戦国生産無双伝!

なんじゃもんじゃ

65話

 




 ロイド歴三八九〇年七月中旬


 オガサワラ家への援軍は騎馬鉄砲隊三五〇〇と重装歩兵隊二〇〇〇、長槍隊二〇〇〇、軽装弓隊二〇〇〇、爆破大弩隊五〇〇、この他に輜重しちょう隊が編制され騎馬鉄砲隊が第一陣として出陣している。
 第一陣として先発している騎馬鉄砲隊は何と言っても騎馬なので足が速い。
 アワウミの湖桟山城からミズホの国、ミズホの国からヒメの国、そしてシナノの国に入る。
 オガサワラの本拠地はシナノの国の北部なのでヒメの国からシナノの国に入る道案内をヒメ国守のモリバヤシに命じる。


 ブデン軍はオガサワラ家の支配領域の城砦群を幾つか落し進軍しているが、オガサワラ家も然るものでブデン家の先遣隊一万五千を僅か四千で迎え撃っていた。
 四倍近い軍を相手によく頑張っているが、戦力差は如何ともし難く城砦を徐々に落とされながら後退を余儀なくされていた。


 鳥型偵察ゴーレムバードスカウトからリアルタイムで映像が送られてくるので手に取る様に戦況が分かる。
 鳥型偵察ゴーレムバードスカウトを創っておいて良かった。


 今回出征した騎馬鉄砲隊には輜重隊が同行できない。
 ここで活躍するのが俺のスキルで創り出した栄養丸えいようがんだ。
 この栄養丸は小指の先ほどの大きさの白色の粒だが、これを食すれば人間が一日に必要な栄養を補給でき、胃の中で何倍にも膨れ上がるので満腹感もあるサプリ的な物だ。
 そして人間の食料だけでは騎馬鉄砲隊は保てず、馬も飼い葉を与えなければならないので馬用栄養丸も持たせる。
 馬用栄養丸は親指の先程度の緑色の粒で、これ一つで馬一頭の一日に必要な栄養と満腹感を与える物だ。
 それぞれ二〇個と、消耗品である銃弾(薬莢タイプ)を一〇〇発を持たせて送り出している。
 騎馬鉄砲隊は西部劇みたいに銃弾を挿したベルトをクロス掛けにしている。
 因みにカモン領内では宿泊する地で食料と飼い葉を用意させているので栄養丸は敵地に入ってから消費となる。












 ロイド歴三八九〇年七月下旬


 七月も終わりを迎えようとする頃、カモンの騎馬鉄砲隊が攻城中のブデン軍の分隊凡そ一万の後方に現れこれに一斉掃射を行った。
 ブデン家は不意の攻撃で大混乱となったものの、流石はと言うべきか瓦解寸前で立て直しを図り大きな被害を出しながらも後退を行った。


「どこにでも良将というのは居るものだな……」


 騎馬鉄砲隊を預かるは新婚のフジタロウ・トミオカ。
 ソウコとの新婚生活の邪魔をしたくはなかったが、現在のカモン家において機動力と攻撃力を兼ね備えた騎馬鉄砲隊を預けているので今回のオガサワラの援軍にどうしても出てもらわなければならなかった。
 俺からフジタロウへの指示は簡単で騎馬鉄砲隊の長所を生かす為に決して城砦に籠らず奇襲攻撃に徹しろというものだ。
 休息をするのは最前線より離れた後方の城砦で行い、神出鬼没の奇襲に終始させればブデン軍も簡単には対処できないだろう。
 重装歩兵隊、長槍隊、軽装弓兵隊、そして輜重隊が現地に赴く時間を稼ぐのだ。


 さて、俺が興味を持っている戦いはこのシナノの国のオガサワラ対ブデンだけではない。
 シナノの国から太平洋側に行くとミヤマの国があり、このミヤマの国では今現在ノブナガがキュウガワ家との戦いで総力戦を繰り広げていた。


 三月にキュウガワ家の領地であったミヤマの国に乱入したノブナガはミヤマの国の西部半国の城砦を落とすのに四ヶ月をかけてしまった。
 本来であれば電光石火の如くミヤマの国を平らげる予定だったと思うが、キュウガワ側の城砦は固く門を閉じ籠城に徹したことで思いのほか時間が掛かっているのだ。
 そしてここにキュウガワ家の援軍がやってきた。
 オダ軍二万に対し、キュウガワ軍三万。形勢は逆転したとも見えるがこれはある意味ノブナガにとって状況を打開する機になるだろうと俺は思っている。


