カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

あの時の世界

「おい、お前らなにサボってるんだ!! 2人してくっちゃべってる場合じゃないだろ!!」
「やっべ!! すいません!!」

敵兵たちが怒られてる。上官の人かな?

「ここは、私が見張っておく、貴様らは違う場所に移動しろ!!」

「はっ!!」

良かった、これで私達もここから移動できそうだ。

「まったく、アイツらが動いてなきゃ見張る意味ねえのにな、」
「本当はあそこの茂みに隠れてたりして」

やばいっ!!? もしかしてバレてる!!?

「お前、それはさすがにないだろ!」

「「HAHAHA!!」」

やめてくれよ……心臓に悪い……

彼らの声が遠ざかっていく。もう出てきても大丈夫だろう、

「あのさ、さっきのランタロウを見えなくした魔法、私たちにもかけてよ、」

「そうだな、その方がいいだろう。でも、この魔法、結構sp食うからさ、戦闘に支障が出るかも知れない」

「そんときはサポートするよ、」

「任せてください」

「分かった。ビジョン!!」

みんなの姿が見えなくなった。自分の手を視界に入れてみたが、もちろん見えていなかった。

「これなら大丈夫ですね、」

「ランタロウ? 見える?」
「ガウッ!」

「えっ? ランタロウには私達の姿が見えてるんですか?」

「そういうわけじゃないよ、多分、いつも聞いてる飼い主の声だから分かるんじゃない?」

ドラゴンって賢いな……

「キュ?」

ぼたんがポケットから顔を出すと、時空に狭間ができたように見える。ぼたんには、ビジョンの魔法がかからなかったようだ。

「大丈夫だよ、ここにいるよ?」

「……キュピッ?」

なんかあちこちキョロキョロしてる。分からないか……そうだよね……

「大人しくしててね、」

「キュ……キュピ??」

一応、理解はしたけど納得はいっていないみたいだ。




見張りを避けるようにして歩いていく

「あの、Tellさん、ビジョンって、物体をすり抜ける効果とか無いんですか?」

「あるよ? 強化版のビジョンならすり抜けられる。」

「あっ、そうなんですね、じゃあ、ランタロウには強化版を?」

「そうだよ、そうしないと音でバレるから、」

確かにそうだよな。ランタロウ、こんなに大きいのに、普通に歩いたら一発アウトだったろう。

「本当はお前らにも強化版のビジョンを使うべきなんだが、かなりspを食うんだよ、戦闘用のspも確保しなきゃならないしな。」

確かに、そう何度も使えるようなものでは無さそうだな。

「また見張りだ。そこの道は避けて行こう、」

あれ? あの見張り、ほかの敵兵たちと服装が全然違うな。もしかして、位の高い人なのかも、

なんかローブに身を包んでいて顔もわからないし、なんかそっぽ向いたまま動かないし、

「近づかない方がいいですね、」

と、見張りに背を向けた瞬間だった。

「……ゼロリバース」

「ビュオオオ!!」

急に、目の前に、つむじ風のような渦巻きが発生し、私達の姿が見えるようになってしまった。

「なんだ!? 今のは一体!?」

「皆さんの透明化魔法、打ち消させていただきました。」

透明化した私たちに気づいただけでなく、それを打ち消すなんて、それに……

「今の声、聞いたことがある……」

「……お前、メリアだな……?」

「はい、わかってくれたんですね?」

メリアさんは、ローブを脱ぎ捨てた。その顔は、確かにあの時見たメリアさんだった。




「組織の皆さんとまた、いつかそちらの方に向かいますので、その時は、またあの日のように遊んでください。」




「第三部隊長、メリアです。約束通り、みんなと一緒に復讐にやって参りました。」

「そうか、部隊長というのはやはりお前の事だったんだな。」

「あなたは既に包囲されています。この島から出ることは出来ません。」

「そう言われて、大人しく降伏すると思うか?」

「あなたを先に殺してしまえば、あなたは自殺出来なくなる。そうすれば私は、あなたを守れる。この世界と、あなた自身の手から、」

「へぇ、たった1人で、俺を殺す気?」

「私のどこが1人に見えるんですか?」

「ジャキンッ!!」

茂みに隠れていた伏兵たちが、メリアさんの後ろからわらわらと現れた。

「こんな雑魚たち、うちのランタロウが……って、あれ?」

当たりを見渡すと、ランタロウの姿はなかった。

「後ろにいたドラゴンには、無効化魔法を当てないようにしました。そのドラゴンがいくら暴れても、物体をすり抜け、攻撃を当てることは出来ません。」

「あんたそこまで考えて!?」

これはやばいな……完全に戦局があっち側に傾いてる。この戦力差では、まともに戦っても勝ち目はなさそうだ。




「テ……ル……来ちゃ……行けない……」




現に私たちは、メリアさんの強さを知っている。あのRAYさんが、完膚なきまでに叩きのめされていたあの惨劇を見ている……

「Tell、ど、どうしましょう?」
「これは……どうしようもないな、逃げよう、」

こうして私たちは、全力で逃げ続けることにした。




一目散に走り続ける私たちを後ろから敵兵が追いかけてきている。

メリアさんはいない。おそらく部下に走らせているのだろう。私がメリアさんでも、自分の手は汚さずに部下に捕まえさせると思う。

「Tell! なんかないの? あいつらをギャフンと言わせられるような策は、」

「このまま闇雲に走っていても、追いつかれるだけです!」

「強化版ビジョンの透明化が溶けるのは、約30分だ、残り時間から考えて、あと20分は透明化のままだ。それまで、逃げ続けられれば。今追ってきている奴らぐらいは、ランタロウが突破してくれる。」

「じゃあ、あと20分逃げ切れれば……」
「ああ、この状況を打開できるかもしれない。」

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