後輩は積極的

Joker0808

第34話


「そ、それはなんて言うか……大変だね」

「あぁ、本当に……」

 俺と古瀬は次に雑貨店に入った。
 なんとなく面白そうだからと言う理由で入ったのだが、予想以上に面白い物が棚に並んでいる。

「なんだこれ? まな板か?」

「へぇ~豚の形してるんだ、可愛いね」

「こっちは……マグカップか……ってこれも豚の形……」

「ここの店員さんに豚好きでも居るのかな?」

「豚が好きな人なんて、なかなか聞かないけどな」

 お洒落場マグカップに、調理器具、椅子も変わった形の物が置かれており、見ているだけで楽しい店だった。
 
「凄いな、このエプロン……ピンク色だし、フリルが付いてるし……」

「なんか、絵に描いたような可愛いエプロンだね……」

「新婚の馬鹿夫婦が買っていきそうだな……」

 可愛らしいピンクのエプロンには、正直驚いた。
 こんな物誰が着るのだろうかと考えながら、俺はふとそのエプロンを古瀬に向ける。

「古瀬……意外と似合うんじゃないか?」

「似合わないよぉ~そんなの」

「そうか? 彼氏が出来た時用に買って置いたらどうだ?」

 なんて冗談半分で言ったが、流石にこれをきた彼女が玄関を開けてやってきたら……あれ? ちょっと有りかもしれない……。
 
「か、彼氏かぁ……」

「ん、狙ってる奴でもいるのか?」

「え!? えっと……その……一応居るけど……」

「え!? マジで?」

 うーむ、古瀬は一体どんな男が好きなのだろうか?
 少し気になってしまう……。
 しかし、こう言うのはあまり聞かない方が良いだろう。
 頬を赤らめる古瀬を見て、俺はなんだか少し残念な気持ちになる。
 こんな良い子でルックスも完璧なら、断る男なんていないだろう。
 古瀬にはもっと自信を持って貰いたいものだ。

「頑張れよ! 応援してるから」

「あ、ありがとう……でも最近上手くいってるんだぁ……」

「へぇーそうなのか?」

「うん! ちょっとした事だったんだけど、話す切っ掛けが出来て……結構今良い感じ……」

「おぉ! それは良かったな! でも良いのか? 俺なんかと買い物してるとこ見られたら、誤解されるんじゃ……」

「ううん……大丈夫、見れないから………」

「へ?」

 どういう意味だろうか?
 俺は古瀬の言っている言葉の意味がわからず、首を傾げる。
 まぁ、見れない理由でもあるのだろう。
 俺と古瀬は店を出て、ショッピングモール内のカフェに入った。
 夏休みも終わり、平日と言うこともあって中は空いていた。

「俺はアイスコーヒーで、古瀬は?」

「じゃあ、アイスカフェオレでお願いします」

 店員に注文を頼み、俺と古瀬は向かい合って座り、雑談をし始める。

「そう言えば、古瀬と俺って出身が同じなんだよな?」

「うん、やっと気がついた?」

「あぁ、この前SNSに写真上がってただろ? あの景色なんか見た事あるなって思ってさ」

「あぁ、この前お盆で帰省した時の写真だね」

 そう言えば俺は今年の夏は家に帰らなかったなぁ……。
 妹からは帰って来いと言われたが、色々と準備したり面倒だろうしな……。

「古瀬は結構実家に帰るのか?」

「年末年始とお盆くらいわね。あんまり長くは居ないけど」

「俺はあんまり帰ってないなぁ……バイトもあるし」

「そんなにバイト入ってるの?」

「まぁ、それなりにな……金貯めたいし」

「ちなみだけど、そっちのお店って時給いくら?」

「えっと……俺は確か980円だけど?」

「あ、やっぱり高いね。私はまだ870円だもん」

 俺も入ったばかりの頃は、それくらいの金額でやっていた。
 確か研修期間が終わってから、三ヶ月ごとに少しづつ上がっていったんだったな。

「ま、続けてれば時給なんて上がるさ、それよりもあんま無理すんなよ?」

「大丈夫だよ、無理してもまた岬君が来てくれるし」

「あのなぁ……」

「ウフフ、冗談だよ」

 楽しそうに笑う古瀬を見ていると、なんだかこんなどうって事無い雑談が幸せに感じる。
 古瀬みたいなのが彼女なら、毎日楽しいのだろうがなぁ……。
 好きな人が居るんじゃあ、俺にチャンスなんてないか……。







