魔法攻撃のすすめ

「ところでRAY、このボス、お前ならどう倒す？」
「そうだな、もう、ボクの正体バレちゃったし、君らの目を気にせずに魔法攻撃ができるから……」
「そっか、お前結構色んな魔法使えたからな、」

一度に処理できる情報量を超え、完全に思考が停止してしまった私をよそに、2人は作戦を考え始めていた。

「とりあえず、奴の目玉を攻撃するのはほぼ不可能に近い、レーザー攻撃を避けながら、一瞬の隙をつくのは、今のボクたちの戦力じゃ無理だ。」

「じゃあどうするんだ？」

「魔法攻撃を遠距離から当てる、spをそこまで消費しない攻撃を連続で当てて、次の攻撃のチャンスを作る」

「それだとspが尽きたら倒せなくなるぞ？そうなったら結局ジリ貧で終わる」

「それでも大丈夫だ、ボクはほかのプレイヤーよりspが高く設定されてる」

「なるほどな、でも、どうせなら狙いたくない？ 弱点の目玉、」

「まあな、一応、さっきの風おこしの攻撃を利用して、上から攻撃することは出来なくはないし、ボク風魔法も使えるから、竜巻を起こすこともできるよ？ それなら弱点を狙えない訳じゃない」

「じゃあ、あとはどのタイミングで突っ込むか……」

そうだ、さっきのレーザー攻撃をくらった時に分かったことがある。

「そういえばあのボス、レーザー攻撃の時、自分から1番遠い人から狙うようにしている気がします。」

「本当か！？」

「確証はありませんけど……」

「その仮説が正しければ、1人を囮にして、その隙に目玉を狙うことが出来るかもしれない！」

「でも、もう使っちゃったよね、闇のローブ、」

「あ……」

……誰かが囮、そうか！ 私なら！

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「はい、でもまだ、スキルとか、魔法とかの使いどころが分からなくて……まだspが足りないから、１回使っただけですぐ無くなっちゃうし、」

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「ダッシュアタックはいろんなコンボに派生できるから序盤は重宝するだろうね、spもそんなに使わないし、」

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「……私、ちょっと思いついたんですけど、やってみても、いいですか？」

よし、これなら、あのボスに一泡吹かせられるかもしれない、今はとりあえず、目の前の敵に集中しよう……！

「ギエエェェーーー！！！」

「まずい！ レーザーだ！！」

spが尽きたらどうなるのか、考えている暇なんてない。
この魔法は、かなり序盤から使えるようになったものの、spのほぼ全てを使ってしまうから怖くて使えなかった。
それを今、ここで使う。

「フレイムブラスト！！」
「ゴオォー！！」

目の前が炎で包まれる。その炎は相手を包む業火にもなり、攻撃から身を守る炎の壁ともなる。

「お願いします！！ 私の目の前に竜巻を！！」

「分かった、ボクに任せて！ ハリケーン！！」

「ビュウウオオ！！」

よし、この竜巻の威力なら……！

「ダッシュアタック！！」

私は、目の前の炎の壁を突っ切って、竜巻へと飛び込んだ、風によって体は宙へ浮き上がり、炎を纏った体で、私は奴の斜め下から、突き上げるように……

「行っけええぇ！！！」

「ザクッ！！」

「グエァァァァァッ！！！！」

目玉に攻撃した。

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「ドサッ……」

ボスは、そのまま地面へと落ちていった。

『モンスターを倒した！』
『アイテムドロップ : 闇のローブ
                                       青銅の剣
                                       万能薬』

「やった……倒した……！」
「凄いじゃないか！！」

「やっぱり……私……」

目の前が急に暗くなった。バランスを崩し、そのまま地面に倒れた。直感で察した、spが尽きると気を失うんだ……

「バタッ……」

「ッ！？ 大丈夫か！？ KUMI！！」
「しっかりするんだ！！」

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目を覚ますと、私は、ベッドの上にいた。

「おう、起きたか、えっと……KUMIさんだよね？」

横には、エプロン姿のRAYさんがいた。エプロンを着ていると、余計に女の人に見えてくる。

「はい、……ここは、どこですか？」
「ここはギルドのアジト、君が気を失ったあと、このアジトまで連れてきた。ここは療養室と言って、怪我や病気を治す場所だ。」

「ギルドの、アジト？」
「ボクはギルドのメンバーなんだ、リーダーでもあり、衛生兵でもある。」

リーダーでもあり衛生兵って、かなり重要なポジションだな。その役割を1人でこなしているのか……

「Tellとは、幼なじみみたいなものだ。同じ町にスポーンし、同じ場所で戦ってきた。」

だからTellさんのことも知ってたし、Tellさんも、RAYさんのことを知ってたんだな。

ふと、目の前にテーブルに鍋のようなものがあるのに気が付いた。

「これは？」
「君に食べてもらおうと思って作ったんだ。Tellに聞いた話だと、君この世界に来てから、何も食べてないようだし、」

そう言えば、確かに何も食べていなかった。Tellさんについて行くのに必死で、そんなこと気にもしていなかった。

「君が急に倒れてしまったのは、エネルギー不足によるものだ、空腹状態だと、spやスタミナが切れやすくなる。そうなると、エネルギー不足を起こして気を失ってしまうんだ。」

なるほど、そういう事だったのか。じゃあ、今は何か食べて回復しないと、

「ほら、お食べ？ チキンスープだよ、今日はいつもより、美味しく出来たんだ！」

嬉しそうに笑うRAYさんを横に、私は、ひたすらにスープを口に運んでいた。