戦国生産無双伝!

なんじゃもんじゃ

49話

 


 ロイド歴三八八八年一一月中旬


 ニシバタケの本拠地であるイゼの国(北部はカモン家の領地)に侵攻した俺は城砦を一つ一つ包囲しては潰していった。ニシバタケは野戦をせずに籠城を決め込んだのか味方の城砦が包囲されても援軍を出すようなことはなかった。
 今のカモン家にとって攻城戦は得意分野なのであまり死傷者を出さずに進めている。


 ここで気を付けるのは気の緩んだ所への奇襲や夜襲の類だ。
 しかしこれらの対策もしっかりと打っており、忍たちに周辺の警戒を行わせると共に騎兵の斥候も出しているのでまず大丈夫だろう。が、気は緩めない。


「次は霧河きりが城か?」
「左様で御座います。ニシバタケの居城であり強固な構えの堅城で御座います」
「ダイワの国の方はどうなっているのか?」
「苦戦しております。ニシバタケも大量の鉄砲を投入し、更に念後呂寺とサイガ衆の支援を受けている模様です」


 念後呂寺と言うのはキエの国に根付いた宗教でアワウミの国の炎暦寺同様に僧兵を大量に有している。しかもサイガ衆と言うのは鉄砲戦闘に特化した念後呂寺の下部組織だ。
 てか、サイガって雑賀のことだよな? そうなれば雑賀孫一なんて言う人物も出て来るのかな……できれば配下に加えたいのだけどな。


 俺が考え込んでいるとシゲアキとコウベエ、そして俺の傍に控えているシュテンが俺をジーっと見つめていた。
 男に見つめられても嬉しくないぞ。


「援軍は必要か?」
「いえ、オオツキ殿に任せておけば負けない戦いをするでしょう」


 負けない戦い……か。つまりこちらの戦いを終わらせそのままキエの国に進軍すると言うことか。
 それも構わんが、戦はサッサと終わらせて年末年始をアワウミで過ごしたい。


「いや、六陽城の戦力をダイワの援軍として差し向けよ」


 六陽城はヤマミヤの国とアワウミの国の国境沿いにあってハッカク家滅亡の城でもある。その六陽城にはダイワ方面の予備兵力として一万の兵が詰めている。そしてその予備兵の中には爆破大弩の扱いに長けた部隊も配置してあるので不利な戦況を打破するには良いだろうと思う。


「予備兵の投入には些か早いと存じますが」
「必要であれば傭兵を集め更なる援軍を差し向けよ。戦場で年越しなどカモン家の名が廃る!」
「「っ!?」」


 俺が強い口調で年越しはダメだと言ったことで察してくれたのか、シゲアキとコウベエは平伏する。
 既に二人の頭の中では早急に戦を終わらせる算段を考えて居るのだろう。


「なれば、六陽城の兵を投入し太平洋艦隊に兵五千を乗せキエの国の後方に上陸させましょう。さすれば敵を挟み撃ちにできましょう」


 頭を上げたコウベエがすかさず提案をしてきた。良いことだ。


「ほう、シゲアキ、どう思うか?」
「は、コウベエ殿の案に賛成で御座います。付け加えるのであれば兵を上陸させた太平洋艦隊にはそのままキエの国の港を威嚇させ海上からの補給を断ちましょう」
「うむ、ではその様に手配を」
「「はっ!」」


 太平洋艦隊はこの戦に二艦隊を投入しているので第二艦隊をキエに、第一艦隊は今のままイゼの港を威嚇し補給路を断つ。
 シゲアキとコウベエの二人が辞すると、俺とシュテン(元服したドウジマル)の二人になった。
 評議中シュテンは一言も喋らなかったが、俺たちの話を聞き少しでも勉強してくれれば嬉しい。
 何より戦は猪突猛進ではなく頭を使ってするものだと言うことを分かって欲しい。
 シュテンの職業は【守護者】なので力によって多少のことは解決できるだけの力はあるだろうが、それだけでは戦国の世を生き抜くのは難しいと思うからシュテンには文武両道の武将となって欲しいのだ。


「シュテン、戦には何が必要だと思うか?」


 突然俺が質問をしたので少し躊躇い、それでも必死に考えを纏めようとするシュテン。


「はい、先ずは兵で御座います。兵が多ければ多いほど戦は有利となります」
「うむ、他には?」
「次に兵を指揮する将で御座います。例え一〇万の兵があっても兵を指揮する将が居なければ烏合の衆となります」
「他には?」
「他には……」


