カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

闇の世界へ

『レベルアップ!!
あなたのレベルが31になりました。』

突然のレベルアップも、今の私にはほとんどどうでもよかった。

「……何が……起きてるの……?」

アミカさんが困惑している。私だってそうだ。ボスは私たち以外の手によって倒されたのだから、

「……やれやれ、困った子猫ちゃんだ。」

その人物は、黒い甲冑に身を包んでいた。その鎧は、ただならぬ瘴気を纏っており、中の人物がいかに強大であるかを物語っていた。

「んで、君たち誰?」

「先に名乗らないものに名を教えると思うか?」

Tellさんが今までにないくらい警戒している。

「あっそ、じゃあ、名乗らなくていいや、あいにく、今は子猫ちゃん以外には用はない」

子猫ちゃん、一体誰のことなんだろうか……?

「まぁ、ちょうどいいや、この辺で女の子見なかった? なんかこう、メンヘラ系の面倒くさそうな感じで、目がイッちゃってる女の子、」

「メリアの事か……?」

「そうその子、うちの部下なんだけどさ、俺の指示を全ッ然ッ聞いてくれないの、復讐がどうだ~とか言っちゃって、」

この人が、メリアさんの上司、ということは、黒ギルドの幹部よりもさらに上の位の人物ということか……

「まぁ、とりあえず、見かけたら教えて、シメとくから、」

あっ、終わったな……メリアさん……

「君たちもあんまし邪魔しないでよね、友達なんでしょ? あのRAYとかいうやつと、」

そうか、RAYさんも、黒ギルドを追っていたんだっけ、

「あの子もしつこいよね、俺たちはただ生きるために仕方なくやってるってのにさ、あいつ、軟弱者のくせして善良な市民を守ろうとかいいやがんの、やんなっちゃうよね!」

「RAYは軟弱者なんかじゃない!」

「へぇ、軟弱者じゃないんだ、子猫ちゃんにボッコボコにやられたくせに、哀れだよねぇ、夢は人一倍見れるくせに実力が伴ってないんだからさ、」

「黙れ!!」

「まぁまぁ、そう怒んないでよ、こっちも忙しいんだしさ、仕事が片付いたら、君たちとも遊んであげるよ、それじゃあね!」

「待て!! サンダーストーム!!」

「バチバチバチィ!!」

Tellさん!? そんな雷属性の魔法なんて今まで使ってなかったのに!?

「リフレクティオ!」

「バキーン!!」

「うわぁ!!?」

反射魔法!? しかもあんな一瞬で!?

「クッ!! クソッ!!」

「話聞いてた? 今忙しいの、じゃあね、」

黒ギルドのボスは、ワープホールを通ってダンジョンの外へと出て行った。




「大丈夫ですか!? Tellさん、」

「大丈夫だよ、ダメージは小さい、」

「今の技は?」
「ボスを倒したからレベルが上がったんだ。それで、この技を覚えた。」

そうなのか、なら私も新しい技を覚えているかもしれない。

『新しい魔法を覚えました。』
『ゼロリバース:相手にかかっている良い効果を打ち消す。』

「あっ!! これって、メリアさんの使ってた魔法だ、」




「……ゼロリバース」
「ビュオオオ」

「皆さんの透明化魔法、打ち消させていただきました。」




「おお、じゃあ、1回試しにあの瓦礫の影に打って見てよ、」

「分かりました。ゼロリバース!!」

「ビュオオオ!!」

どうせ、ただの試し打ちだろうと、思っていた。しかし、瓦礫の裏に放ったゼロリバースは、その影に潜んでいた何者かの存在を暴き出した。

「……透明化、打ち消させてもらったよ。メリア、」

「……さすがTellさんだ、私よりも1枚上手みたいですね」
 
……おかしいな、透明化を解いたのは、私の手柄なのに……




「いつから気づいていたんですか?」

「最初っからだよ、ボス戦の途中で、透明化して入り込んできただろう?」

よく気づいたな、Tellさん、

「俺たちのスキをついて攻撃してくると思っていたが、瓦礫の陰に隠れたまま、一向に出てくる気配が見えなくてな、
それで気づいた、何者かに追われているんだって」

「へぇ、そこまで考えていたんですね、」

「だからなるべく、お前の方に注意が行かないようにしたんだ。相手の挑発に乗ったフリをして、反撃されるのを承知で攻撃をした」

挑発に乗ったフリ?




「RAYは軟弱者なんかじゃない!!」

「黙れ!!」




いや、かなりキレてるように見えたけど……

「そう、じゃあなんで、敵でもある私をたすけたんですか? 自分で傷を負ってまで、」

「特に理由はないさ、かつての仲間のよしみで、助けたに過ぎないよ」

「そうですか、」

「でも、もしありがたいと思ってくれているなら、俺たちのことは1度見逃してくれないか、ちょうどいい死に場所を見つけたら、連絡するから、」

そうか、 Tellさんは私たちを助けるために、メリアさんに取引を持ちかけようとしていたのか、

「その死に場所と言うのは、Tellさんのですか? それとも……私のですか?」

メリアさんは意味ありげに笑いながら言った。

「……君のだと言ったら?」 

Tellさんもメリアさんに答えるように、不敵な笑みを浮かべた。

「ふふ、……まぁいいでしょう、私たちの部隊は全員、ボスが帰らせてしまったでしょうし、私も帰ります。」

メリアさんはワープホールをくぐり、ダンジョンをあとにした。

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