後輩は積極的

Joker0808

第16話




 愛実ちゃんとプールに行った翌日。
 俺はバイトの休憩中に、小山君に昨日のプールについて質問責めにあっていた。

「んで? どうだった?」

「どうって?」

「楽しかったとかあるだろ? 水着が可愛かったとか」

「あぁ……プールのスタッフがうざかった」

「いやいや、愛実ちゃんの水着とか! 何かあるだろ!?」

「え? 別に……無いけど?」

「おまっ! はぁ……愛実ちゃん可愛そうだな」

「そう言ってもなぁ……」

「はぁ……もしかして岬君って年下より年上派?」

「え? うーん……どっちかって言うと、優しいお姉さんタイプが好きだな!」

「あぁ……ダメだこりゃ……」

「何がだよ! 失礼だな」

 二人で昼飯を食べながらそんな話しをする。
 ちなみに、愛実ちゃんは今日は休みだ。
 だから、休憩室でこんな話しが出来る。

「そういえば、次郎君は明日休みだっけ?」

「あぁ、サークルの飲み会なんだ」

「温泉サークルだっけ? 風呂でも入りにいくの?」

「まぁ、そんな感じ。正直気は進まないんだよなぁ」

 そう、明日は俺が所属する温泉サークルの活動日。
 温泉宿を経営している先輩の家に行くのだが、同じサークルに間宮先輩が居るため、あまり行きたくない。
 夏休みに入って、顔を合わせる回数も減るかと思ったのだが、ほとんど毎日家にやってくる。
 
「はぁ………」

「そんなに嫌なら行かなきゃ良いのに」

「俺だって、行かなくて良いなら行かないよ。でも、強制参加みたいなとこがあってさ……」

「そうなんだ、色々大変だね」

「あぁ、先輩の家だからあんまり金が掛からないのは良いけど……」

 俺は小山君にそんなグチを言いながら、食事を終えた。





「え? 夏祭り?」

「そう! クラスのみんなで行こうって話しになってるんだけど、愛実も来ない?」

「うーん」

 私は先輩とプールに行った日の翌日、友達と一緒に買い物をして、喫茶店で話しをしていた。
 高校最後の夏休み、勉強も大切だが、皆最後の高校生活を満喫したいらしく、こんなイベントを企画して誘ってくる。
 しかし、私は昨日息抜きと言う名目で先輩とプールに行ってしまったし、なんだか気が進まない。
 先輩と行ったプールが楽しすぎたからだろうか?

「私は遠慮しておく、それに明日バイトもあるし」

 午前中だけだけど……。
 あ、でも明日は先輩……居ないんだ。
 私がそんな事を考えていると、一人の友人が私の肩を掴んで懇願してきた。

「お願いだよぉ〜、行こうよぉ〜、愛実が来るから行くって男子もいっぱい居るんだから〜」

「私を餌に使ってるわけ……なら絶対行かない!」

「なんでだよぉ〜行こうよぉ〜、愛実だって高校三年間彼氏無しはきついでしょ?」

「別に! きつくないし」

 それに私にはもう好きな人が居る。
 今更同級生に恋なんてしないと思う。

「頼むよぉ〜、一緒に高校生活最後の夏の思いで作ろうよぉ〜」

「だからバイトが……」

「祭りは夜からだし、愛実はそんな遅い時間までバイトしてないでしょ?」

「そ、そうだけど……」

「良いじゃん! 少し顔出して帰っても良いし!」
 
「本当に私は餌なのね……」

 その後もしつこく誘われ、私は結局行くことになってしまった。

「ありがとう〜じゃあ、明日の18時に集合で!」

「かき氷の約束、忘れないでね」

「わかってるって!」





 次の日、俺はため息を吐きながら、先輩の温泉宿に向かっていた。

「はぁ……」

「ねぇ、まだなの? 私疲れた」

「もう少しですよ……」

 ため息の元凶である先輩は、俺の気持ちなどおかまい無しに不満を俺にぶつけてくる。
 先輩の荷物も持っている俺の方が不満が溜まっているのだが……。

「あ、先輩あれですよ」

 俺は目的の温泉宿を指さす。
 距離にして後一キロほどだろうか?