 ノブナガの軍は鉄砲で武装をしているが、攻城戦は鉄砲があっても難しい。
 俺の様に爆破大弩を運用できれば攻城戦も有利に戦えるだろうが、ノブナガには爆破大弩はない。
 しかし鉄砲を有効に活用できる野戦になれば話は変わる。
 援軍が到着し数でノブナガ軍を上回ったキュウガワ軍が態々籠城する必要はないと野戦を選択すればノブナガはやっと鉄砲の威力を発揮できるのだ。
 しかし戦にとって数は戦況を有利にする最大要因であると俺だけではなく誰でも思っているだろうから、鉄砲を運用しているからと言って予断を許すことはない。














 ロイド歴三八九〇年八月上旬


 やっと蒸気機関車が完成した。
 燃料である石炭を運搬するのも面倒なので火の魔石を組み込んだ構造にしたことで構造も簡単になった。
 今後は線路を敷く工事に移る。
 嘉東城から嘉東港、そしてアワウミ北部の高島城を結ぶ線路。
 他に新しく築いているカモン家の居城となる城から京の都にも線路を敷こうと思っている。
 将来的にはアワウミの湖畔を走る環状鉄道にするのも良いだろう。


「なるほど……このレールを敷設するのですな?」
「そうだ、そしてそのレールの上を走る蒸気機関車によって物流速度を上げる」


 キザエモンに鉄道計画を説明する。
 キザエモンの横には弟のアツノリもおり、目をキラキラさせて鉄道計画について一言一句も漏らさないように聞き耳を立てている。
 アツノリはカモン家の居城築城と今回の鉄道計画に関わることになる。
 築城はコウザン、鉄道計画はキザエモンの下で働くことにさせた。色々なことを経験させアツノリの能力を伸ばせればと思ってのことだ。


「次の大評定にかけて正式に着手することになるが、レールは嘉東城から嘉東港、そこから高島城を先ずは繋ぐ。その後に京の都と築城中の我が居城を繋ぐ」
「承知いたしました。直ちに各部に根回しをしておきまする」
「頼むぞ、キザエモン。アツノリの働きにも期待しているぞ」
「はい、兄上。いえ、閣下のご期待にお応えできますよう努力致します!」
「気心の知れた者のみの時は兄と呼ぶが良い」
「はい!」


 今は俺の執務室でキザエモンとアツノリ、そして側用人のリクマしか居ない。
 アツノリは俺の弟だしキザエモンとリクマは俺が幼少のころから小姓として仕えた古株なので俺の気性をよく知っているのだ。


 数日後、大評定を開く。
 俺が鉄騎府大将軍となったので今までは家老衆や奉行衆などと言っていた役職を改めた。
 家老は老中と名を改め、奉行はそのまま奉行だが老中の下に奉行がいる部署制にしている。


 ■老中
 キザエモン・ロクサキ(経済所老中、筆頭老中)
 シゲアキ・マツナカ(戦略所老中)
 ダンベエ・イズミ(戦闘所老中)
 ダイトウ・タナカ(情報所老中)
 ジゴロウ・ガンモ(内政所老中)
 ブゲン・アズマ(目付所老中、一族衆筆頭)
 ゴウキ・クサカ(兵糧所老中)




 今後も役所は増えるだろうが、今はこの七人が老中となっている。
 後はこの七人の下に奉行職があり老中を補佐するというものだ。
 そして今回の大評定では老中と奉行、そして側用人合わせて二三人が俺の前で頭を垂れている。


「面を上げよ」


 俺が声を掛けると全員が頭を上げる。
 今回は幕府を開いて最初の大評定になるので役職者が勢ぞろいだ。


「ナガレ、始めよ」
「はっ!」


 側用人のナガレが進行役をする。最初の議題はオガサワラ家を攻めたブデン家の仕置きだ。
 ソウコの婿であるフジタロウ・トミオカ率いるオガサワラ家への援軍がブデン家を押し返したと先日報告が来た。
 ブデン家との戦いで騎馬鉄砲隊はその機動力と攻撃力を遺憾なく発揮しブデン軍の兵を屠る。
 重装歩兵はその重厚な防御力を持ってブデン軍の進軍を阻む。
 そして長槍隊や軽装弓隊の攻撃によってブデン家の城砦を侵略する。
 更に敗走したブデン軍が立て篭もる城を爆破大弩隊が容赦なく攻撃したことで精強で名を馳せたブデン軍の将兵が数多く降伏してきたのだ。
 これでブデン家攻略の足がかりができた。
 今回奪取した城砦の補強や拡張の為に動かす人員や物資についてが今回の議題に上がる。
 このまま年を越して今回奪取した城砦を足がかりにブデン家に対する攻勢に出る。


