カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~
秘密の作品
「よ   う   こ   そ   ぼ   く   の   せ   か   い   へ」
気づくと、私達は複雑な色が混ざりあった不思議な色の壁に、四方を囲まれた部屋にいた。目の前の壁にはやはり青色の文字が書かれている。
「ようこそ僕の世界へ」
頭の中に声が響いてくる。
「誰ッ!?」
「どうやら、KUMIさんにも聞こえてるみたいだね、」
「私にも聞こえている。おそらくこの亜空間の主が私たちに語りかけているのだろう。」
頭の中の声は、稚拙な文章で語りかける青色の文字とは違って、少し知的な印象を受けた。
「僕の名はカルキノス、かつて画家だった者だ。と言っても、今は自分が何なのか、自分でも分からないんだけどね、」
本当にこの人物が、何人ものプレイヤーを殺した、ダンジョンボスなのだろうか?
「さて、先に進んでおくれよ、ドアを開けておくからさ、」
頭の中の声がそう言うと、壁から扉が出現した。
「よし、進もうか、」
私たちは、扉を開き、渡り廊下のような通路を歩いた。
「さあ、ここから、妖精たちの宴が始まる。妖精は、君たちを連れ去って仲間にしてしまおうとするから、隠れながら進むんだ。」
通路の先に、部屋があった。部屋の前には、あの時エンプラット美術館で見た、『妖精たちの歓迎』が飾られていた。
「進むしかないみたいですね、」
「そうみたいだな、」
扉を慎重に開ける。
「ギィィ……」
扉の先は迷路になっていた。所々、天井が欠けている。また、上から、微かに羽音が聞こえた。上で妖精たちが飛び回っているのだろうか?
「なるほど、妖精たちの目を盗んで、障害物から障害物へと移っていくステージだな、」
こんなのは、さっきまで大量の警備員を撒いた私たちには、簡単なミッションである。
何度か迷ったものの、簡単に乗り越えた。
「良かった、案外簡単にここまで来れましたね、」
「そうだな、」
恐らく、このダンジョンは、絵に描かれていたことと全く同じことが起こる仕掛けなのだろう、
先に進んでいくと、『捕食者の待ちぼうけ』というタイトルの絵が入口に飾られた部屋があった。山道に、ひとつのトラバサミが仕掛けられている絵だ。
「彼らは貪欲な捕食者だ、獲物が通りかかるのをずっと待っている。行く手を阻む障害が、上にある時もあれば下にある時もある。人は進んでいく限り、困難を避けて通ることは出来ないんだよ、」
頭の中の声は、私たちに何かを語りかけている、なにか、伝えたいものがあるのだろうか? 「進んでいく限り困難を避けることは出来ない」確かにその通りだとは思うが……
「どうしたの? 」
Tellさんに呼ばれて我に返った。危ない危ない、言葉を深読みしすぎて、危うく心理操作をされる所だった。
「置いてくよ? KUMIさん」
「あっ、待ってください、」
「ギィィ……」
大量のトラバサミが仕掛けられている。どうやらここは屋外、それも山の中らしい。あたりは木に囲まれ、道の整備も行き届いておらず、背の高い草も伸び放題だった。
「草むらに入っていくのは無理だな、トラバサミがあっても、草が邪魔して見えない。」
針に糸を通すように、慎重に、足を置ける場所を探す。もし、バランスを崩して倒れたら、それらは容赦なく私に噛み付いてくるだろう。
足の踏み場のないほど敷き詰められたトラバサミの、ほんの少しの隙間をくぐり抜ける。慎重に、慎重に進まなきゃ、トラバサミを作動させないように、少しずつ、
「ガシャンッ!!」
「グッ!?」
ルシルさんの方で音がした。
「大丈夫ですか!?」
「クッ……ダメだ、私の力じゃ外せない、」
やばい! 助けなきゃ! 急いで、かつ慎重にルシルさんの元に向かう、
「ガチッギィィィィ」
上手く外せた。2人がかりじゃないと外せないみたいだ。
「大丈夫だったか!?」
「はい、上手くはずせました。これからは、3人固まった方がいいかもしれません。」
3人で、お互いにトラバサミを外し合う体制で進んだ。この作戦が幸をそうして、ついにトラバサミステージを突破することが出来た。
「君たちはとても脆弱だ。だからこそ強固だ。弱いからこそ周りと繋がり合い、繋がり合うからこそ強くなる。」
脆弱だから強固か……確かにそうなのかもしれないな。
「どんな人物も、誰かの助けがなくちゃ、生きて行けない、でも、本当に自分は、その人の助けになるようなことをしてるのかな?」
本当に助けになること……?
