後輩は積極的

Joker0808

第4話



 合コン当日、俺は小山君に選んで貰った服でカラオケに向かっていた。

「緊張するな……」

 知らない女の子と話すとなると、なんだか今から緊張してくる。
 俺は電車に乗り、駅前のカラオケ店に急ぐ。

「よっ! 次郎」

「おう、またせたな」

 カラオケ店の前には、既に友人達が集まっていた。
 今日の合コンは4対4と結構な大人数で行われる。
 みんな気合いの入った服装で、なんだかいつもと雰囲気まで違って見える。

「おまえら、かなり気合い入ってるのな」

「その言葉、お前にそのまま返すよ」

「それよりも今日はすげーよな! なんたって現役のJKだぜ!」

「は? JK?」

「あれ? 次郎聞いてないのか? 今日の合コンは女子高生が二人参加してんだよ」

「はぁ!? 俺、そんな話し聞いてねーぞ!」

「別に良いだろ? 高三だし、そんな年も変わんねーって」

「いや、女子高生って……大丈夫なのか?」

「まぁ、酒は無しって先に言ってあるし、大丈夫じゃね?」

 まさかの真実に俺は驚愕した。
 てっきり、どこぞの女子大生とかが相手だと思っていたのだが、まさか相手の人数の半分が女子高生なんて……。
 そんなことを考えながら、俺はふと愛実ちゃんの顔をを思い浮かべてしまう。
 いや、まさかな……。
 そんな事を思いながら、俺達は来店し部屋に向かう。
 もちろん相手はまだ来ていない。
 
「よし! 作戦会議といこうぜ!」

「は? 作戦会議?」

「あぁ、狙ってる子が被ったら大変だろ? だから、互いに女の子を奪い合わないように打ち合わせるんだよ」

「なるほどな」

「そこで俺は考えた! 自分の席の前に来た女の子を狙うってことでどうだ?」

 カラオケの部屋の中は、対面で座れるようになっており、最初は男性と女性で分かれようという話しになっていた。

「なるほどな、確かにそれなら恨みっこ無しだな!」

「それでいこう!」

「まぁ、俺も別に良いけど……」

 女子高生が目の前に来たらどうしようと考えながら、俺は席に座る。
 ドキドキしながら、女の子が来るのを待っていると、ゆっくりと部屋の扉が開いた。

「すいません、お待たせしました〜」

「今日はよろしくお願いしま〜す」

 そう言って入ってきたのは、同じ年位の女の子が二人。
 俺の友人達は思いっきり鼻の下を伸ばしながら、女の子に向かいの席に座るようにうながす。
 そして、合コンに参加するメンバーが揃い、ついに合コンが始まった。
 俺の目の前に居る女の子は……。

「………」

「………」

「……せんぱ……」

「人違いです……」

 なんと言うことであろう、俺の席の前には、あろう事か私服姿の愛実ちゃんが座っていた。
 いや、いや!
 なんで愛実ちゃんが居るんだよ!
 偶然にしても出来すぎてるだろ!!
 俺はそんな事を思いながら、顔を反らす。

「いや、絶対に先輩ですよね?」

「な、何を言ってるのか……ぼ、僕は君の事なんてし、知らないよ……」

 バレたら絶対にからかわれる!
 俺はそう思って、必死にごまかそうとする。
 しかし、彼女からは既にバレていた様子で、ニヤニヤしながらこちらをみていた。
 あぁ、俺の始めての合コンは終わったんだと、俺はこの時察した。





 私は、目の前に座っている人の顔を見て驚いた。
 なんと、合コンの相手がまさか先輩だなんて思いもしなかったからだ。
 どうせ、合コンなんて面白くないだろうと思い、いやいやついて来た私とって、この偶然はすごく嬉しかった。
 私は、必死に顔を隠す先輩を見て、ついついからかいたくなってしまった。

「うふふ……お名前はなんて言うんですか〜?」

「えっと……た、太郎です」

「いや、お前は次郎だろ」

 そうツッコんでいたのは、先輩の隣の男の人だった。
 どうやら先輩のお友達のようで、先輩の肩を抱いて、ニヤニヤしながら私に話しを掛けてくる。

「ごめんねぇ〜、こいつ合コンなんて始めてだから、緊張してるみたいでさぁ〜」

「大丈夫ですよ〜、全然気にしませんし〜」

 先輩は気まずそうな顔で、私をちらちら見ていた。
 可愛い。
 私は思わずそう思ってしまった。
 きっと私にからかわれるのが嫌だったのだろう、だからあんな嘘をついたのだ。
 周りも盛り上がってきており、男性と女性二人ずつで話しが弾み始めていた。
 しかし、先輩だけは借りてきた猫のように大人しかった。

「次郎さんわぁ〜何かバイトとかしてるんですかぁ〜?」

 私はわざとらしく先輩に尋ねる。
 先輩はため息を吐いたあと、視線を反らしながら私に向かって答える。

「え、えっと……ふぁ、ファーストフード店で……」

「へぇ〜! 偶然ですね! 私もなんですよぉ〜」

 そんな事は知っていると言いたげな様子で、先輩は私の事を睨んでくる。
 そんな顔をするなら、私にだって考えがある。

「隣に座っても良いですかぁ?」

「だめです」

 即答かよ……。
 そんな事を私が思っていると、先輩の友達が席を譲ってくれた。

「こいつ恥ずかしがり屋だからさぁ〜、俺の席に座れば良いよ!」

「良いんですか? ありがとうございます!」

 私が笑顔でそういうと、先輩の友達は先輩に親指を立ててどや顔をしていた。
 しかし、先輩はすごく嫌そうな顔をしていた。
 私はそんな先輩の隣に座り、小声で先輩に言う。

「何やってるんですか先輩? 彼女が欲しいんですか?」

「うるせぇ! なんで愛実ちゃんが居るんだよ!」

「私は友達に頼まれたんですぅー。で、先輩はそんなに女の子に飢えてるんですかぁ〜? 今度からスケベ先輩って呼びますね」

「楽しそうだな君は……」

 先輩はため息を吐きながら、私にそんな事を言ってくる。
 これはチャンスだと私は思った。
 バイト以外で先輩と会える数少ないチャンス、これを生かさない手は無い。
 私は更に先輩に近づき、先輩にもたれ掛かる。

「せんぱ〜い、まさか女子高生にまで手を出しちゃうんですかぁ〜?」

「は、離れてくれない? あ、暑いから……」

「あっれぇ〜? もしかして緊張してますぅ〜?」

「す、するわけ無いだろ!」

 これが嘘だと私はすぐ分かった。
 だって、先輩の顔が真っ赤何だもん。
 私はそんな先輩を見て改めて気がつく、私が先輩を好きなんだという事に……

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