担任がやたらくっついてくるんだが……
急展開?
急展開。
まさにそんな言葉が似合う状況。どうしてこうなったのか、理解が追いつかないまま、時間が止まった感覚に支配される。
だが、先生の顔は確かに近づいていた。
先生の甘やかな吐息が鼻にかかり、脳を痺れさせていく。
身動き一つ取れないのに、このままでいたいような、おかしな感覚。
え?あれ?何で……こんな……。
すると、先生の動きがピタリと止まり、頬にほんのりと朱が差し込み、瞳が不安げに揺れている。普段は綺麗なのに、今も綺麗なままなのに、そこだけは可愛らしく思えた。本人には絶対に言えないけど。
「や、やっぱり、いきなり唇というのは……はしたないわね。そう、これは逃げじゃない。逃げじゃないわ」
何やらブツブツ言っているのが聞こえるけど、蕩けた聴覚では、その言葉の輪郭は掴めない。
そして、その瞳が真っ直ぐに見つめてくる。瞳の色が変わった気がした。
「祐一君……」
「先生……」
1センチずつ近づき、鼓動が刻まれていく。
二つの吐息が混ざり合い、甘やかな熱になる。
そして…………触れ合う。
「…………ん」
優しく当たる柔らかな感触。
夏の陽射しより熱い感触。
そんな極上の唇が……………………額に触れていた。
「せ、先生?」
「……ん」
数秒間してから、ゆっくり離れていく感触を、額に留めておきたいと心の片隅で願いながらも、さっきと変わらず身動き一つできないままだった。
「「…………」」
先生も女の子座りになり、どこかぽーっとした表情になっている。
……これで二回目?
この前は頬に……多分だけど。
頭がぼんやりして、自分の身に起こっている出来事に思考が追いつかない。
ただ、もしこんな状態じゃなければ、理性なんてとうの昔に飛んでいたかもしれない。
火照りが冷めるのをこのまま待っていようと、視線を辺りに彷徨わせていると、先生の艶やかな唇が、静かに言葉を結び始めた。
「あの……」
「は、はい」
「もう一回、して欲しい?」
「っ!」
甘い誘惑ともいえる問いかけに、僕は先生を見つめ返すことしかできずにいた。
しかし、考えていることが顔に出ているのか、先生は微笑んで、僕の頭に小さな手を置いた。
僕はごくりと唾を飲み込み、震える唇を動かした。
「…………せ、先生さえよければ」
「…………」
何故か不機嫌そうに唇を結んだ先生から、頬を両頬をぐいっと引っ張られる。
「さっきから忘れてないかしら?」
「え?何を……あっ……」
「…………」
「ゆ、唯さん……」
僕が言い直すと、唯さんはこくりと頷いた。
「その……僕なんかがこういう幸福な目にあっていいのかはわかりませんし分不相応なのはわかっているんですけど、もし唯さんが嫌じゃなければ」
「その長い前置きはいらないけど……じゃあ……」
再び先生の唇が額に触れる。
……あれ?
そういえば、どうしてこんな事になっているんだろう……?
確か、自分に素直にとか何とか……そんなだったっけ?なんかもうよくわからない。
ふと視線を落とすと、タンクトップの胸元から覗く胸の谷間や、剥き出しになった太股が見える。
や、やばい……もう理性が……
「っ!」
「唯さん……」
気がつけば、僕は先生を……唯さんを思いきり抱きしめていた。彼女の肩は驚きに震え、体が強張っているのを感じた。
しかし、それでも離すことができない。
もっとこの香りに包まれていたかった。
唯さんの体は想像よりさらに柔らかく、華奢で、1秒毎に力を加減しながら、壊してしまわぬように、抱きしめ続ける。
「ゆ、祐一君……少し苦しいのだけれど……」
「す、すいません!すいません!」
やはり力を入れすぎていたみたいだ。
我に返った僕は、慌てて離れ、先日のように土下座をする。担任教師に土下座するのに慣れるなんて……なんか不思議な気分だ。母さんが知ったら泣きそう。
「そこまで謝らなくてもいいわ。ちょっと驚いただけど」
先生はまだ頬が少し紅いけど、話し方や雰囲気はいつもの空気を取り戻していた。いや、最初から先生は冷静だったのかもしれない。
「あ、あの……」
「何?」
「いや、本当にすいませんでした。先生の優しさに甘えてしまって……」
「……私も甘えてるのかも」
「え?」
「何でもないわ。今はわからなくていいから。少し話さない?」
「あ、はい……ちなみにどんな……」
「君が今日読んだ本の感想とか……どうかしら?」
それからしばらくの間、今日読んだ本の感想やら、最近見たテレビの話やらをだらだらと話した。唯さんのやわらかな相槌に誘われるように、すらすらと言葉は出てきた。
今だけは、教師と生徒という関係を忘れて……って、なんかこの言い方だといやらしいような……
「……少しいやらしいわね」
「ちょっ……心読まないでくださいよ!」