「その人を支えているつもりが、実はその人の足手まといになっていたりするかもしれないだろう?」
私が……Tellさんの足手まといに……
「右を見てご覧、」
右の壁を見ると、いつの間にか絵が飾られていることに気づいた。
『妨害者』
天使の羽が生えた人物の足に、必死でしがみついている人がいる。なぜだか、天使の羽が生えた人がTellさんに、足を引っ張る人が私に見えてしまう。
「どれだけその人にとって幸せなことでも、別の人にとっては不幸せな事のように見えることもある。だからついうっかり、良かれと思って止めてしまうんだよ、その人の幸せを……」
「おい、カルキノスとか言ったか?」
突然ルシルさんがカルキノスに呼びかけた。
「どうしたの?」
ルシルさんの呼びかけにカルキノスは応じた。
「お前は何が言いたいんだ? 私たちの心理操作をしようとしているのか?」
「僕はみんなに分かって欲しいだけなんだ。僕の考えていることをね、」
「それだけか?」
「焦らないでよ、少しくらい話してもいいじゃないか、そんなに焦らなくても、君の探しているものは返してあげるから。」
カルキノスはそう言うと、目の前の壁に、絵を出現させた。
「こ、これって!?」
「この絵は、僕も気に入っているんだ。 彼女をモデルにして描いたんだって、」
作品名は『涙で出来た怪物』、その絵にはライムさんが閉じ込められており、絵の中から必死に、こちらに助けを求めて、動いていた。
気づくと、私達は複雑な色が混ざりあった不思議な色の壁に、四方を囲まれた部屋にいた。目の前の壁にはやはり青色の文字が書かれている。
「ようこそ僕の世界へ」
頭の中に声が響いてくる。
「誰ッ!?」
「どうやら、KUMIさんにも聞こえてるみたいだね、」
「私にも聞こえている。おそらくこの亜空間の主が私たちに語りかけているのだろう。」
頭の中の声は、稚拙な文章で語りかける青色の文字とは違って、少し知的な印象を受けた。
「僕の名はカルキノス、かつて画家だった者だ。と言っても、今は自分が何なのか、自分でも分からないんだけどね、」
本当にこの人物が、何人ものプレイヤーを殺した、ダンジョンボスなのだろうか?
「さて、先に進んでおくれよ、ドアを開けておくからさ、」
頭の中の声がそう言うと、壁から扉が出現した。
「よし、進もうか、」
私たちは、扉を開き、渡り廊下のような通路を歩いた。
「さあ、ここから、妖精たちの宴が始まる。妖精は、君たちを連れ去って仲間にしてしまおうとするから、隠れながら進むんだ。」
通路の先に、部屋があった。部屋の前には、あの時エンプラット美術館で見た、『妖精たちの歓迎』が飾られていた。
「進むしかないみたいですね、」
「そうみたいだな、」
扉を慎重に開ける。
「ギィィ……」
扉の先は迷路になっていた。所々、天井が欠けている。また、上から、微かに羽音が聞こえた。上で妖精たちが飛び回っているのだろうか?
