カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

空から見た景色

「バサッバサッ……」

少しずつ、地面が遠ざかっていく。こんな高さから落ちたらどうしよう……

「おお~、いい景色だな、」

景色を楽しむ余裕などない。私に出来ることといえば、ドラゴンの背中にしがみついていることぐらいである。

「だ、大丈夫……?」

アミカさんにも、心配されてしまった。

「怖い……です……」
「心配ないよ、こいつ、人を落としたりなんかしないから、それとも、高所恐怖症?」

高所恐怖症とか以前に、座るシートも、シートベルトも無いのに、こんな空高くまで丸腰でいるとか相当な恐れ知らずじゃないと出来ないのでは?

「KUMIさん、1回立ってみてよ、」

Tellさんがいたずらに微笑む。怖がる私がそんなに面白いかよ……

「まぁまぁ、ただでさえ、初めてのドラゴンなんだし、少しずつ、慣れていけばいいよ」

ドラゴンは私達を乗せたまま、あの時、通り過ぎた海の上を飛び続けている。勇気をだして下を見てみると、どこまでも海が広がっていた。

「Tell、目的地は、トロンティアでいいんだよね?」

「ああ、ここからあと何分でつく?」
「……2日かな、」

えっ? そんなにかかるの?

「どういうこと? 俺たちは1日で海賊島まで着いたぞ?」

「双子岩の近くの『呪いの海域』があるでしょ?」
「『呪いの海域』が、どうかしたか?」

「あそこ、時空が歪んでるんだよね、本来はめちゃくちゃ広い海域なんだけど、ある一点を通り過ぎようとすると、骸骨だらけの別世界に飛ばされる。」

「その一点が、双子岩ってことか、」

かなり複雑な話になってきたな……

「ということは、双子岩を横切っていけば、もっと早く着けるんですか?」

「そんなことしたら、、骸骨達と戦った場所、もう1回通らなきゃ行けないよ?」

それは確かにやばいな、骸骨さんたちが、敵と間違えて襲ってくるかも、

「それに、あの辺には、嵐が起きていた。そんな所をこいつに飛ばせるには行かない」

「ギャオオオ!」

「うわあ!!」

急にドラゴンが叫びだし、私も驚いて叫んでしまった。

「えっ? 嵐でも飛べるって? ダメだよ、雷とか当たったらどうすんの?」

雷とか当たったら私たちもタダではすまなさそうなんですけど……

「ちゃんと安全なところ飛ばないと、ね?」

「ギャウウ~」

かわいいな……まるで犬みたいだ。

「そう言えばこいつ、スタミナは大丈夫なのか? このまま飛び続けて、スタミナ切れで落っこちたら大変だ。」

「大丈夫、ランタロウはスタミナとHPに振ってる長期戦型のドラゴンだから、」

「ランタロウ?」
「この子の名前だよ、種族はランドドラゴン、土属性のドラゴンで、HPとスタミナが高いから、強いモンスターとの戦闘でも長く耐えることが出来るんだ。他にもドラゴンには色んな種族がいるんだ!」

「アミカはこのゲームで大量の、しかも色んなモンスターをペットととして飼育している。モンスターについての情報なら、俺よりも詳しいだろうな。」

へぇー、そんな人もいるんだ。

「ランタロウ、そろそろ休憩する?」
「ガウッ!」
「じゃあどこか手頃な島に下ろして?」

これだけ体の大きなドラゴンだ、降りる場所を探すのにも一苦労だろう、さっきの海賊島も、骸骨達と協力して、スペースを確保しなけりゃ、降りることが出来なかった。
なんか、ヘリポートみたいな感じでドラゴンポートをあちこちに設置してくれればいいのに。


「よし、ランタロウ、あの島に下ろして」
「ギャウッ!」

ランタロウは方向を変え、小さな島へと、降りていった。




降り立った島は、モンスターの少ない、とても安全な島だった。海岸の近くの平地になっている場所にテントを構え、Tellさんは食料探しに、私は枝や木片を集めて焚き火をし、アミカはランタロウに餌を与えようとしていた。

「普段は何を食べさせてるんですか?」
「今日はラットを食べさせようかなって、ジャンボラットっていう巨大なネズミのモンスターを餌用に繁殖させたやつなんだ。」

でっかいな……ネズミと言うより、カピバラだな、いや、餌用に太らせてるからか、ミニブタのようにも見える。こんなでかいのをランタロウは、ゆっくりと口に運び、そのまま丸呑みにしてしまった。

「ギャオオ~!!」

ランタロウは喜んで食べてくれているようだ。本人が喜んでるならそれでいいのだろう。

「焚き火の方は出来た?」
「はい、あとは火を付けるだけです。」

積んだ木片達に向かって、遠くから火を放つ

「ファイアボール!」
「ボゥッ!!」

よし、これで完了、これがあれば夜でも安心できる。

「あっ! Tell! なんか食料見つかった?」 
「ああ、木の実を大量に摘んできたのと、イノシシを2匹狩ってきた。あとを近くの川から魚を5匹採ってきた、」

「イノシシは普通に戦闘で倒せるから良いとして、魚はどうやってとってきたんですか?」

「手掴み、」

「ええっ!?」

すごいな…… どうやったらそんな芸当が出来るんだ……?

アミカさんが捕まえた魚を見つめている。

「これは……ハヤアユだね、泳ぎが異様に早い事からそう名付けられたはずなんだけど……」

それよりもTellさんの方が速いと、バケモノだなこの人、

「じゃあ、私達もご飯にしよう、アユは、塩焼きにして、一緒にイノシシ肉も焼いちゃおっか、」

こうして私たちは、島の恵みを頂いて、一時のサバイバル飯を楽しんだ。余ったイノシシ肉は、ランタロウに食べさせた。
そう言えば、非常食のこと、すっかり忘れてたな、せっかく3人分あったのに……
まあ、お魚美味しかったし、いっか。

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