「次は……」


 大評定は荒れることもなく進み蒸気機関車の件も問題なく裁可する。
 元々事前に根回しや調整がされていたので荒れるようなことはない。
 俺が最終判断を行うので、仮に荒れたとしても採決は下りるのだけどね。








 ロイド歴三八九一年三月上旬


 線路普請が順調で嘉東城から高島城までは普請が終わっている。今は築城中の城と京の都を繋ぐ線路を普請しているが、これも完成間近だ。
 今日は嘉東城駅で鉄道の開通式が行われている。
 三月なのでまだ寒いが機関車を一目見ようとする民が集まりイモ洗い状態だ。
 そして全国の大中小名に声を掛けた。勿論、反カモン勢力にも声を掛けたが式に出席したり代理人を遣わした者は多くない。
 まぁ、これは最初から予想していたので構わないし、今年は全国を統一を開始する年になる。


 蒸気機関車のお披露目は盛り上がった。
 あの漆黒のボディー、そして煙を巻き上げて走るその威容を見た観衆は盛大に驚き、そして俺の資金力、生産力を世に知らしめた。


「将軍様、おめでとう御座います!」
『おめでとう御座います!』


 集まった商人が俺へ祝いの言葉を述べる。
 将軍様と呼ばれるのは好きではないが、平民階級の商人から閣下と呼ばれるのも違う気がするので、これで良いと思う。
 俺は集まった商人たちを眺め小さく頷く。
 鉄騎府大将軍となった俺に対し商人が直接言葉を述べるなんてこんな機会がなければできない。以前とは立場が違うのだから仕方がないが、窮屈で仕方がない。








 ロイド歴三八九一年四月上旬


 俺は軍を動かした。


 東国方面、ブデン家を攻めるのはブゲン大叔父。
 兵力は六万。重歩兵二万、軽歩兵二万、軽装弓一万、騎馬鉄砲五千、騎馬弓五千、爆破大弩一千、他に輜重隊が組織されている。
 東へは旧アズマ家の家臣団がメインとなり進軍するが、参謀としてトシマサをつけている。


 中国方面へはシュテンが率いる兵七万。
 重歩兵二万、軽歩兵二万、軽装弓一万、鉄砲一万、騎馬鉄砲五千、騎馬弓五千、爆破大弩一千、他に輜重隊が組織されている。
 この中国方面軍にはダンベエ、エイベエ兄弟と参謀としてコウベエをつける。


 そして四国方面には太平洋艦隊を送り、ウスジの国(淡路島)を攻めここを拠点として瀬戸内海を抑える。
 更にキエの国の港を拠点に太平洋側の四国も抑える。
 当初の予定では四国を先に抑えるつもりだったが、家臣たちが中国攻めを優先するべきと上申してきたので俺はそれを了承し、中国攻めが終わるまで四国から一兵も出さないつもりで臨んでいる。


 それから同盟国のオダ家だが、キュウガワ家を追い詰めている。
 ミヤマの国の野戦で三万のキュウガワ家を撃ち破ったオダ家はミヤマの国(三河)で残党を掃討し、年明け早々にトオウミの国(静岡県)を攻めている。


 四月に俺が軍を動かすと知っているからオダ家も必死でミヤマの国を攻めた結果だ。
 オダ家が必死にミヤマの国やトオウミの国を攻めているのには理由がある。
 それはカモン家がブデン家を滅ぼしイマメの国(静岡県の伊豆)を手に入れてしまったらそれ以上軍を東に進めることができなくなるからだ。
 そうなってはノブナガの野望はほぼ絶望的になる。
 焦っているノブナガの顔が目に浮かぶようだ、がっははは!


 そして俺がワ国を統一する!
 そして家督をシュテンにでも譲って大陸へ渡るんだ!


 

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