戦国生産無双伝!

なんじゃもんじゃ

52話●

 


 ロイド歴三八八八年一二月下旬


 無事にヤマミヤの国、京の都のカモン屋敷に到着したのは一二月も残り僅かとなった二五日だ。前世ではクリスマスなんだが、流石にこのワ国にはクリスマスの風習はない。
 カモンの義父殿とホウオウの義父殿、そして俺は昇殿し王に此度の戦について、そして俺が実質的にイゼ、スマ、キエの三ヶ国を領有したことを報告した。
 また、ホウオウの義父殿にレイセンの境港を移譲する旨も報告し、ホウオウの義父殿をレイセンの国守に任じて頂くよう要請をした。


 まだ落ち着いてはいないがあまり放置し過ぎるのも良くないのでオダ家のサクマと婚姻同盟について交渉をする。
 と言っても交渉するのはサクマの方で俺が下手に出ることはない。


 これまでにシゲアキやコウベエとノブナガの思惑を考察した結果、ノブナガは東に勢力を伸ばすつもりだと言うのが俺たちの結論だ。
 ノブナガがカモンとアズマと同盟を結べば少なくとも西側が安定する。つまり後ろを気にすることなく東に向かって行けるわけだ。そう考えれば今回の縁組の話はノブナガにとって非常に良い判断だと思う。
 しかしだ、ノブナガが西、つまり京の都を望まないなど……どう考えても解せぬ。
 前世のノブナガはかなりの野心家だったし、カザマ衆が調べたノブナガも野心家なのだ、東にも魅力はあるがこのワ国の中心である京の都を放棄するだろうか?
 そして俺たちはノブナガが東を平らげ力を付けてからカモンとアズマに喰らい付く、と考えている。
 しかしノブナガが治めるビハリの国の東だって強敵揃いなので簡単に力を付けることはできない。前世の知識にある今川や武田、それに北条や他にも多くの家があるのだ、幾ら国力のあるビハリと言えど一国しか治めていないノブナガがどこまでできるかは疑問符が付く。


 俺としてはノブナガが東に勢力を伸ばした後、広大な領地を得た暁には俺に噛み付いてくると考えて対策を立てておく必要があると思い、カザマ衆にはノブナガの去就調査を重要案件として指示した。


「カモンと縁を結ぶとなれば、アズマと和睦し縁を結ぶと言うことだ。オダ殿はそう考えていると?」
「は、左様に御座います」
「それはカモンにとってどの様な理があるのだ?」


 俺はサクマを直視して直球で聞いてみた。
 だって、今回の婚姻同盟はオダ家にとって理はあるが、カモンにとっては大きな理はない。オダ家と婚姻同盟すれば東が安定するのは分かるが、今までだってビハリの件はアズマ家が対応していたのだ、今更だと思う。


「ありまする。オダと縁を結べばカモン家は東を安定させることができまする」
「……それだけか?」
「……それだけではご不満でしょうか?」


 ほう、肝が据わっているな。普通はそれだけと聞かれればある程度動揺しそうなものだが、サクマに動揺はない。少なくとも表面上は動揺しているようには見えない。


「東はアズマ家が抑えている。オダ家がどうしようとアズマ家が抑えるのにオダ家との縁を結ぶ必要があると?」
「ありまする」


 サクマは俺を真っすぐ見、そして淀みなく答える。


「……ふ、良いだろう。ソナタの主にカモンはこの縁談を受けるつもりだと伝えるが良い」
「は、有り難き「但しアズマ家への根回しがある。直ぐには明確な回答はできぬ」……十分に御座います」
「それとな、俺はツツミ家より嫁を娶ることが決定している。よって、オダ家よりの嫁取りは俺の弟になる」
「それは……いえ、ご舎弟様との縁談で宜しゅう御座います」


 サクマは俺の弟とノブナガの妹との縁談を了承するしかない。俺はノブナガの妹を嫁にする気などないのだから。
 そして弟と言ってもそれがカモンを名乗ったシュテンやアズマの次期当主と考えられているフジカネだとは限らない。何せキシンには多くの子がいるのだから。
 そう言えば、嫁入り予定の妹の名を聞いていなかったな。


「で、弟の嫁となる姫の年齢と名を聞かせてくれ」
「今年で一二歳となります、イチ姫様と申します」


 イチ……お市……だよな……まさか傾国の美女とはな……どうしよう、今更断ったら怒るかな?


