カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

険しい道のり

次の日、また、登山を再開する。

「ここから、かなり斜面がきつくなってきます。」

「じゃあ、必要かな?」

Tellさんは自分のアイテムストレージから、2本の杖を取りだした。

「これは?」

「ただの登山用の杖だよ、魔法は使えない」

私たちは杖を使って、傾斜面を進み続けた。その間ナヴィエは宙に浮かんでいた

「……ずるいな、妖精は、」

「KUMIさんも飛べば良いんですよ、」

飛べるような魔法が使えたら苦労しないよ、

「Tellさん、本当にこれ、魔法は使えないんですか?」

「う~ん……修行すれば使えるようになるかも、」

「修行……するんですか?」

「元々魔法使いは、己の精神力を高めて、自身のspを貯めることで、ようやく魔法が使えるんだ。その修行の一環で山を昇ったりするから、その時に杖が必要になって、結果、杖と魔法は切っても切り離せない関係になったんだよ。」

「へ~そんな歴史があったんですね……」

「でも、才能のある人間は、元からspが用意されているから、修行なんてしなくても、ある程度は魔法を扱えるんだけどね」

じゃあ、私たち冒険者はみな才能がある人たちなんだな……

「KUMIさん気をつけて!!」

「えっ!?」

急にナヴィエに引き止められる。よく見ると、足元に大きな穴が空いていた。氷が割れて出来たものだろうか? かなり奥まで続いている。

「クレバスです、落ちたら死ぬと思ってください。」

じゃあ今めちゃくちゃ危なかったじゃん!!

「クレバス、氷で出来た割れ目のことだね、落ちてしまっても救出出来ず、そのまま何年も後に死体が発見されたケースもある。」

「それ、現実の話ですか?」

「ああ、現実世界の話だ。」

そんなものゲームの世界にまで作らないでよ……

「この道は通れないから、回り道していこう、」

「そうですね、」




長く険しい道のりを越え、今度は緩やかな斜面になった。

「このまま真っ直ぐ行けば、例の村へとたどり着きます。もう少しだけ、頑張ってくださいね!」

ワゴウ村、確か、死を神聖視する村だったな、果たしてどんなところなのだろうか……?




「ほら、着きましたよ、ここがおふたりに暮らしてもらう村です。」

私たちは目の前の景色を見て驚愕した。もちろん悪い意味でである。私たちが今まで見てきた町とは、比べ物にならないほどの静けさであった。人は1人も見当たらず、生い茂る常緑樹たちの葉と、それに積もる雪のせいで光は全く届かない。村全体が大きなかまくらのようだった。

「こんなとこで暮らすの…………?」

「いい所じゃないですか、 風情があって、」

風情って……そう言えばなんでも許されると思ってるのか、

「ま、まぁ……少しの辛抱だから、それに、たまにはこういう所もありだと思うよ?」

「そうですよ! 住めば都と言うじゃないですか? ねぇ? KUMIさん?」

都とは、全く思えないけどな、私は、

「まずは村の長老さんに、住める場所を手配して貰いましょう。」

まじか……こんな寒いところでどうやって住むんだよ……




長老の家は、ルシルさんに見せてもらったのですでに知っている。

「ここだ、ルシルが拾ってきた画像と同じ家……」

「1回、ノックしてみますか、」

「コンコン…………」

ノックをしても、何も反応がない、

「コンコン…………」

「ボソボソ…………」

誰かなにか喋っているが全く聞こえない、低く嗄れた声だ、周りがこんなに静かじゃなきゃ、絶対聞こえなかっただろう、

「コンコン………」

「……ま……ますってば……」

だんだん聞こえてきた。でもはっきりとは聞き取れなかった。

「コンコン、ガチャ」

「うわっ!?」

ノックをしてすぐ、ほぼノータイムでドアが開き、腰の曲がったおばあさんが現れた。

「今、行きますと言うとろうが、……全く最近の若者には辛抱というものが無いねぇ……お主らは冒険者かい……こんな何も無いところにわざわざ来てくれたのはうれしいが……ちと騒ぎすぎじゃあないのかい……?」

おばあさん、よく喋るなぁ……ところどころ長い間があるけど……

「お主らの頼み事などよ~く分かっておる……この村には宿屋も何もないからのう……村の資料置き場を宿として貸し出すことになっとるんじゃが……それが辛抱出来んなら……諦めて帰ってはくれんかのぅ……」

「いえいえ、それで十分ですので、暫くの間、お貸しして頂けませんか?」

「ならそこの隣の建物が資料館じゃからのう……そこで寝泊まりしてくれんかいのぅ……」

「ありがとうございます。」

「じゃが、この村にしばらくとどまるなら、この村の掟を守って貰わにゃならん、まずは共に資料館へ行こうや……」




資料館はとても古びていたが、とても綺麗に掃除されていた。

「え~と……どこじゃったかのぅ……」

おばあさんが机の上を探していたところに、

「長老様、」

と、女の人が誰かを呼ぶ声がした。

「ん?……なんじゃ?」

「あなたのお探しの物は、これではないですか?」

その人は、おばあさんに1枚の紙切れを渡した。

「ああ、これじゃこれじゃ……ありがとうな……」

「ふふ、どういたしまして、」

彼女は何故か、目を閉じたまま、こちらを見ようとはしなかった。なのにも関わらず、彼女はおばあさんの手の位置を把握し、紙をしっかりと渡している。その後、私たちが見えているかのように、私たちに対して、まっすぐ体を向け、ゆっくりとお辞儀した。

「初めまして、NARIELナリエルと申します」

「俺はTell、」

「KUMIです、初めまして、こっちはナビ妖精のナヴィエです」

「よろしくお願いします!」

「なるほど、皆さんの声は覚えました。ありがとうございます」

どうやら目の不自由な人のようだ。

「君はプレイヤーなの?」

「はい、冒険者をやっていますわ、」

「ちょうどいい……ナリエルや……後輩たちに教えてやれ……」

「わかりましたわ。長老様、」

私たちはNARIELに連れられ、奥の部屋へと案内された。

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