戦国生産無双伝!

なんじゃもんじゃ

43話

 


 ロイド歴三八八八年七月上旬


 突然、京の都のカモンの義父殿がお見えになった。何ごとかと直ぐに執務室にお通しする。


「義父殿、火急の用とは?」
「うむ、面倒な話が持ち上がったでおじゃる」
「面倒?」


 何時も冗談のような麿眉毛の義父殿が真面目に話す。


「王が退位をされると申されるのだ」
「……退位」


 下座に控えていたキザエモンやシゲアキ・マツナカ、コウベエ・イブサが息を飲んだのが分かった。
 確かに面倒な話だ。今の王が即位されて二二年だったか、その間にイシキ騒動によって京を追われたりしているが、今では王権も復活しカモン家やホウオウ家などの十仕家の内の六家が領地を有するほどに王の周りの状況は好転している。
 その今、王が退位をする。下手をすればまた戦が始まることになるだろう。


「王には確か四人の王子が居りましたな?」
「うむ、本来は五人でおじゃるが、一人は先のイシキ騒動の時にイシキに組した為に蟄居を申し付けられているのでおじゃる」
「どの王子に譲位されるのですか?」
「決まっておらぬのでおじゃる」
「……どの王子に譲位されるのか決めておられぬのに退位をされると?」
「それ故、各王子に何やらさせようとしておいででは無いかと邪推する者も居るのでおじゃる」
「何やら?」


 カモンの義父殿が言うには四人の王子の中から次の王を選ぶ為に何かを競わせるそうなのだが、その競わせるモノが分かっていないのだ。
 一体何を競わせるのか、そして俺たちにどう関係してくるのか。


「義父殿は四人の王子のことをどう考えておるのでしょうか?」


 四人の王子の内、長子である一之宮は母が十仕家のヒノコウジ家の出で、人柄は温和だが指導力や決断力に欠ける一面があるそうだ。
 二之宮の母は北陸の大貴族であるアサクマ家の縁者であり本人は武芸を好む傾向があるのだが、性格がかなり粗暴だと聞いたことがある。
 三之宮と五之宮はあまり情報が無いので良く分からないし、四之宮は蟄居中。
 順当に行けば母親の血筋も良く長子である一之宮が王位を継ぐことになるが二之宮が野心を持っているのは俺でも知っていることだ。


「五之宮はまだ七歳と幼く後ろ盾も弱いことから難しいでおじゃる。三之宮も一二歳ではあるが後ろ盾が弱いでおじゃるな」
「そうなると一之宮か二之宮と言う至極明瞭な王位争いとなるわけか」
「今のところは、でおじゃる」
「と、申されるのは義父殿は三之宮か五之宮が名乗りを挙げるとお思いで?」


 王家の王位継承争いが始まればせっかく収まった戦乱が再び再燃することも考えられる以上、できれば王には後継をしっかりと指名し譲位して頂きたいものだ。


「一之宮ならばヒノコウジが、二之宮であればアサクマが王の威光を笠に専横を極める可能性があるでおじゃる」


 確かにヒノコウジ家の当主であるキミオキ・ヒノコウジは野心家だ。今はセツの国の国守でありニバの国の一部も領有しているので都合四六万石ほどを領有している十仕家ではカモン家に次ぐ勢力となっている。
 カモン家がアワウミの国八一万石、キョウサの国一〇万石、ミズホの国の一部一三万石、北イゼの国一七万石、の都合一二一万石だ。この他に境の町も領有しているが境の石高は大したことはない。
 そしてアサクマは北陸の三ヶ国で一一八万石を領有しているのでワ国の中でもアサクマとカモンは最大勢力となっている。


「つまり義父殿はヒノコウジとアサクマに対抗し、三つ巴に持ち込もうと?」
「ほほほ、ソウシンはどう考えるのでおじゃるか?」


 態々火に油を注ぐようなことはしたくない、と言うのが本音だ。だれが政権を取ろうが俺の邪魔をしなければ何も言う気はないし、あまり無茶なことを言ってこなければ従うこともやぶさかではない。
 だが、カモンの義父殿はそう思っていないようだ。


「さて……」
「ほほほ、いきなりのこと故、聡明なソウシンでも回答に窮するでおじゃるか」


 聡明って、麒麟児や神童とか言われたことはあるけど風に言われたのは初めてかも。てか、ハッキリ言って中央の政には興味がないのであまり関わりたくないと言うのが本音だよ。