まさにそんな言葉が似合う状況。どうしてこうなったのか、理解が追いつかないまま、時間が止まった感覚に支配される。
だが、先生の顔は確かに近づいていた。
先生の甘やかな吐息が鼻にかかり、脳を痺れさせていく。
身動き一つ取れないのに、このままでいたいような、おかしな感覚。
え?あれ?何で……こんな……。
すると、先生の動きがピタリと止まり、頬にほんのりと朱が差し込み、瞳が不安げに揺れている。普段は綺麗なのに、今も綺麗なままなのに、そこだけは可愛らしく思えた。本人には絶対に言えないけど。
「や、やっぱり、いきなり唇というのは……はしたないわね。そう、これは逃げじゃない。逃げじゃないわ」
何やらブツブツ言っているのが聞こえるけど、蕩けた聴覚では、その言葉の輪郭は掴めない。
そして、その瞳が真っ直ぐに見つめてくる。瞳の色が変わった気がした。
「祐一君……」
「先生……」
1センチずつ近づき、鼓動が刻まれていく。
二つの吐息が混ざり合い、甘やかな熱になる。
そして…………触れ合う。
「…………ん」
優しく当たる柔らかな感触。
夏の陽射しより熱い感触。
そんな極上の唇が……………………額に触れていた。
「せ、先生?」
「……ん」
数秒間してから、ゆっくり離れていく感触を、額に留めておきたいと心の片隅で願いながらも、さっきと変わらず身動き一つできないままだった。
「「…………」」
先生も女の子座りになり、どこかぽーっとした表情になっている。
……これで二回目?
この前は頬に……多分だけど。
頭がぼんやりして、自分の身に起こっている出来事に思考が追いつかない。
ただ、もしこんな状態じゃなければ、理性なんてとうの昔に飛んでいたかもしれない。
火照りが冷めるのをこのまま待っていようと、視線を辺りに彷徨わせていると、先生の艶やかな唇が、静かに言葉を結び始めた。
「あの……」
「は、はい」
「もう一回、して欲しい?」
「っ!」
甘い誘惑ともいえる問いかけに、僕は先生を見つめ返すことしかできずにいた。
しかし、考えていることが顔に出ているのか、先生は微笑んで、僕の頭に小さな手を置いた。
僕はごくりと唾を飲み込み、震える唇を動かした。
「…………せ、先生さえよければ」
「…………」
何故か不機嫌そうに唇を結んだ先生から、頬を両頬をぐいっと引っ張られる。
「さっきから忘れてないかしら?」
「え?何を……あっ……」
「…………」
「ゆ、唯さん……」
僕が言い直すと、唯さんはこくりと頷いた。
「その……僕なんかがこういう幸福な目にあっていいのかはわかりませんし分不相応なのはわかっているんですけど、もし唯さんが嫌じゃなければ」
「その長い前置きはいらないけど……じゃあ……」
再び先生の唇が額に触れる。
……あれ?
そういえば、どうしてこんな事になっているんだろう……?
確か、自分に素直にとか何とか……そんなだったっけ?なんかもうよくわからない。
ふと視線を落とすと、タンクトップの胸元から覗く胸の谷間や、剥き出しになった太股が見える。
や、やばい……もう理性が……
「っ!」
「唯さん……」
気がつけば、僕は先生を……唯さんを思いきり抱きしめていた。彼女の肩は驚きに震え、体が強張っているのを感じた。
しかし、それでも離すことができない。
もっとこの香りに包まれていたかった。
唯さんの体は想像よりさらに柔らかく、華奢で、1秒毎に力を加減しながら、壊してしまわぬように、抱きしめ続ける。
「ゆ、祐一君……少し苦しいのだけれど……」
「す、すいません!すいません!」
やはり力を入れすぎていたみたいだ。
我に返った僕は、慌てて離れ、先日のように土下座をする。担任教師に土下座するのに慣れるなんて……なんか不思議な気分だ。母さんが知ったら泣きそう。
「そこまで謝らなくてもいいわ。ちょっと驚いただけど」
先生はまだ頬が少し紅いけど、話し方や雰囲気はいつもの空気を取り戻していた。いや、最初から先生は冷静だったのかもしれない。
「あ、あの……」
「何?」
「いや、本当にすいませんでした。先生の優しさに甘えてしまって……」
「……私も甘えてるのかも」
「え?」
「何でもないわ。今はわからなくていいから。少し話さない?」
「あ、はい……ちなみにどんな……」
「君が今日読んだ本の感想とか……どうかしら?」
それからしばらくの間、今日読んだ本の感想やら、最近見たテレビの話やらをだらだらと話した。唯さんのやわらかな相槌に誘われるように、すらすらと言葉は出てきた。
今だけは、教師と生徒という関係を忘れて……って、なんかこの言い方だといやらしいような……
「……少しいやらしいわね」
「ちょっ……心読まないでくださいよ!」
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