後輩は積極的

Joker0808

第37話




 風呂から上がった俺達は、部屋に戻ってこれから何をするかの相談をしていた。
 
「で、どうする?」

「どうするって、温泉街を見て周りましょうよ」

「いやぁ……そうじゃなくて……この旅行って未成年も居るでしょ?」

「そうですけど?」

「酒飲んでも良いよね?」

「え? こんな真っ昼間からですか?」

 店長の言葉に俺は驚く。
 てか、店長ってお酒好きなんだ……。

「いや、未成年も居るから皆の意見を聞こうと思って、こう見えても俺、結構酒好きでさ……」

 照れながら言う店長。
 まぁ、確かに俺もどちらかと言うと飲めた方が嬉しい。 
 バイト先の人と飲み会なんてしたこと無いから、こう言う機会に一緒に飲んでみたい。

「飲んでも良いですけど、夕方まで待って下さいよ、流石に昼間っからは……」

「それもそうだね、確か近くのお店に酒店もあったし、夕方飲む用に買ってこうようかな」

 店長はすっかりお酒の事で頭がいっぱいのようだ。
 とりあえず、女性陣がお風呂から上がるのを待って温泉街に行くことになったが、なにぶん女性の入浴は長い。

「トランプでもする?」

「そうだな」

「でも、何するっす?」

「大富豪とか?」

 流れでトランプをする事になり、俺たちは女性陣が風呂から上がるまでトランプをする事にした。
 大富豪を始めて10分ほど経ったところで、ようやく女性陣がお風呂から上がってきた。

「じゃあ、行こうか」

「そうね」

 みんな集まり、俺たちは温泉街を歩き始める。
 始めてのバイト先での旅行。
 楽しいはずなのだが、俺の隣の女子校生は先ほどから、俺に厳しい視線を送って来ている。

「ま、愛実ちゃん?」

「なんですか?」

「あんまり睨まないでよ……」

「睨んでませんもん!」

 そう言ってプイっとそっぽを向く愛実ちゃん。
 最近わかってきた事だが、愛実ちゃんがこういう感じで機嫌が悪い時は、なかなか機嫌を直さない。

「あ、愛実ちゃん。温泉まんじゅう食べる?」

「太るから要りません」

「いやいや、普通に細いじゃん……」

「何ですか? 先輩は女子高生の体を見るのが趣味なんですか?」

「そうじゃねーよ! 一般論だ!」

 食べ物で釣る作戦は失敗。
 となると次は……。

「じゃあ、俺もう愛実ちゃんに近づかないから、皆と居るときは楽しそうにしててよ」

「え……」

 俺はそう言って愛実ちゃんの側を離れる。
 こういうときは、必要以上に関わらないのが一番だ。 変な事を言って余計にこじれても面倒だし。
 そう思いながら、俺は少し先を行く小山君達に合流しようとする。
 しかし……。

「ん? えっと……どうしたの?」

 愛実ちゃんが急に、俺の浴衣を握ってきた。

「べ、別に……機嫌は悪くないもん……」

 いやいや、さっきまですげー悪かったじゃん。
 まぁ、それを言ったらまたこじれるかもしれないし、ここは俺が大人になるか。

「そっか、じゃあ一緒に行くか?」

「……うん」

 顔を真っ赤にさせて小さくうなずく愛実ちゃん。
 こう言うところは可愛いのになぁ……。
 俺はそんな事を思いながら、愛実ちゃんの横を歩いて温泉街を散策する。

「足湯まであるのか」

「でもさっき温泉入りましたよ?」

 愛実ちゃんが機嫌が戻ったようで、いつも通りだった。
 みんなでお土産物屋に行ったり、昼ご飯を食べたり、あまりバイトメンバーでこんな経験をしないので、みんな結構楽しんでいた。
 
「小山さん! 木刀が! 木刀が売ってます!!」

「そうだね、そんなに珍しくないよ?」

「真嶋さん、俺ちょっとお酒買ってくるけど、今晩飲む?」

「私は……その……なんでも」

「雪ちゃーん、この髪飾りどうかな?」

「うん、とっても似合うよ」

 昼飯を食い終わり、俺たちは自然と二人一組になって行動するようになっていた。
 店長は真嶋さんと今晩飲む飲み物の買い出し。
 小山君と安達君は、お土産物屋を見に行き、椎名さんと双海さんは仲良く髪飾りを見ている。
 そして俺と愛実ちゃんは……。