「ホウオウの義父殿は何と?」
「内大臣には既に話しておじゃる」


 既に話はついている感じだな。そうなると否応なく政争に巻き込まれることは確実だ。










 ロイド歴三八八八年七月中旬


 ミズホの国、大平城のキシンから手紙が来た。
 その手紙にはソウコの結婚相手、つまり婚約者を決めるのでソウコをミズホに帰国させろと言う物だった。
 キシンは何時からソウコを結婚させる気になったんだ? ちょっと前までは結婚などさせん、と公言していたのに。


「と言うわけでミズホに帰国させることとなった」
「嫌です!」


 嫌です、って予想はしていたけどそこまで拒否らなくても良いじゃない?


「ソウコには誰か慕う者が居るのか?」
「……」
「居ないのであれば父上の勧める者に会ってみるのも良いと思うぞ」
「ソウコはソウコよりも優れた鉄砲使いでなければ嫁には行きません!」


 ソウコより優れた鉄砲使い……ソウコの職業は『狙撃手』で鉄砲の射手としてはワ国でも数本の指に入るだろう。そんなソウコよりも優れた射手を見つけることは簡単ではない。


「しかしな、ソウコより優れた射手など滅多に居らぬであろう?」
「自分より劣る者に嫁ぐなど考えもよりません!」


 はぁ、どうした物か。取り敢えずミズホまで連れて行かねば、気が重い。
 そんなことを考えて居るとソウコは部屋を出て行き代わりにシゲアキ・マツナカとコウタロウ・カザマが入って来る。


「殿、イドの国に動きが御座いました」


 部屋に入ってきた二人が俺の前に座り一礼し、シゲアキ・マツナカが口火を切った。
 今の俺にとって厄介な話が三つある。一つ目はつい今しがた話していたソウコの縁談、二つ目が王の退位、三つ目がイドの国をどうやって俺の傘下に収めるかと言うことだ。
 幸いなことに家内はそれほど大きな問題もなく資金は潤沢にあり開発が進み金が循環しているし治安も多くの傭兵も抱えているので傭兵たちに治安維持を担わせている。


「して、状況は?」
「は、ヒャクタケとコウブが兵を率いてハトリの領内に攻め込みました。他の小国人衆も概ねヒャクタケとコウブに付いています」


 イドの国はこれまで国を纏める国人が居なかった。ハトリとヒャクタケ、そしてコウブの三大勢力と幾つかの小勢力がこれまで均衡を保っていたのだ。
 そこに国守である俺がハトリ、ヒャクタケ、コウブの三大勢力に傘下に入れと言い、そしてハトリが俺に恭順の意を示しヒャクタケは拒否、コウブは回答を保留していた状態だった。
 そして素早く俺に恭順の意を示したハトリに国守代の官職を贈ったことで他の二大勢力であるヒャクタケとコウブが反発した形だ。国守の俺に恭順もしていない奴らに国守代の官職を与えるわけがないだろうに。


「援軍は?」
「は、既に兵部大丞エイベエ・イズミが一万の兵を率いて向かっております。明日にはハトリと合流することでしょう」


 ヒャクタケとコウブが反発するのは分かっていた。だから何時でも兵を動かせるように準備していたのだ。
 他の小国人衆がヒャクタケとコウブと連携するかは分からなかったが、それでもハトリ以外のイドの国の国人が全て敵になったとしても兵数は精々四〇〇〇程度なのでイズミ兄弟の弟であるエイベエに兵権を与え不測の事態に直ぐに動けるように準備していた。エイベエに関してはあくまでも援軍として直ぐに動けるだけの兵を与えていたので一万だが、他にザンジ・オオツキとコウベエ・イブサがそれぞれ一万の兵を準備して数日後にはイドの国を平定する為の戦いに向かうだろう。


「して、ニシバタケは動きそうか?」
「ヒャクタケ、コウブと頻りにやり取りをしております。更に兵を動かす準備もしております故、イドの国での争いが本格的な戦となりますれば北イゼに攻め込んでくるのは確実かと」


 今までシゲアキ・マツナカに話を任せていたコウタロウ・カザマがニシバタケ家の動向を報告する。
 武闘派のカザマ衆ではあるが、決して情報収集の能力が低いわけではない。タナカ衆より数が少ないし元々ミズホの国に根付いていたタナカ衆とは違い関東の忍だったカザマ衆には今はビバリの国やイゼの国などの諜報活動を行って貰っている。


