NARIELさんも仲間なんです!!」

「分かってるよ、KUMIちゃんが死んで欲しくない人を私も殺したくない、でもこれは必要な犠牲なんだ。死んで欲しくない人が1人死ぬのと、1人以外みんな死ぬのと、どっちがいいかなんて分かりきってるでしょ?」

「そんなの……そんなの…………」

選べない、私に選べられるはずがなかった……不安のあまり、勝手に涙がこぼれる……目の前がぼやけて、何も見えなくなってしまった……

「……ネームレス、提案がある。」

見かねたTellさんが、そっと口を開いた。

「……何かな?」

「俺がお前に、暗殺を『依頼する』のはどうだ?」

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