カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

隠された不思議

「ギィィ……」

宝箱には、1枚の地図が入っていた。

「これは……ダンジョンマップですか?」

「そのようだね、」

確かに、地図に書かれている道は、私たちが今までに通った場所と地形が似通っていた。

「恐怖を感じる最大の要因、それは、『分からない』こと、その事実に対してなにも分からないからこそ、畏怖の念を抱くんだよ、」

確かに、この彫刻でも、正体不明の真っ黒い怪物に襲われている人がいるが、その人物は手で目を覆ってしまっている。

何も見えていないからこのような姿の怪物であるように思えるだけで、本当は何も怖くないものなのかもしれない。

「それは、少しでもその『分からなさ』を解消してくれるものだ。でも、見方を変えれば、新たな『分からなさ』を生んでしまうかもしれないから、くれぐれも見る角度には気をつけて、」

見る角度って……どういうことだろうか?

「Tell、KUMI、ちょっとこの場所を見てくれ、」

ルシルさんの指さした場所には、広い空間があった。

「他の部屋からは切り離されているな、完全に独立した空間らしい、」

「おいおい……どういうことだ? どう頑張っても、この部屋には入れないぞ?」

「どうにかして入る方法があるのかも、」

「でも、この部屋に入ったとして、どこにも繋がってないんだぜ? どうやって帰ってくるんだ?」

すごく嫌な予感がするのは気の所為だろうか、この部屋に何があるのか『分からなくて』むしろ恐怖を感じているような……

「気にしても仕方あるまい、あいつは『見方を変えれば新たな分からなさが生まれる』と言っていた。恐らくこのことを言っているのだろう」

「確かにそうだな、この部屋のことを気にするのは、この部屋に入ってからでいい、」

良かった、みんなカルキノスの術中にハマらなくて済みそうだ。




次に現れた部屋には、絵が飾られていた。

『騒霊』

空中に様々なものが浮かんでいる絵だ。この部屋は書斎だろうか、本棚に収められていたであろう本が蝶々のように飛び回っている。
花瓶やロウソクなんかも浮いている。

『騒霊』とは、ポルターガイストの事だ。おそらくこの部屋にはポルターガイストが居て、物を浮かしたりして、イタズラしているのだろう、

「ギィィ……」
「ガタガタ!!……ガタガタ!!……」

「うわぁっ!?」

部屋に入ると、途端に部屋が揺れ始めた。確かにポルターガイストがいるようだ。

「バサッバサッ……」

近くの本から一冊の本が宙へ飛び上がった。背表紙を上にして、開いて閉じてを繰り返して飛んでいる。まるで蝶々のようだ、

「多分本体はあの本じゃない、きっと本を持っているゴーストがいるはずだ。恐らく……」

Tellさんは本が急降下し、攻撃してきたタイミングで、

「ここだ!」

「ズシャンッ!! バサッ……」

本の背表紙の、すぐ上の空間に一突きを入れた。

「本を蝶々みたいに飛ばせるためには、上から包むようにして本を抱え込み、バサバサと開いて閉じてを繰り返す必要がある。」

あいつら見えないとこでそんなことやってたのか……

「へぇ、そう考えるとポルターガイストって意外とちっちゃいんだな、」

目に見えないのが残念だ、見えたら絶対可愛かっただろうに、

「こうやって、部屋にいるポルターガイストを全員倒せばいいんですかね?」

「そうじゃない? でも、絵を見た感じだと結構な数のポルターガイストがいたよね、」

「関係ないな……1匹1匹対処していくだけだ。」

その後、また部屋が大きく揺れ、今度は大量の本が飛び上がった。急降下してくるタイミングで、攻撃を食らわせる。Tellさんにならって飛んでくる本のすぐ上の空間に攻撃した。

「ズシャンッ!!」

確かになにかを斬る手応えがあった。確実に1匹ずつ減らせてはいるようだ。

「ビュウンッ!」
「うわっ!?」

今度は本が閉じたまま、放物線を描いて飛んできた。

「シュパンっ!! バサーー!!」

飛んできた本をTellさんが斬ると、ほんのページはバラバラになり、床に飛び散った。

「今度は飛んできた『物自体』を斬るんだ! 奴らは投擲とうてきに切りかえたぞ!」

本だけでなく、花瓶やロウソク、果てには椅子までもが宙へ浮かんでいく、

「こんなに沢山……私たちで捌ききれるんですか……?」

「致し方ないか……ここは私に任せておけ、」

ルシルさんが前に出る、宙へと浮かんでいた物たちがいっせいに、ルシルさん目掛けて飛んでいく、

「リフレクティオ!」

「キーン カキーンカキーン カキーン……」

「ズキャンッ! ドガッ! ズキャンッ!」

目の前にバリアが出現し、飛んできたもの達を全てはね返した。はね返ったものは皆、本体のポルターガイストに当たり、全員倒れたようだ。

「まぁ、ざっとこんなもんだな、」

「リフレクティオ使えるって珍しいな、」

「確かに、かなり覚えるのが難しい魔法だからな、その点私は運が良かったのだろう、」

そういえば……




「待て! サンダーストーム!!」

「リフレクティオ!!」




黒ギルドのボスも同じ魔法を使っていたっけ、あいつはきっと、他のプレイヤーや、NPCの虐殺によってレベルを上げて手に入れたのだろう……

「もしかしてルシルさん……」

「そんなわけあるか、私だって真っ当に生きてるよ……」




「そんなことより、全員のポルターガイストを倒したことだし、次に進めるよ、」

Tellさんにそう言われ、ドアに手をかけたその時だった。

「ん? なんだ? この本、」

ルシルさんが一冊の本を手に取った。その本には意外な名前が書かれていた。

「作者の欄に、『ライム』と書かれている、」

「えっ!?」

「ちょっと見せて、」

本の表紙には、『ライム童話:ジャリバンと不思議な剣』と書かれていた。

「それは彼女の記憶の欠片だ。読んでみてご覧、」

私はゆっくりと本を開いた……

コメント

  • 蛇使い座のな~が

    読者のFT君(イニシャル)本作品を読んでいますでしょうか?この度、私のスマホが壊れ、機種変をいたしました新しくなったラインのアカウントをお教えしたいので、電話をお願いします

    0
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