「我らはどう動くべきかな?」
「北イゼはガンモ殿を総大将に防衛に専念させましょう。ニシバタケにはイドの国が落ち着いてから対処するのが宜しいでしょう」
「そうか、何れにしろ援軍の準備はしておくように。それとカザマ衆は引き続きニシバタケの動向を、何かあれば直ぐにガンモに知らせてくれ」
「「はっ」」


 イドの国の争乱を早々に収め、ニシバタケに対処しないとカモン家の周辺で面倒な動きが起きかねない。そしてニシバタケに時間をかけるとビバリの国のサトウ家も動くだろうし、王の退位に伴いアサクマ家が動く可能性もある。ビバリの国のサトウ家はキシン君に任せるとして、当面はイドの国の平定とニシバタケ家の抑えが重要だ。そしてアサクマ家が動いた場合は俺も最前線に出ることになるだろう。
 そうなる前にソウコを連れてキシン君に会いに行くとするか。


 と、その更に前に趣味のモノ作りをする。
 今回作るのは魔法媒体を利用した魔道具だ。
 大陸貿易から帰ってきた船の責任者からこれが献上されたことで俺の創作意欲が掻き立てられたのだ。
 この魔法媒体は所謂魔石と言われる物で、以前熊の魔物を倒した時にもこの魔石は入手していたが、熊の魔石は所謂無属性と言われる物なのでどう使おうかと迷っている間に忙しさもあって忘れていた。
 そこに今度は大陸から火属性の魔石と風属性の魔石が持ち帰られ、俺を突き動かすに至ったわけだ。


 そこで作ろうと思ったのは風属性の魔石を使った魔道具だ。
 モノ作り以外で俺の強みは何だ、と聞かれれば外国との貿易だ。膨大な富を俺にもたらす貿易が無くても何とかなったとは思うが、それでも俺の強みであることに違いはない。
 つまりその貿易の為に今回は魔道具を創ってみようと思うわけだ。
 風属性の魔石は拳大の大きさで色は綺麗なエメラルドグリーンでやや発光している。
 この魔石の力を増大させ、更に使えるようにする。その為には魔石の力を余すことなく伝える金属が必要だ。
 だが、このワ国では今の所そう言った金属の産出は確認できていない。しかし今の俺ならどんな金属もMPを糧に創り出せる!


「【神生産】発動!」


 大陸にはミスリルがあると聞く。そのミスリルを【神生産】で創り出す。イメージするのはMP伝導率が良く鉄よりも丈夫で軽い金属。
 出来上がったのは銀のように白く、そして神々しく発光している。
 流石はミスリルと言うべきか膨大なMPを消費してしまったが、今の俺のMPならばその消費MPも総量の1割にも満たない。


 見ているだけでその魅力に魅入られそうになるその輝きはミスリルが神の金属と言われている所以ゆえんだ。
 創り出したミスリルの塊は凡そ一〇〇キログラム。しかも純粋なミスリルなのでこの塊を大陸から輸入しようものならとんでもない金額になるだろう。


 更に【神生産】を発動し、風属性の魔石にミスリルを薄くコーティングする。これで魔石の力を無駄なく取り込めるだろう。
 創るは船の帆に常に風を当てる魔道具。蒸気機関を創ってしまえば良いのだが、それでは折角魔法があるこの世界の醍醐味が味わえないので、蒸気機関は後日の楽しみとしよう。


 魔石を持つ魔物を討伐するのは大変なので魔石はあまり出回らない。
 魔石持ちの魔物となれば最低でもあの熊の魔物程度となり倒すのも大変だからだ。
 中筒を使ったり火薬を使えば安定して討伐できるかもしれないが、魔物が人が住むエリアに出て来るなら兎も角、態々魔物の住処すみかに兵らを送るのは気が引ける。




 貿易の艦隊は一隻だけではないので、艦隊全体に風を送らなければならない。それだけの大容量の風を送る魔道具を創るのは俺のイメージ次第だ。
 そして出来上がったのは扇風機の様な……そんなわけなく、只の箱型だ。これを起動させれば最大で風速一五メートルほどの風が発生する。しかも広範囲にだ。
 そして空気中の魔素を取り込み充電ではないが、魔力の補充も自動でできるようにしておく。これで半永久的に動くだろう。




 

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