「先輩、先輩!」

「何?」

「あの二人は不倫でしょうか?」

「いや、普通に夫婦だろ?」

 茶屋の屋外席でお茶を飲んでいた。
 
「美味しいですねぇ~このお茶」

「あぁ、買っていこうかな?」

 先ほどまでの不機嫌さはどこへ行ったのか、今の愛実ちゃんは凄く穏やかだ。
 
「お団子も美味しいですぅ~」

「太るよ?」

「えい」

「愛実ちゃん……痛いんだけど」

「女の子のお腹は、甘い物を食べても太らないようになってるんです!」

「何それ超便利。俺も欲しい」

 俺と愛実ちゃんはそんな話しをしながら、茶屋でのんびりと過ごしていた。
 
「先輩」

「なんだ?」

「やっぱりみんなで来て正解ですね」

「そうだろう?」

「はい……すっごく楽しいです」

「なら良かった」

「でも……先輩と二人ならもっと……」

「ん? なんだって?」

「なんでも無いですぅー! それよりも写真撮りましょうよ!」

「写真? なんで?」

「記念です! 女子高生とツーショットなんて羨ましがられますよ!」

「まぁ、良いけど」

「やった! じゃあいきますよぉー」

「どこから自撮り棒を……」

 愛実ちゃんはどこからか出した、自撮り棒に自分のスマホを取り付ける。

「はい先輩笑って~」

「そう言われてもなぁ……ってか近すぎる、もっと離れて」

「えぇ~良いじゃ無いですかぁ~、先輩と私の仲でしょ?」

「どんな仲だよ……あんまり言いたく無いけど、当たってるの!」

「何がですが?」

「む……胸が……」

「え? あぁ、別にちょっとくらい良いですよ? 減るもんじゃないですし、なんなら触って見ます?」

「触るか!」

 いや、この子何を言ってるの!?
 普通そこは恥ずかしがるもんだろ!
 俺はそんな事を考えながら、愛実ちゃんから距離を置く。

「なんで離れるんですか?」

「前々から愛実ちゃんに言いたかった事がある」

「ん? 急に何です?」

「君は男との距離が近すぎる!」

「そうですか?」

 いや、そうだよ!
 急に手を握ってくるし、くっついて来るし!
 そんな事をしてたら、男は勘違いしてしまうぞ?

