カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

逃走

 「いたぞ!! 捕まえろ!!」

敵兵は、島のあちこちにいる。彼らも私たちを見つけると、追いかけてくる。

「クッ!!」

逃げた先に別の敵兵。挟み撃ちになってしま
った。 

「仕方ない、強行突破だ、行くぞ!」
「はい!」

「カキンッザシュッ!」

「うわぁぁぁぁ !!?」

私たちは、前方から来た敵兵たちの攻撃をかわし、隙を見て反撃、敵の人数が少なかったのもあって、簡単に突破できた。

「おっ先~!!」

アミカさんに至っては挑発する余裕まで見せている。
 



追っ手から逃げながら進むと、Tellさんが急に足を止めた。

「みんな、この小道を進んでいこう、」

Tellさんの指差す先には、うっかり見逃してしまいそうなほど、入口の小さな小道があった。

「ここなら、追っ手を撒けそうですね。」

私たちは、まだ追っ手の来ないうちに、小道へと入り、身を隠した。

「お前ら急げ!! 奴らを見失うな!!」

追っ手はこぞって広い方の道を選んで真っ直ぐ走っていった。

「ふぅ、やれやれ、」
「何とか凌げましたね、」

敵が追ってこないと分かると、急に足が動かなくなって座り込んでしまった。

「だ、大丈夫か?」
「ちょっと、疲れちゃった見たいです。」

Tellさん、疲れてないのかな? あんなに走ったのに、

「私も疲れたし、しばらく休もうか」

しばらくここに身を隠して休もう。さすがにこんなちんまりとした場所に私たちが隠れているとは気づかないだろう。木の影になっているから、空からも見えないし。




「あとは、ランタロウの透明化が解けるまで待つだけだね、」

ランタロウの透明化が解ければ、もう一度空から逃げられる。しかし空中には、あの時の竜騎兵たちが待ち伏せしているだろう。

「そういえばアミカさん、ランタロウ、ちゃんと着いてきてくれてます?」

「うん、ちゃんと横にいるよ?」

「見えないし触れないのに、なんで分かるんですか?」

「何となく分かるんだよ。なんて言うか、私とランタロウとの絆っていうのかな? なんちゃって、」

アミカさんは冗談のように笑っているが、私には、本当のことのように感じた。アミカさんとランタロウには、確かに絆がある。そんな気がする。

「キュ?」

私は、ぼたんとそういう絆を結べるだろうか?

「よし、ちょっと先に進んでみようか、」

「そうですね、どこか、逃げられるルートが見つかるかもしれないし、」

「同じとこに留まってるのも危険だしね。」

私たちは、小道の先へと進んでみた。森はさらに鬱蒼と生い茂り、1歩踏み外せば谷底に落ちてしまうほどの険しい道が続いている。

「怖いな…………」

これは、下見たらヤバいやつだ。足がすくんでしまいそうになる。

「キュッキュッ!!」

ぼたんが励まそうと応援してくれている。でも、君の応援を見ようとしてポケットを覗くと、思いっきり下を向いちゃうんだよね……

「キュッ!!」

「あ、ありがとうね……おかげで元気出てきたよ……」

「……キュ?」

君に罪はない、罪はないけど…………




はぁ、渡りきった。地面があるということがどれだけありがたいことかわかった気がする………

「キュッキュッ!!」

「ありがとう、」

「ピュッ!」

ぼたんが種を吐き出した。祝福の花ということだろうか?

「ぼたん、ありがとう!」
「キュッ!!」




奥へ進むと、古い建造物のようなものが見えた。

「これは……ダンジョンだな。どうしてこんな所に?」

確かに、こんな小さな孤島にここまで大きなダンジョンがあるとは、思いもしなかった。

「なんか、遺跡……みたいだね、」
「どんなダンジョンなんだろう?」

入口の近くに立って、ダンジョンの名前だけ確認してみる。

『ダンジョンに入りますか?』
『ダンジョン名:地下毒虫迷宮』
『スタミナ消費:26』

毒虫か……やだなぁ……

「とりあえず、今はダンジョンにかまけている暇なんてない。ここから脱出する方法を考えないと………」

「……それはどうでしょうか?」

「「「ッ!?」」」

後ろを振り返ると、いつの間にか背後にメリアさんがいた。
敵兵たちが後ろにスタンバイしているようだ。

「ど、どうしてここが!?」

「Tellさん、背中をご確認ください、」

Tellさんの背中には宝石のようなものがフックで取り付けられていた。

「その魔法石は、場所を感知する効果を持つアイテムです。」

「なるほど、マーカーストーンか」

「マーカーストーン?」

「この世界におけるGPSのようなものだよ、マーカーストーンを取り付けた場所は、マップ上で強調表示されるようになるんだ。」

そんな!? メリアさんは、Tellさんに一度も触れていないのに!?

「私達はこのマーカーストーンを使って連絡を取り合っていました。きっと、私の優秀な部下たちが、やられる寸前で自分のマーカーストーンを擦り付けたのでしょう。」




「仕方ない、強行突破だ、行くぞ!」
「はい!」

「カキンッザシュッ!」
「うわぁぁぁぁぁ!!?」




そうか、あの時に……

「この状況、今ここでダンジョンに入るしか、逃げ道はないんじゃないですか?」

「だ、誰があんたの指図なんか!!」

アミカさんが啖呵を切るが、Tellさんが静止した。

「追い込まれてしまっては仕方がない。このダンジョンの中で逃げ切るしかない。」

「それって……」

「ダンジョン名に『迷宮』とあった。ということは、何か敵兵を出し抜いて先に進めるような仕掛けがあるかもしれない。確率は低いが、やるしかないだろう?」

「……確かにそうですね、」

私たちは、意を決して、迷宮へと足を踏み入れた。

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