「なるほど、妖精たちの目を盗んで、障害物から障害物へと移っていくステージだな、」
こんなのは、さっきまで大量の警備員を撒いた私たちには、簡単なミッションである。
何度か迷ったものの、簡単に乗り越えた。
「良かった、案外簡単にここまで来れましたね、」
「そうだな、」
恐らく、このダンジョンは、絵に描かれていたことと全く同じことが起こる仕掛けなのだろう、
先に進んでいくと、『捕食者の待ちぼうけ』というタイトルの絵が入口に飾られた部屋があった。山道に、ひとつのトラバサミが仕掛けられている絵だ。
「彼らは貪欲な捕食者だ、獲物が通りかかるのをずっと待っている。行く手を阻む障害が、上にある時もあれば下にある時もある。人は進んでいく限り、困難を避けて通ることは出来ないんだよ、」
頭の中の声は、私たちに何かを語りかけている、なにか、伝えたいものがあるのだろうか? 「進んでいく限り困難を避けることは出来ない」確かにその通りだとは思うが……
「どうしたの? 」
Tellさんに呼ばれて我に返った。危ない危ない、言葉を深読みしすぎて、危うく心理操作をされる所だった。
「置いてくよ? KUMIさん」
「あっ、待ってください、」
「ギィィ……」
大量のトラバサミが仕掛けられている。どうやらここは屋外、それも山の中らしい。あたりは木に囲まれ、道の整備も行き届いておらず、背の高い草も伸び放題だった。
「草むらに入っていくのは無理だな、トラバサミがあっても、草が邪魔して見えない。」
針に糸を通すように、慎重に、足を置ける場所を探す。もし、バランスを崩して倒れたら、それらは容赦なく私に噛み付いてくるだろう。
足の踏み場のないほど敷き詰められたトラバサミの、ほんの少しの隙間をくぐり抜ける。慎重に、慎重に進まなきゃ、トラバサミを作動させないように、少しずつ、
「ガシャンッ!!」
「グッ!?」
ルシルさんの方で音がした。
「大丈夫ですか!?」
「クッ……ダメだ、私の力じゃ外せない、」
やばい! 助けなきゃ! 急いで、かつ慎重にルシルさんの元に向かう、
「ガチッギィィィィ」
上手く外せた。2人がかりじゃないと外せないみたいだ。
「大丈夫だったか!?」
「はい、上手くはずせました。これからは、3人固まった方がいいかもしれません。」
3人で、お互いにトラバサミを外し合う体制で進んだ。この作戦が幸をそうして、ついにトラバサミステージを突破することが出来た。
「君たちはとても脆弱だ。だからこそ強固だ。弱いからこそ周りと繋がり合い、繋がり合うからこそ強くなる。」
脆弱だから強固か……確かにそうなのかもしれないな。
「どんな人物も、誰かの助けがなくちゃ、生きて行けない、でも、本当に自分は、その人の助けになるようなことをしてるのかな?」
本当に助けになること……?
「その人を支えているつもりが、実はその人の足手まといになっていたりするかもしれないだろう?」
私が……Tellさんの足手まといに……
「右を見てご覧、」
右の壁を見ると、いつの間にか絵が飾られていることに気づいた。
『妨害者』
天使の羽が生えた人物の足に、必死でしがみついている人がいる。なぜだか、天使の羽が生えた人がTellさんに、足を引っ張る人が私に見えてしまう。
「どれだけその人にとって幸せなことでも、別の人にとっては不幸せな事のように見えることもある。だからついうっかり、良かれと思って止めてしまうんだよ、その人の幸せを……」
「おい、カルキノスとか言ったか?」
突然ルシルさんがカルキノスに呼びかけた。
「どうしたの?」
ルシルさんの呼びかけにカルキノスは応じた。
「お前は何が言いたいんだ? 私たちの心理操作をしようとしているのか?」
「僕はみんなに分かって欲しいだけなんだ。僕の考えていることをね、」
「それだけか?」
「焦らないでよ、少しくらい話してもいいじゃないか、そんなに焦らなくても、君の探しているものは返してあげるから。」
カルキノスはそう言うと、目の前の壁に、絵を出現させた。
「こ、これって!?」
「この絵は、僕も気に入っているんだ。 彼女をモデルにして描いたんだって、」
作品名は『涙で出来た怪物』、その絵にはライムさんが閉じ込められており、絵の中から必死に、こちらに助けを求めて、動いていた。
コメント
蛇使い座のな~が
通常の投稿ペースに復帰するまで、まだもう少しお待ちください。それまでは、スケジュールの合間を縫って投稿の方をちまちまとさせていただきますので、かなり間隔が空いてしまうとは思いますが、ご了承頂けると幸いです。
長文失礼いたしました。