「でも私、先輩以外にこんな事しませんよ?」

「へ?」

「だって私、先輩以外の男の子と二人で食事とか行ったことないし、手も繋いだことありませんよ?」

「なんで俺だけ?」

「だって、先輩は先輩だし」

「いや、理由になってないよ……」

「先輩は良いんです! ほら、早く撮りましょうよ!」

「だから近いって!」

 グイグイと俺にくっついて来る愛実ちゃん。
 仕方なく俺は愛実ちゃんとくっついて写真を撮る。

「あ、これ良いですね。私の待ち受けにしよ」

「いや、そういうのって彼氏と撮って待ち受けにするもんでしょ?」

「じゃあ、学校の皆には先輩が彼氏だって言います」

「どんな嘘だよ……」

 見栄を張るにしても微妙過ぎる。
 どうせなら小山君と写真でも撮って、これが彼氏って言えば良いのに……。

「はぁ……愛実ちゃんは本当に……」

「本当に?」

「俺をからかうのが好きだね」

「………好きなのはからかう事じゃ無いし……」

「ん? なんか言った?」

「なんでも無いです! すいませーん! お茶おかわり下さい!」

「まだ飲むの……」

 俺と愛実ちゃんはその後しばしゆっくりした後、皆と合流して旅館に戻った。





「え? 卓球?」

「はい! 先輩やりましょう!」

 旅館に戻って少し休んだ後、愛実ちゃんが突然やってきて俺にそう言った。

「良いね、みんなでやる?」

「良いっすね! 俺もしたいっす!」

「ですよね! 皆さんも一緒に行きましょう!?」

 愛実ちゃんの一言で、皆で卓球をする事が決定し、俺たちは受付に断って、卓球台とラケットを借りて卓球を始めた。

「さて、どうせならトーナメント形式でやらない? 丁度八人だし」

「良いっすね! じゃあ、対戦表作りますか!」

 話しはどんどん進み、トーナメント表が出来上がる。 
「じゃあ1回戦は! 小山さんと雪ちゃん!!」

 司会兼審判は双葉さんだ。
 
「えっと……よ、よろしくお願いします!」

「お手柔らかにね」

 爽やかな笑顔でそういう小山君。
 しかし、試合が始まると……。

「えっと……11対0で小山さんの勝ちぃぃぃ!!」

「大人げねぇ……」

「小山さん酷いっすね」

「フフッ、遊びでも本気でやらないとね」

「うぅ……強いですぅ……」

 小山君の事だから、手加減するのかと思ったが……メッチャ本気だった。
 と言うわけで、一回戦は小山君の勝利。
 続く二回戦は、安達君と店長だ。

「店長! 手加減しませんよぉ!!」

「俺、卓球ってしたこと無いんだよなぁ……」

「それでは行ってみましょう!! 試合開始!!」

 二回戦は安達君対店長。
 この試合はなかなか良かった。
 二人のレベルが同じくらいだったので、かなり良い試合だった。
 結果は13対11で店長の勝利だった。

「なかなか楽しかったね」

「て、店長強いっす……」

 続く第二試合は、真嶋さんと双海さんだったのだが……。

「あ! 私はいいやぁ~、審判だし!」

 と言う理由で、双海さんが棄権したので、真嶋さんの不戦勝。
 そして、ついに俺の番がやってきた。
 対戦相手は……。

「先輩! 手加減しませんよぉー!」

 愛実ちゃんだ。
 まぁ、体力勝負で愛実ちゃんに負ける事は無いとは思うし、少しくらい手加減しないと後がうるさそうだ。
「先輩! ただやるんじゃ面白くないので、負けたら罰ゲームをしませんか?」

「え? 罰ゲーム?」

「負けた方が勝った方の言うことを何でも聞くってのはどうですか!」

「えぇ……やだよ」

「なんでですか! もしかして私に負けるのが怖いんですか?」

「あぁ、怖いよ」

「即答!?」

 正直本当に怖い。
 愛実ちゃんがこんなに自信満々に言うときは、何かしら理由がある。
 負けたら、また買い物に付き合わされたりするに決まっている。
 それに、別に愛実ちゃんに頼みたい事もないし。
 安全策を取るのが一番良い。

「なんでですかぁ! やりましょうよぉ~」

「嫌だよ……何か裏がありそうだし、俺は別に愛実ちゃんに命令したい事も無いし」

「エッチなお願いも出来ますよ?」

「バイト仲間がこんなに居る中でそんなお願いしないよ……」

「むぅ~、つまんないなぁ……」

「なんとでも言え」

 愛実ちゃんの意見を却下し、俺と愛実ちゃんの試合は普通に始まった。
 
「えい!」

「ほい」

「たぁ!」

「ほい」

「あっ………」

「岬さん一点です!」

「もぉ! 真面目にやって下さいよ!!」

「やってるって」

 愛実ちゃんは結構上手かった。
 しかし、動きが大きすぎてスキが多すぎる。
 だからか、点を取るのは難しくない。
 だが……。

「おっと……」

「やったぁぁ!」

「愛実ちゃんに一点です!!」

 点数を取られてしまった。
 そう、点数を取ることは簡単なはずなのだが……俺は愛実ちゃんの大きな動きのせいで、逆にピンチにもなっていた。
 その理由は、愛実ちゃんが動く度に浴衣が少しズレて、胸の谷間がチラチラ見えるのだ。
 そのせいで、ボールに完全に集中出来ない。

「9対8です! 岬さんはあと一点で勝ちですよ!」

「絶対負けないですからね!」

「はいはい」

 そんな事は言っても、先ほどから愛実ちゃんのおっぱいが気になって仕方ない。
 いや、気になってではない。
 ただ単にラッキーだと思っている。
 だから、このラッキーを続ける為に俺は……。

「ほい」

「たぁ!」

「よっと」

「えい!」

 長くラリーを続ける。
 そうすれば、愛実ちゃんの揺れる谷間を眺めていられる。
 いや、確かに愛実ちゃんに欲情とかはしないよ?
 でも男なら見ちゃうよね?

「あ、やべ!」

「わーい! これで同点だぁ!!」

「しまったなぁ……」

 愛実ちゃんのおっぱいを見過ぎて、同点になってしまった。
 これはまずい……。
 やるからにはどうせなら勝ちたい。
 今度は本気でやろう。
 そう決めて、俺はサーブを打った、しかし……。

「わーい! 先輩に勝ったぁ!」

「まさか負けるとは……」

 結局俺も男だったと言うことだろう……愛実ちゃんのおっぱいから目を離す事が出来なかった。
 
「私のおっぱいばっかり見てるからですよぉ~だぁ!」

「そうだな………ん? 今なんて?」

「私のおっぱいばっかり見てるから、負けるっていったんですよ?」

「知ってたの?」

「はい、途中から先輩、ボール見ないで私のおっぱい見てましたもん」

 やっべ……死ぬほど恥ずかしい……。
 俺は自分の顔が熱くなるのを感じる。
 小山君と安達君は、俺の事をおっぱい星人と呼んでからかっている。

「き、気がついてるなら言えよ!」

「言ってもよかったんですか?」

「いや……それは……ちょっと」

「私のおっぱいそんなによかったですか?」

「黙れ!」

「あうっ! 自分が悪い癖にぃ~」

 俺は、からかってくる愛実ちゃんの頭にチョップをかます。
 八つ当たりなのは自分でもわかっている。

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