カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

夜を進む

先程までの猛暑はいつの間にか過ぎ去り、むしろ肌寒いような感覚さえ覚えた。

目の前を照らす光などそこにはなく、見上げると、様々な色に輝く星たちが我が物顔で空を埋めつくしている。

月が見当たらない。今日は新月らしい。

「ズボッ」
「うわっ!?」

どうやらぬかるみにハマってしまったらしい。左足を取られて動けなくなってしまった。

「ピュッ!」

ぼたんが吐き出した種からツルが伸びる。ツルを掴んで命綱にし、なんとか脱出した。

「ありがとう、ぼたん」

「キュッキュ!!」

「やっぱり暗いな、松明をつけよう」

近くの木から枝を折り、応急処置用の包帯の切れ端を巻き付けた。

「包帯、大丈夫なんですか?」

「いっぱい持ってるから大丈夫、ほら、KUMIさん、ファイアボール、」

「わかりました、ファイアボール!」

「ボホォ!」

松明にあかりが灯った。




あかりを頼りに進んでいくと、あまりジメジメしていない乾いた地面が現れた。

「よし、湿原を越えたぞ、」

これでまた地獄のサウナの中を歩かなくて済む、そう思うとかなり安心した。

私達は夜中中ずっと歩き続けた。

「眠い……」

「そうだね、どこか休めるところを探そうか。」

私達は近くの森に入り、なるべくモンスターのいない場所にテントを張った。

「じゃあ、万が一のことがあるから俺は見張っとくよ、」

「わかりました。交代のタイミングで起こしてください。」

私は寝袋に入った。いつも野宿で寝る時は、寝るまでにかなり時間がかかってしまうが、今日は入ってすぐに眠りにつくことが出来た。




1度も交代せずに、朝になってしまったようだ。Tellさんも見張りの体制のまま眠りに落ちている。

「おはようございます。」

ボトルから出ていたライムさんが、話しかける。

「ボトルの中だとよく見えなかったので、外に出て、おふたりの代わりに見張りをしていました。」

「そうだったんですか?」

「はい、」

「眠くなかったんですか?」

「KUMIさんに運ばれてる時に、揺れが心地よくて、そのまま寝てたんです。」

「それなら良かったですけど、」

「う~ん……おはよう、 」

Tellさんが目覚めた。

「見張りはライムに任せておいたから、」

「はい、ライムさんから聞きました。」

「じゃあ行こうか、」

「はい、」




そのまま真っ直ぐ進んでいくと、確かに町に出た。

視界の右上に文字のようなものが表示される。

『エンプラット町』

「ここまで送っていただいてありがとうございました。」

「どういたしまして、」

「でも、その姿のままじゃ、危ないですし、鍛冶屋さんの所まで運びますよ、」

「ありがとうございます。では、案内するのでそこまで送ってください」

ついに、JHARIBANさんのお弟子さんの店に入るのか、どんな場所なんだろう?




ライムさんの案内通りに進んでいくと、確かに武器屋があった。隣には、鍛治をするための作業場のような建物もある。

「ここですね、」

「ここが、鍛治の店JHARIBAN、」

「入ろうか、」

「はい、」

「ギイィ……」

古びた扉が軋み、高音を響かせながら開く、

「いらっしゃい、あれ? ライム、また小さくなってんのか?」

「先生、すみません、遅れてしまって、」

「また道に迷ってたんだろ、ルテケトは暑いから、裏道を通れって言ったろ?」

「ごめんなさい、早く帰らないといけないと思って……」

「ちょっと待ってろ、」

そう言うとJHARIBANさんのお弟子さんは、大きなバケツに水を入れて持ってきた。

「ほらよ、」

「お手数かけます。KUMIさん、ボトルの蓋を開けてください、」

「あっ、はい、」

ボトルの蓋を開けると、ライムさんは勢いよく飛び上がり、バケツの中へとダイブした。

「バシャンッ」

再び水から上がると、ライムさんは最初にあった時と同じぐらいの大きさに戻った。

「ふぅ~生き返る~!」

スライムって凄いんだな……

「君らが、ライムをとどけてくれたのか?」

「ああ、そうだよ、」

「ありがとな、これでまた新しい商品を作ることができるよ、」

そういえば、ライムさん、材料はどこにやったんだ? 最初っから手ぶらでいたように見えたけど。

「そうだ、先生これ材料です。」

「ネチョ……」

ライムさんの体内から、袋のようなものが出てきた。

スライムって本当に凄いんだな……

「ありがとう、次からは遅刻しないように、」
「す、すみませんでした……」

元の大きさに戻ったのに、ライムさんが小さく見える……

「今日はもう遅いし、お前らに部屋貸すよ、」

「えっ!? いいんですか?」

「おう、ライムを無事とどけてくれた礼だ。」

「ありがとうございます!」

やった、今日は久々にベッドで寝られそうだ。

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