カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

不思議な仕掛け

「さて、先に進むか、」

「ガチャ……ガチャガチャ……」

本を読み終わり、次の部屋に進もうとしたが、ドアは開かなかった。 

「どうやら、鍵がかかっているみたいだな、」

「面倒くさ……ここから謎解きかよ……」

なにか特別な操作をすることで、鍵が開くのだろうか?

「とりあえず、部屋のあちこちを手分けして探しましょう、鍵をとく暗号が隠されているかもしれません。」

まず私達は、ポルターガイストが散らかしたものの片付けから始めた。

「この本は?」  

「あっちの本棚にあったやつだね、」

「分かりました。」

1冊だけ、バラバラに切り裂かれた本があった。これはTellさんが斬ったものだ。

「……パサッ…………」

バラバラになった本から1枚の紙が落ちた。紙はは4つ折りになっており、どこかのページにはさまっていたようだ。奇跡的にTellさんの剣からは逃れられた。

「Tellさん、なんでしょうこれ?」

「ん? これが謎解きのヒントなのか?」

その紙には特に何も書かれてはいなかった。普通の古びた紙だ。

すると、ルシルさんがおもむろに紙を手に取り、自分の顔に近付けた。

「ん……この紙、ほのかに柑橘系の香りがする」
 
柑橘系……? どういう事だ……?

「なるほど、 炙り出しか、よくサスペンスとかでみるやつだよ」

えっ、炙り出しって柑橘系でやるの?

「確かに、みかんとかの果汁なら、熱を加えると酸化して色がつくかもしれん、」

知らなかった……現世に帰ったらやってみよう、

「ちょっとKUMIさんさ、小さめのファイアボールって作れる?」

「えっ!? そんなことが出来るんですか?」

「イメージとしては、指先に1ミリ位の穴が空いて、そこから魔力を少しずつ放出する感じだな、」

「うん、ガスコンロでいえばとろ火くらいのを出してみて?」

指に穴が空いたこともなければ、料理でとろ火を使ったこともないんだよな……

「とりあえず、やってみますね、」

意識を集中し、小さな火の玉をイメージする。

「ファイアボール!」

「シュボッ……」

ライターの火をつけるような音が聞こえた。イメージ通りの小さな火の玉が、メラメラと輝きを放っている。

なんだ……結構簡単じゃん、次から、何かに火をつける時はこれを使おう。

「おお、出来たじゃないか、」

「じゃあ、これで紙を炙ってみて?」

「分かりました」

紙に火を近づけてみると、黒く焦げたあとが文字になって浮き上がってきた。

「これは……なんでしょうか?」

そこには暗号文のようなものが書いてあった、

『 イタミハナイ

  イシカタノツミノミヲ

   タオレタ』

「痛みは無い……?」

「全部カタカナなのが気になるな、」

なにかヒントのようなものは無いのだろうか? どういう意味なのか全く分からない。

「とりあえず、暗号は任せた。こういうのはあまり得意じゃない。」

ルシルさんが早々に離脱した。

「何か無いか、とりあえず、闇雲に探してみる。」
 
そんなんで本当に見つかるのかな……?

「どこかにヒントがあるはずだ。最初の『イタミハナイ』っていうのが気になるな。」

痛みは無い……イタミハナイ……

「しっかしまぁ、なんとめんどくさい仕掛けなんだろうか……」

「とりあえず、『イタミハナイ』の部分を解釈してみようか、」

もしかしたら、最初の一行がヒントになっていて、それを残りの2行の暗号文に当て嵌めるという形式なのかもしれない。

「あれは、鹿の頭の剥製か、随分と高い位置に置いてあるな……」

「分かったぞ! 『イタミハナイ』ってことは、暗号文から、『イ』『タ』『ミ』を無くせばいいのか!」

「なるほど!!」

「ん? ……こいつ、動くぞ……?」

「ってことは、『   シカ   ノツ   ノ   ヲ   オレ   』『鹿の角を折れ』だ!」

「ガチャン!!……」

「…………ごめん、もう折ってた。」




「ギィ……」

「開いたな、」

鹿の頭の剥製は、片方の角がレバーになっていた。通常より高い位置にあった為か、私たちからはよく見えず、仕掛けが施されているとは気づかなかった。ルシルさんも随分と目の付け所が良かったな、

「よし、先に進むか、」

「そうですね、」

しばらく歩いていくと、またドアが見えた。

『監獄』

というタイトルの絵、鉄格子で区切られた檻の中には、旧約聖書の悪魔のような姿をした生物が、人の頭蓋骨をまじまじと眺めている姿がある。

「ギィィ……」

先へ進むと、廊下のような細長い通路があった。右を見ても、左を見ても、鉄格子の檻からのぞく、先程の生物の目がある。彼らは皆同じ姿をしており、黄色の識別タグの様なものを腕に巻いていた。

「ギギッ!! シャーーッ!!」

「クケケケ……!!」

不気味な笑い声を出す者や、威嚇をする者、みな私たちを快くは思っていないようだ。

「あれ? この檻だけ、中に何もいない……?」

一つだけ空室があった。識別タグが引きちぎられ、置き去りにされたままになっている。何者かが閉じ込められていた事は間違いないだろう、

「これって……」

奥には、古びた机があり、何枚かの便箋と、羽根ペンと、インク瓶が置かれていた。どれもほかの檻の中には無かった代物だ。

「なっ!? おい!! あそこを見てみろ!!」

「えっ!? ひゃあぁっ!!?」

ルシルさんが声を荒らげ、指さした先には、大きな赤黒い血溜まりができていた。

「羽根ペンに便箋……もしかしてこの檻、JHARIBANが閉じ込められてたんじゃないのか?」

そうかもしれないけど、だとしたらこの血溜まりは……? JHARIBANさんは死んだの……? そもそも、こんな訳の分からないダンジョンにJHARIBANさんがいるの……?

再び頭の中の声が話しかけた。

「そんなに心配しなくてもいい、これは彼女が見せている幻覚だ。JHARIBANだと言ったね? 彼女が探している人物、生きていると信じている人物、しかし、生きていると信じようとすればするほど、死への疑心は深く、濃くなっていくんだ。光が強ければ強いほど、影は濃くなるようにね、」

もう、なんでそういう意地悪なこと言うかなぁ……

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コメント

  • 蛇使い座のな~が

    リアルの方でビッグイベントが積み重なり、小説の方にあまり手を出せない状態がかなり続いていました。今日からまた、なるべく投稿頻度を上げていこうと思います。

    0
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