「何を話してるのかしら?」

「さぁ? それよりここのコーヒー美味しいわね」

「何を呑気にコーヒーなんて飲んでるのよ!」

「そりゃあ、私は岬君がどこの誰と仲良くしてても良いし」

 私と愛生は岬君達が入った喫茶店に入り、角の目立たない席に座って、岬君達の様子を見ていた。
 何やら楽しそうに話しをしているが、会話の内容まではわからない。

「さっさと告白しないアンタが悪い」

「だ、だから! 私は別に岬君なんて!!」

「そんな事言ってるとあの子に取られるわよ?」

「と、取られるって、な、ななな何が?」

「岬君が」

「あ、あんな失礼な後輩、のし付けてあげるわよ! もっとも、あの子が岬君に興味があればの話しだけど!」

「絶対あるでしょ? 無かったら一緒に買い物なんて来ないし」

「無いわよ! だって岬君よ? 冴えないし鈍感だし!」

「アンタ、自分で言ってて悲しくならない?」

 そうだ、岬君の魅力なんて私以外に気がつく人間なんて居るはずがない……居るはず……。

「それよりもあれ、どう思う?」

「何よ? あの女子高生がどうかしたの?」

 愛生が指さした方には、高校の制服を着た女子高生がアイスティーを見ながらどこかを凝視していた。
 
「あの子、さっきからずっと岬君を見てるのよ」

「気のせいでしょ? なんで岬君が女子高生に凝視されるのよ?」

「それもそうなんだけど……あの子、駅からずっと三崎君を付けて来てるのよ」

「本当? もしかしてストーカー?」

「ま、私らも変わらないけどね……本物だったらヤバイわよね?」

 今後はあの子の動きにも注意を向けた方が良いかもしれないわね。






「先輩めぇ……何をあんなにニヤニヤとぉ~」

 私は先輩達が入ったのと同じ喫茶店に来ていた。
 先輩に見つからないように、私は目立たない角の席に座る。
 なんだかいつもよりも楽しそうしている先輩に、私はなんだか腹が立った。

「私と居る時はため息ばっかりの癖に……」

 腹が立つので、今度のバイトのシフトが被ったときは先輩を弄り倒そう。
 私はそう心に決めて、注文したアイスティーを飲む。 しかし、あの二人組もしつこい。
 まだ先輩の後を付けている様子だ。
 
「もしかして……本当のストーカー?」

 だとしたら大変だ。
 このまま先輩があの人と仲良くしてたら、あの人達に何をされるかわからない!

「でも……本当にストーカーかしら? なんか言い争ってるみたいだし……私の勘違い?」

 私はそんな事を考えながら、先輩の方に視線を戻す。 先輩は相変わらず、楽しげに話をしていた。
 
「むぅ……」

 こんな事を言うと、なんだか私がストーカーみたいだが、先輩は私だけの先輩であって欲しいと思ってしまう。






「さて、もうそろそろ行くか」

「そうだね」

 俺と古瀬は喫茶店を出て、再び買い物を始めた。
 目的のCDショップに向かい、その後は二人でスポーツ用品店に向かい、最後は本屋に行って買い物は終了した。

「色々見れてよかったよ、ありがと」

「いや、俺も楽しかったよ。また来ようぜ」

 帰り道、俺は古瀬と歩きながら話をしていた。
 
「う、うん。私もまた……じ、次郎君と来たいな……」

「え? あ、えっと……」

「い、嫌だった? 名前で呼ぶの?」

「あ、いや……ちょっとビックリしただけだよ、別に良いよ」

 急な名前呼びに俺は驚いてしまった。
 しかし、ここまで色々話すような中になって、お互いに名字で呼び合うのもなんか変だし、別に俺は気にしないから別に良いか。

「じ、次郎君も……私の事、名前で呼んで良いよ?」

「え? あぁ……そ、それはちょっと恥ずかしいから……良いかな」

「じゃ、じゃあ一回で良いから……その……あの……呼んでみて」

「い、いやそれが恥ずかしいんだが……」

 女子の名前を呼ぶのは結構抵抗がある。
 呼んでも良いと言われても、なんだか馴れ馴れしいのではないかと思ってしまい呼びづらい。

「は、恥ずかしいかな? 一回呼べば馴れるかもしれないよ?」

「そ、そうかな?」

「そ、そうだよ!」

 まぁ、あっちも名前で呼んでる訳だし。
 俺も名前で呼ばないと変かな?

「じゃ、じゃぁ……優華……さん?」

「さ、さん付けはおかしくない? それになんで疑問形なの?」

「わ、悪いやっぱり恥ずかしいから、名前で呼ぶのは馴れてからでも良い?」

「う、うん……やっぱり急には難しいよね?」

 互いに呼び慣れない名前で呼んだからか、気恥ずかしい空気がその場に流れる。
 
「は、早くバス停まで早く行こうか」

「う、うん」

 俺たちは照れたまま、バス停まで向かう。
 
「ね、ねぇ……次郎君ってこの後時間ある?」

「え? 大丈夫だけど……もう時間も遅いよ?」

 バスに乗ると、隣に座った古瀬が俺にそう行ってきた。 
 時刻はもう18時だ、これからどこに行こうと言うのだろうか?

「じゃ、じゃあ……私の家来ない? ご飯ご…ご馳走するから!!」

「え? いや……良いの? 一人暮らしでしょ?」

 別に部屋に入って古瀬をどうこうするって話ではないが、一人暮らしの女性の家に男が行くのはかなりまずい気がする。

「い、良いよ……じ、次郎君なら……」

「あ……いや……そういう事なら……」

 顔を真っ赤にする古瀬。
 一緒に買い物をして、夜は部屋に呼ばれて……。
 いやいや! これは期待しても良いのか?
 だって、これはもう……いや、まて!
 人の良い古瀬の事だ、きっとただ単にご飯を食べさせてくれるだけかもしれない!
 料理が好きで人にご馳走するのが好きなのかもしれない!
 そうだ、しかも古瀬には好きな人が居るじゃないか!
 これはきっと、彼女なりの今日の買い物のお礼なのかもしれない!

「そうだ……そうに違いない……勘違いするな俺!」

「ど、どうしたの?」

「いや! 何でもないぜ!」

「そ、そう?」

 俺は自分に勘違いをするなと言い聞かせながら、古瀬と共に古瀬の自宅であるマンションに向かって歩いて行く。

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