カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

異世界の景色

看病の甲斐あって、ボタニカルラットは、かなり回復してきた。アミカさんに貰ったポーションで傷口を洗うと、少しずつ、傷が再生していき、数秒後には元通りになった。

「すごい、全部治っちゃった」

「HPが低いからね、小動物用のポーションだと、私たちにとっては、全部使っても最大HPの5分の1くらいしか回復しないけど、この子にとっては1回使うだけで全回復出来ちゃうくらい強い薬だったりするんだよ、」

なるほどな、とりあえずは傷が治ってよかった。よし、治療の後は、餌を与えなきゃ、

「どう? 食べられる? Tellさんの採ってきた木の実だよ?」

ボタニカルラットは、主に木の実を食べる生き物だ。食べた木の実の中から器用に種だけを取り出し、いつでも取り出せるよう、専用の器官に溜め込む。

「美味しいよ? 食べて?」
「……キュピ?」

反応してはいるが、まだこちらを警戒しているようだ。

「ピッ!」

ラットは、私の手から勢いよく木の実を奪い取り、おそるおそる口に着けた。

「シャリシャリ……」

味が気に入ったのか、ちゃんと食べてくれた。両手で木の実をしっかり持って、少しずつ食べ進めていく姿はかなり可愛かった。

「よかった。気に入ってくれたみたい。」

「じゃあもう安心だね、」

「そうですね、」

後は、懐いてくれるかどうかだな、

「ん?」
「どうしたんですか?」

「この子……メスだね、2本目の指が3本目の指より長い。オスだと3本目の方が長いんだけど」

「そうなんですね! そっか、女の子か……」

「名前は何にするの?」

「そうですね、ボタニカルラットだから……
ぼたんちゃんとかはどうでしょうか?」

「へぇー、可愛いじゃん!」
「ありがとうございます。」

そうだ、呼びかけてみようか、

「ぼたん?」
「……キュ?」

「すごい! 返事した!」
「ぼたんも、この名前気に入ったんだね!」

「キュッ!」

この子が来てくれたおかげで、私達の旅ももっと楽しくなりそうだ。でも、私たちと一緒に心中してもらうわけにも行かないし、その時が来たら、また森に返してあげないと、

「今日はもう寝よう、もう3時過ぎてるし、」

そうだな、これ以上起きてたら、ランタロウの背中で眠りこけてそのまま海に落っこちちゃうかもしれない。

「キュピッ!」

木の実を食べ終えたぼたんが、私の元に駆けてきた。私が手を差し出すと、ぼたんは手の上に登ってきた。

「おやすみ、ぼたん、」
「キュアァ~~……」

ぼたんは大きな欠伸をして、そのまま手の上で寝てしまった。ぼたんが起きないようにゆっくり手の上から下ろし、近くの葉っぱを布団代わりにかけてあげた。

「あれ? Tellさんは?」
「あっちのテントでもう寝てる。」

こっちは看病に大変だったってのに、マイペースすぎるよ……




朝目が覚めると、ぼたんは私の寝袋の中に潜り込んでいた。

「……一緒に寝たかったのかな? 」

私がそう呟くと、ぼたんも起きた。

「キュ……?」

「おはよう、」
「キュッ!」

かわいいな~……朝から癒されるわ……

「ランタロウ、起きた?」

「ギャアウッ!」

どうやらランタロウも目が覚めたみたいだ。

「あれ?Tellさんは?」
「朝ごはんを狩りに行った。」

早寝早起きがしっかりしてらっしゃる。




その後、Tellさんが帰ってきて軽い朝食をとった。Tellさんは、今日も魚を採ってきたので、昨日と同じように焼き魚にし、余った木の実も一緒に食べた。ペットたちにも餌を与えた。

さぁ、そろそろ出発の時間だ。

「キュピッ!」
「ぼたん、ちょっとだけ大人しくしててね、」

「キュッ!」

ぼたんは私の足を伝って登り始め、服のポケットの中に入り込んだ。

「キュッ!」

ポケットからこちらを見上げている。
かわいい……

「みんな、大人しくするんだよ?ちょっと揺れるけど、ケースから逃げちゃだめだよ?」

アミカさんはバッグの中の生き物たちに話しかけている。あの中には例のポイズンリザードもいるのだろうか?出来れば逃がさないでいただきたい。うちの子が狙われてしまう。

「じゃあ、行くよ?ランタロウ、」

「ギャウッ!」

「バサッバサッ!!」

浮遊感とともに、景色は一気に空の色に変わった。また、しばらくは空の旅だ。




「どう? やっぱりペットがいるって、結構楽しいでしょ?」

「はい! なんか、この殺伐とした世界にも、癒しってあるんだなって、」

「あはは、そうだね、しかしまぁ、このゲームの作者さんも凄いよね! こんなに沢山の生き物を作るって、しかもこんなに多種多様な生態を持っていて、」

確かにそうだな、こんなに沢山の生き物をよく共存させることが出来たな、

「まぁ、このゲームも実際は単なるプログラムに過ぎないだろう、」

「そんな夢のないこと言わないでよ、普通に考えてプログラムなわけないでしょ?だって、どうやってプログラミングしたらこんな世界が作れるの?」

確かに、考えたこともなかった。このゲームは、どうやって作られたのか?そもそもこの世界は、本当にゲームなのか?

「確かに、ゲームにしてはあまりにも複雑すぎるな、この世界は、」

「私ね、思ったんだ! ここって、『異世界』なんじゃない?」

「異世界……?」

「そう、きっと、あのアプリは異次元の扉を開くための鍵だったんだよ、」

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