「えぇ〜、遠いわよぉ〜」

「わがまま言わないで歩いて下さい」

「もぉ……こんな事なら岬君の家でゲームしてた方が良かったわ」

「俺が迷惑ですよ」

 いつも通り先輩のわがままを聞きながら、俺は温泉宿に向かっていた。

「ん? なんか騒がしいな」

「あぁ、なんか今夜近くでお祭りがあるらしいわよ?」

 温泉宿に向かう道すがら、公園の近くで出店の準備や櫓(やぐら)を組んでいる人たちを見かける。
 
「私、祭りってあんまり好きじゃないのよね……」

「え? どうしてですか?」

「ナンパされるから、困っちゃうのよ」

「へーソレハタイヘン」

「なんか馬鹿にしてる?」

「イエイエ、ゼンゼン」

 自慢かよ、なんて思いながら、俺は温泉宿へ再び歩き始める。

「……で、でも……岬君が行きたいって言うなら……一緒にお祭りに行ってあげても…」

「あ、大丈夫です。俺も先輩とお祭りに行くのはちょっと……」

 周りから彼氏だと誤解されて、恨みの視線を向けられるのは嫌だし、男除けにされるのも俺はごめんだ。

「フン!」

「ぎゃぁぁぁぁ!!! 痛いです!! 先輩痛いです!!」

「私だって岬君なんかとお祭りなんかごめんよ!」

「なら最初から言わなきゃ良いのに……」

 何が気に入らなかったのか、先輩は俺の足を踏みつける。
 一体俺が何をしたというんだ……。

「ほら! さっさと行くわよ!」

「はいはい」






 温泉宿に到着した俺と先輩を待っていたのは、サークルの皆だった。

「よう、間宮先輩と次郎が最後か」

「よっ、博男(ひろお)」

 声を掛けてきたのは、同じ大学二年の安岡博男(やすおか ひろお)だった。
 イケメンでしかも彼女持ち、いわゆるリア充だ。
 隣には彼女の村田さんが居る。

「間宮先輩と岬君って仲良いよね」

「博男、お前の彼女目が悪いようだ、眼科に連れてった方が良いぞ?」

「おまえ、人の彼女に対して失礼だな」

「うるせぇ!! 俺と先輩のどこが仲が良いんだよ!」

「いや……多分サークル内の皆がそう思ってるぞ?」

「じゃあ全員目が悪いんだな、俺が良い眼科を紹介してやろう」

「いい加減気がつけよ……」

 博男が肩を落として俺にそう言う。
 俺が博男と村田と話しをしていると、またしても間宮先輩が俺のところにやってくる。

「岬君、早く行くわよ」

「えぇ……部屋の中にくらい自分で持っていて下さいよ……」

「良いから行くわよ! 先輩命令よ!」

「嫌な先輩だ……」

 俺は先輩の荷物を再び持って、温泉宿の中に入っていく。





「むぅ……先輩……返信遅い!」

 私は勉強の息抜きで、ベッドに寝転がりながら先輩にSNSでメッセージを送っていた。
 先輩からの返信がもう一時間も無い。
 私は早く返信が来ないかとソワソワしながら、ベッドの上でゴロゴロする。

「はぁ……祭りかぁ……先輩と行きたかったなぁ……」

 本当はお祭りも先輩と一緒に行きたかった。
 しかし、先輩にはプールに付き合ってもらったし、それに今度一緒に温泉に一泊する約束もしてくれた。

「ウフ……ウフフフフ」

 二人で一泊旅行。
 その事を考えてしまうと、ニヤニヤが止まらない。
 二人で旅行……。
 一緒にご飯食べて、一緒にお風呂入って、一緒に布団で……ウフフフ。
 そんな事を私が考えていると、私のスマホに通知が届いた。

「先輩!」

 私は思わず声に出し、スマホの画面を見る。
 しかし、通知の正体は先輩からの返信では無く、友人からのメッセージだった。

【今日、出来れば浴衣で来てね】

 そのメッセージを見た私は、別にその子が悪い訳では無いのだが、なぜか腹が立ち、返信をしないでスマホを枕に向かって投げつけた。

「もぉ! ややこしい!!」

 先輩からの返信は相変わらず無い。

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