 良い回答ではあるが、それだけでは足りないぞ。


「武器でしょうか?」
「それもあるが、分からぬか?」
「……申し訳御座いません、浅学の身なれば」


 まぁ、最初はそんなものだな。


「今回の従軍中にその答えを見つけてみよ」
「はい、努力します!」


 元服して何だか大人びた口調になったシュテン。兄としてはシュテンを一廉の武将に育つように導いてやりたいが俺にそんなことができるかは分からない。
 だから戦に対する心構えや準備と言うものを俺の持論を踏まえてシュテンに教えてやろう。少なくともこれで今まで何とかなっているのだ、そこまで悪い考えではないだろう。
 などと偉そうに言っているが、俺の持論など単純で戦にいくなら相手より多い兵力で優れた武器を装備させるのだ。そしてそれらの言わば物量を支える生産力とそして敵の情報をしっかり得て自分の戦力と比較するのだ。
 最低限これだけすれば苦戦はしても惨敗することはないだろうと思っている。あ、忘れるところだった、これ絶対必要だけど何時でも何処でも逃げるルートを考えることだね。これ重要だよ!












 ロイド歴三八八八年一一月中旬


 霧河きりが城を包囲した。
 ニシバタケの本拠地であり居城なので守りは固い。とは言ってもそれは一般的な攻め方をすればであり、俺の用意した武器であれば攻め込むのはそれほど難しくない。
 数日後には完全包囲も完了し一斉に攻撃を開始する。


「殿! オダ家より使者が参っております!」
「ん?……こんなところにか?」


 ここは最前線だぞ、下手をすればこの陣にニシバタケの兵が雪崩れ込んでくるかも知れないのだぞ? ニシバタケに頼まれて調停の使者としてきたのか? だが、オダとカモンはアズマを挟んで対立していると言っても過言じゃないんだ、調停を頼むのならもっと他にいるだろう、王家とかな。
 そしてそんな危険な場所に使者が来る……ノブナガってやっぱブラックだわ!


「オダ家家臣、ハンスケ・サクマと申します。左近衛大将様のご尊顔を拝し恐悦至極に存じ奉ります」


 サクマ……佐久間か、ハンスケと言う名前には聞き覚えがないが前世の織田家の家臣なら佐久間も居ると言うわけか。
 もし目の前に居るハンスケが俺の知っている佐久間信盛と同一人物であれば将来はノブナガに追放されるのだろうか……ちょっと可哀そうになってしまう。


「ソウシンだ。この様なところまでどの様な用向きで参られたか?」
「主よりの書状を持参しております」


 リクマ・ナガレがノブナガの書状をハンスケより受け取り俺の元に持ってくる。それを受け取り中身に目を通す。
 内容は……ノブナガの妹を俺に輿入れさせ、アズマ家の姫をノブナガに輿入れさせないかと言う物だ。つまり婚姻同盟だ。
 正直驚いた。ノブナガが治めるビハリの国はこれまで何度もミズホの国に侵攻しておりハッキリ言って両国の仲は最悪だ。いくら今までビハリの国を治めていたのがサトウ家だと言ってもサトウ家の家臣だったオダ家もミズホの国に何度も攻め込んでいるのだ。
 そのオダ家の当主となり主家をシナノの国に追放したとしても、サトウ家が主に戦っていたのが滅んだマジマ家だったとしてもビハリの国とミズホの国には深い傷跡があるのは確かだ。


「サクマと申したか、その方はこの書状の内容を?」
「存じ上げております」


 俺は脇に座るシゲアキに書状を渡すとシゲアキも書状に目を通す。
 シゲアキは書状を一読するとそれをコウベエに渡し口を開く。


「殿、今は戦時中であり、すぐに回答できる案件ではありません故、使者殿には一旦帰国して頂きましょう。後日改めて使者をお立てになりお返事をされるが宜しいかと存じます」
「うむ、そうだな。ニシバタケとの戦に目途がつき次第返答をする故、今は帰国せよ」
それがしも子供の使いでは御座りません。お邪魔にはなりませぬ故、左近衛大将様に従軍させて頂きとうございます」


 さて本気で返事を貰うまで従軍したいのか、それとも俺の戦い方を間近で見たいのか……まぁ良い、見られて困るものはなくもないか……。
 俺はチラッとシゲアキに視線を向けると、シゲアキは僅かに顎を下げる。


「良いだろう。だが、自由にはできんぞ」
「有り難き幸せ!」


 俺に頭を下げて感謝の意を伝えてくる。


 

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