奔走

「うわぁぁぁ！！！」

崖の底は見えないほど深い、どうやら落ちたら即死のエリアだったようだ。しかし、タイミングよく復活したランタロウが私たちを背中で受け止め、助けてくれた。

「はぁ、良かった。」

「ありがとう、ランタロウ！」
「ギャウッ！！」

よし、これでようやく、敵に一泡吹かせられる！

「ゴオオウ！！」

ランタロウは敵たちのいる通路に向かって火を吐いた、逃げ遅れた兵士たちは炎のダメージをモロにくらった。

「に、逃げろ！！奥に逃げるんだ！！」

敵たちは通路を引き返して逃げていった。

さすがドラゴン、めちゃくちゃ強い……

「良かった、なんとか上手くいったみたいだ。」

「ランタロウ、下まで降りてみて？」

「ギャウッ！」

ゆっくりと、崖の下へと降りていく。

「なんか、どう見ても正解のルートには、見えないんですけど……」

やっと底まで辿り着いたはいいものの、先に進めるような場所はどこにも無く、あるのは毒虫たちの巣穴だけだった。

「あれ？ドヤ顔で『 正解のルートは隠してあるはず』とか言ってたのって誰だっけ？」

 「ま、まあ、別にいいじゃん？敵も追い払ったし、ランタロウも元に戻ったし、」

正解のルートは……隠してある……？

---

「俺がもしこのダンジョンを作るなら、正解のルートは塞いで、先にほかの通路に行かせて時間を稼ぐ、」

---

---

「今、ランタロウはあらゆる障害物をすり抜けているからこの狭い通路を進めているんだ。」

---

「もしかしたら正解のルートをランタロウが見ているかも知れません。」

「えっ！？」
「どういうことなの？」

「もしTellさんの言う通り、正解のルートが塞がれているのなら、毒グモに巣を張らせるより、壁を作ってしまう方が合理的だと思います。」

「確かに、」
「壁で塞いで、そもそも通路に見えないようにする 方が時間稼ぎになるかもね。」

「ランタロウは強化版の透明化魔法で障害物をすり抜けて移動していました。なら、壁をすり抜けて、その向こうに通路があるかどうか、確認できたはずです。」

まぁ、それをランタロウがちゃんと覚えられてたらの話だけど……

「なるほど、」

「ランタロウ、教えて、どこかに、隠し通路みたいな道はあった？」

「ガウッ！」

「えっ！ あったの？」

さすがドラゴン、めちゃくちゃ賢い……

「でも、どうやってその隠し通路まで行くんだ？」

「それは、もう1回透明化の魔法をかけてもらって……」

「悪いけど、俺もうspほとんど無いぞ？」

「誰か、sp回復用のポーションは……」

「ちょうど今切らしてる。」

「あたしはバトルはほとんどモンスターに任しちゃってるから、人間用のは持ってないよ？」

そうか……なんでこんな時に限って……

「キュッ！！ キュキュッ！！」

「どうしたの？ ぼたん、」

ぼたんがポケットの中でこちらに何かアピールをしている。仕方なく外に出してあげた。

「ピュッ！！ピュッ！！」

ぼたんの吐き出した種が芽吹いた。

「これは……薬草？ しかもsp回復用の！？」

ぼたんいつの間に薬草食べてたの？

「ぼたん、すごいよ！！」

「キュッ！！」

ぼたんはとても誇らしげな様子だ。

さすがぼたん、めちゃくちゃ可愛い……

---

薬草を加工してポーションを作る。

「よし、これだけあれば、ビジョンが打てる。」

Tellさんは作ったポーションを一気に飲み干した。

「じゃあ、全員でランタロウの背中に乗って？」

ランタロウの背中に乗り、元の通路にまで運んでもらった。

「よし、ここで、ビジョン！！」

「バシュウゥ！！」

ランタロウの姿がまた見えなくなった。

「アミカさん、ランタロウの気配分かりますか？」

「分かるよ、こっちに行ったみたい。」

アミカさんがランタロウの気配をキャッチし、ランタロウの案内のとおりに進んでいく。

---

しばらく進んでいくと、アミカさんが立ち止まった。

「この壁？」

「ギャウッ！！」

声が聞こえた。確かに、ここにいるようだ。

「ビジョンの残り時間、あとどれくらいですか？」

「あと12分だな。」

ここで、もし失敗したら、また別の作戦を考えてさっきの場所に戻ろう。じゃないとまた狭い場所で透明化が解けてしまう。

「じゃあ、壊すよ、えいっ！！」

「バキィッ！！」

薄い壁が外れ、奥から別の通路が出現した。


「よっしゃ！ ランタロウよくやった！！」

「ギャウッ！！」

ここが、正解のルートであると信じて、行くしかない。

大丈夫、ランタロウが見つけてくれた場所だ。きっと合ってる。

---

道を進んでいくと、坑道のような場所に出た。

天井ではリフトが絶え間なく動き、壊れた木の箱や、途切れた線路などが散らばっている。

「なんか、この雰囲気、よく映画とかで見るような……」

なんかの映画のワンシーンで、なにか仕掛けが作動すると、巨大な丸い岩が転がって来て………

「カチッ！！」

「うわっ！？ なんか踏んだ！？」

「ゴゴゴゴゴゴゴ………」

あれ、もしかして、フラグを回収してしまったパターン……？

「ゴロゴロゴロゴロ……！！！」

やばい！！ なんか転がってくる！！！

「全速力で逃げろ！！！」

はぁ、一難去ってまた一難とはこの事だな。