 さて、サクマも帰ったしもう一つやることがある。
 内々に俺とカナ姫の祝言を執り行った。元々正妻にはホウオウ家からアズ姫が嫁いでいるしアズ姫の時はミズホの国でアズマ家の者だけで盛大とは言えない祝言をしているのでカナ姫にも我慢をしてもらう。
 そして俺はカナ姫に伝えることがあった。


「ソナタを妻に迎えたが俺には既にアズ姫と言う正妻がいる。故にアズ姫にもう一人男子ができるまではソナタとの間に子をなすつもりはない。すまぬが堪えて欲しい」
「……アズ姫様に男子がもう一人お生まれになれば私は子を産んでも宜しいのですね?」
「ああ、問題ない」
「では、すぐにアズ姫様と子をなして下さいませ。私はお待ちしております」


 そう言うなり頭を下げるカナ姫。
 こんなにすんなりと受け入れてくれるとは思っていなかったので拍子抜けしてしまったが、カナ姫が了承してくれたので少しホッとした。
 もちろんカナ姫には悪いと思っている。












 ロイド歴三八八九年正月


 昨年末に続き昇殿をし王に謁見する。
 今年は王が退位をする予定なので現王への新年の挨拶は今回が最後となるだろう。


「お上よりのお言葉でおじゃる。ソウシン・カモンは心して聞くでおじゃる」
「はっ」


 お上と言うのは王のことだ。宮廷貴族の多くは王のことをお上と言うらしい。
 平伏している俺に偉そうに上から物を言うのは右大臣のヨシオミ・ツキノコウジだ。現在の太政官のトップに立つ貴族だ。
 右大臣が太政官のトップなのは左大臣だったホウライ・ウラツジがイシキ騒動によって官位官職を剥奪され蟄居中であり空席になっているからだ。
 そして俺の叔母に当たる方が嫁いでいるサダオキ・コウブが太政大臣だが、太政大臣に実権はないのが通例なので本来は太政官のトップである筈の太政大臣が名誉職になっているのだ。


「ソウシン・カモンを正三位権大納言とし、イゼ、スマ、キエの国守に任ずる。また、レイセンの国守は解任とする」
「は、有り難き幸せに御座いまする」


 新年の挨拶に昇殿したのだが、俺の昇進が言い渡されてしまった。
 左近衛大将や兵部卿は留任で俺は権官ではあるが大納言となった。
 そして俺の陞爵に絡みカモンの義父は従二位准大臣となっているし、ホウオウの義父殿はレイセンの国守に任じられた。


 当然のことだが今回の人事は中央の貴族にとって大きな話題となった。
 今年、王が退位するのはほぼ決定しているが、何と言っても後継者が決まっていないのだ。
 一之宮を推すヒノコウジ家を中心とした勢力、二之宮を推すアサクマ家を中心とした勢力、五之宮を推すカモン家とホウオウ家を中心とする勢力がある中でカモン家が陞爵し三ヶ国の国守に任じられたのだ。
 そしてホウオウの義父殿もレイセンの国守となり境港を手に入れ経済力を得た。
 つまり、これまで去就を決めかねていた貴族たちの多くが五之宮派に駆けこんで来たのだ。
 それだけではない、アサクマ家と同盟を結んでいたニシバタケ家が滅びカモン家の治めるキョウサとアワウミへ兵を出したアサクマ家に対しカモン家が出兵するとも噂されているのだ。
 アサクマ家が滅べば二之宮を推していた貴族はかなり不味い状況になるのは簡単に分かることなので二之宮派の貴族がかなり揺れているのだ。
 そして揺れているのは二之宮派だけではない。
 一之宮を推す貴族も広大な領地を持つカモン家とホウオウ家に趨勢が傾いていると実感している。そうなれば一之宮派の貴族が揺れるのは自明の理だ。


<a href="//23916.mitemin.net/i285567/" target="_blank"><img src="//23916.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i285567/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>










 ロイド歴三八八九年一月上旬


 王との謁見を終えたおれは直ぐにアワウミの国の湖桟山城に入った。
 キョウサからアズ姫とタケワカ、そしてソウコを湖桟山城に呼び寄せた。
 この湖桟山城の改修ももう直ぐ終わるが、この城を居城にするのは気が乗らない。
 だから京の都に近く、このアワウミの湖岸に近い所に新しい城を建てようと思う。
 安土城のあった場所は縁起が悪いので他に……元坂にでも建てるか、炎暦寺への嫌がらせになるな。嫌がらせしたら出てってくれるかな?無理だろうな……元坂は止めておこう。
 この話は後からしっかりと考えよう。


 取り敢えずアズ姫とカナ姫の顔合わせを済ませることにする。
 今回のカナ姫の輿入れはアズ姫も了承しているのだが、それでもカナ姫のことを俺自身がアズ姫に紹介するのが筋だろう。
 この世界ではそんなことをする貴族の当主は居ないようだが、これは俺のケジメだと思っている。


 さて、今年もやってきました大宴会です!新年の大宴会です!


 

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