後輩は積極的

Joker0808

第23話

「あ、あれって……」

「どうしたんですか?」

「いや、あの女性店員が……ってイテテテッ!!」

 レジの女性店員を指さした瞬間、愛実ちゃんは俺の足を踵(かかと)でグリグリしてきた。

「な、なにするんだよ!」

「先輩もうあれですか? バイト先変えますか? そんなに綺麗な女性の居る店がいいですか?」

「違う違う! そうじゃなくて、あの店員がうちの大学の生徒だって言いたかったんだよ!」

「あ、そうだったんですか? 友達ですか?」

「いや、ただ何回か講義で見かけて……あ、あの痛いからそろそろやめてくれない?」

「あ、すいません。私は痛くないので」

「そうだろうね!!」

 なんでこんなに愛実ちゃんは不機嫌なのだろうか?
 さっきまでそんな様子は一切無かったのに、今の愛実ちゃんは頬を膨らませて、ジト目でこちらを見ている。

「あいつ、ここでバイトしてたのか……」

「随分綺麗な人ですね!」

「なんで綺麗を強調するかな……」

 なんでかは知らないが、怒ってしまった愛実ちゃんを放って、俺は店員の方を見る。
 名前は古瀬優華(ふるせ ゆうか)。
 結構可愛いから、大学内では結構目立っていたと思う。
 
「まぁ、そう言っても数回話した程度なんだが……」

「へぇー、話したことはあるんですねー」

「そろそろ機嫌直してくれない? なんで怒ってるのか分からないけど……」

「自分で考えて下さい!」

 俺と不機嫌な愛実ちゃんは、食事を終えて店を出た。
 愛実ちゃんはまだ不機嫌だ。

「愛実ちゃん、いい加減に……」

「フン! どうせ私は綺麗じゃないですもん!」

「いや、何を言ってるんだよ……それに、愛実ちゃんは十分可愛いだろ?」

 俺がそう言った瞬間、愛実ちゃんの耳がぴくりと動いた。

「い、今……なんと?」

「え? だから可愛いって……」

「ど、どの辺がですか!?」

「うぉ! ち、近いって!」

 俺が愛実ちゃんに可愛いと言った瞬間、愛実ちゃんは顔を赤くして俺に迫ってくる。
 俺はそんな愛実ちゃんから距離をとって話す。

「いや、普通に可愛いと思うよ、目も大きいし、スタイルも良いし」

「も、もぉ〜先輩ったらぁ〜、私のどこを見てるんですかぁ? この変態!」

「面倒くせぇ……」

 結局機嫌が良くなっても罵倒するのかよ……。
 俺はそんな愛実ちゃんを家に送っていき、自分の家に帰宅する。
 そんな帰り道の途中……。

「ん? なんだあの人、ふらふらして」

 家に帰る途中、俺は住宅街でふらふらしながら歩いている女性を見かけた。
 具合でも悪いのだろうか?
 俺がそんな事を思いながら、その女性を見ていると、とうとう倒れてしまった。
 
「まじかよ!」

 俺は慌ててその女性の元に駆け寄る。

「大丈夫ですか?」

「う、う……うぅ〜」

「き、君は……」

 俺はその女性の顔を見て驚いた。
 
「古瀬?」

「だ、だれ?」

 まぁ、確かにそうなるよな。
 とにかく、気分を落ち着かせるためにどこか横に慣れる場所に連れて行こう。
 俺は近くの公園のベンチに彼女を運び、ベンチに寝かせた。

「大丈夫か?」

「あ、ありがとう……気分が悪くて……めまいが……」

「バイト中、まめに水分補給しないとダメだぞ? それに一日忙しかったから疲れたんだろ、軽い熱中症みたいになったんだな」

 俺はそう言いながら、バックからペットボトルの飲み物を差し出す。

「とりあえず水分取れ、顔真っ青だぞ?」

「う、うん……ありがとう」

 古瀬はそう言ってペットボトルの蓋をあけて、飲み物を飲む。
 少しすればまた立ってるようになるだろ。

「同じ大学の古瀬だろ? 俺は岬次郎、同じ大学の二年だ」

「あ……えっと……間宮先輩の彼s……」

「彼氏じゃない」

「そ、そうなの?」

 俺はまだ顔の青い古瀬の隣に座り、ため息を吐く。
 古瀬は少しして、気分が少し戻り、ベンチに座り直す。

「ありがとう、岬君」

「気にすんな、俺も最初の頃は油と熱さでやられた」

「岬君もバイトしてる?」

「あぁ、俺の店は古瀬の店から少し離れてるけどな」

「そうなんだ、今日はバイト帰り?」

「あぁ、気が付かなかったと思うが、古瀬の店にさっき行ったんだぞ?」

「え、そうだったの?」

 慣れていないとファーストフード店の仕事は大変だ。
 しかも夏場は暑さもある。
 俺は歩けるようになった古瀬を家まで送ることにした。

「ここでいいか?」

「うん、ありがとう。今度はちゃんとこまめに水分補給してバイトするね」

「あぁ、気をつけろよ? じゃあな」

「うん……ばいばい」

 俺は古瀬を送り届け、再び自分の家に向かう。






「え? 大学に行くの? 夏休みなのに?」

 バイトから帰ると、待ってましたと言わんばかりに間宮先輩が家の前で待っていた。
 俺はそんな先輩に晩飯を作り、大学に行く理由を話す。

「ちょっと図書館に用があるので」

「ふーん、珍しいわね」

「調べ物をしたくて」

 図書館には、俺が所属する温泉サークルの先輩達が残した、温泉雑誌や温泉に関する資料が置かれている。
 俺の目的はそれだ。
 今度店の皆で行く温泉をその中から選べないかと考えていた。

「なんでも良いけど、今日もやるわよ! 朝まで!」

「先輩……夏休みなってから、俺の部屋によくゲームしにきますけど、暇なんですか?」

「そ、そんなことないわよ! こ、この前だって、コンパのお誘いがあって、断るの大変だったんだから!」

「へいへい、そうですか……明日は朝から大学行くんですから、お手柔らかに頼みますよ」

「大丈夫よ、朝の四時位までなら平気でしょ?」

「日付は越えない方向でお願い出来ないでしょうか………」

 結局その日は先輩に付き合って、朝五時までゲームをしていた。
 ジャンルがFPSだったため、二人でオンライン対戦をしたのだが、どちらもムキになってしまい、一睡もしないまま朝になってしまった。
 本当にこの人が来るとろくな事がない……。

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