チートスキルはやっぱり反則っぽい!?

なんじゃもんじゃ

チート! 037 炎の迷宮攻略記録1

 


 25層まではスノーを助け出すために訪れているシローたちは26層に至っている。
 アキムが立て篭もっていた場所が所謂ボス部屋だったのだが、シローたちはボスを倒すこともなく26層に脚を踏み入れたのだ。


「シロー殿、ここは我らに任せてもらおう!」
「了解だ、2人とも頼むぞ」
「はいです!」


 ジーナが盾を構え突進する。それを迎え撃とうとマグマクロコダイルが大きな口を開けてジーナを噛み砕こうとするが、彼女はその鋭い牙が生えた大きな口から繰り出される噛み砕く攻撃を大盾で防ぐ。
 そして次の瞬間、アズハが音もなくマグマクロコダイルの傍に現れ手に持った短剣をマグマクロコダイルの目に突き刺す。


「グギャァァァァァッ!」


 マグマクロコダイルの外皮は鎧の様に固いので無理に攻撃するよりも外皮で守られていない目を狙ったアズハの頭脳プレーである。


「よし、うらっ!」


 目を刺され怯んだマグマクロコダイルの隙をついたジーナが腕力に任せマグマクロコダイルの上顎を掴み投げ飛ばすと空中で腹が見えたところでアズハが柔らかい腹部を切り裂く。
 マグマクロコダイルは体内に貯め込んでいた高温のマグマを周囲にまき散らしながらもがき苦しんだ挙句動かなくなった。
 マグマクロコダイルの最大の攻撃手段であるマグマ吐きを受ける前に瞬殺してしまう2人の実力は間違いなく本物である。
 長身のジーナと比較的小柄のアズハの連携はランクCの魔物程度なら寄せ付けないのである。


 ドロップアイテムが目の前に現れた時であった。
 周辺を警戒していたアズハの体から眩い光が放たれる。


「きゃっ!」
「な、なんだ!?」


 自分が発光したことで驚いたアズハとそのアズハの状態を見たジーナが慌てる。
 しかしシローはその2人を遠めに眺めているだけだ。
 暫くするとアズハの発光は収まり、最初に声を上げたのはジーナだった。


「あ……え?」
「……」


 ジーナはアズハの姿を見て声にならない声を上げる。
 何故ならアズハの灰色の髪の毛が銀色に変わり、更に薄い茶色だった瞳の色も今は金色になっているからだ。


「どうしたのですか?」


 アズハは自分の容姿の変化に気が付いていない。
 そこにシローが近づいてきてストレージから手鏡を取り出してアズハに向ける。


「えっ!?
「おめでとう。神狼化の封印が解けたからアズハは進化したようだよ」
「え?……しんか……」




 ■ 個人情報 ■
 アズハ
 神狼人(進化) 15歳 女
 シローの奴隷
 対シロー忠誠度:100%


 ■ 能力 ■
 HP:4,000/4,000
 MP:1,500/1,500
 STR:2,000
 VIT:1,000
 AGI:3,000
 DEX:1,000
 INT:500
 MND:600
 LUK:1,500


 ■ 種族スキル ■
 超感覚Lv1(NEW)
 牙流双剣Lv1(NEW)


 ■ ユニークスキル ■
 神狼化(封印解除)


 ■ ウルトラレアスキル ■
 神速Lv6(UP)
 解析眼Lv4(UP)


 ■ スーパーレアスキル ■
 再生Lv5
 立体機動Lv1(NEW)


 ■ レアスキル ■
 罠士Lv7(UP)
 隠密Lv8(UP)
 疲労回復Lv10(UP)




 @超感覚:周囲の敵味方、地形や罠などを把握できる。
 @牙流双剣:片手で持てる剣類を両手に装備することで目に見えない斬撃を飛ばすことができる。
 @神狼化:神の血を引く者にのみ顕現するスキル。神殺しと言われるシルバーフェンリル化する。
 @立体機動:空中でも足場があるかのように移動が可能となる。




 種族が狼人から神狼人しんろうじんに進化したことで見た目も変わったのだろうとシローはすぐに思い至ったが、当の本人はこの変化に付いていけていない。
 ステータスを見ると能力が軒並み上昇しているし、幾つかのスキルがなくなり代わりに新しいスキルが発現しているのも見て取れる。


「凄いじゃないか!私もアズハに負けないように精進するとしよう!」
「新しいスキルに慣れるまでは無理は禁物だぞ」
「は、はい!」


 アズハの進化もあり遭遇する魔物を圧倒的な力でねじ伏せるシローたち3人はあっという間に30層のボス部屋に到達する。
 最初からスキルを使いこなすアズハにシローが苦笑するほどの勢いでアズハの索敵能力は上がっていた。
 しかも見つけた魔物は神速の速さで切り裂かれるのでシローどころかジーナの出番もない状態なのだ。
 しかしここまでの道程で少なからず疲弊していることからシローは家に帰る判断をし、ボス部屋の前から拠点の家に転移する。
 これは【超越魔法】に統合された【時空魔法】を扱えるシローならではの裏技ともいえる行動である。


「お帰りなさいです!」
「「「ただいま!」」」


 家では丁度鍛冶工房から出て来たクルルと会う。


「直ぐに食事の支度をしますのでご主人様はお風呂に入ってきて下さい」
「ああ、そうさせてもらうよ」


 スノーが居ない今、食事の支度はアズハが中心となってクルルがその手伝いをする。
 残念ながらジーナは料理が得意ではない。それどころか、家事全般に恐ろしく向いていないので家の中では肩身の狭いジーナであった。
 アズハの見た目が変わった経緯を料理をしながら聞くクルルがとても嬉しそうなアズハを見て破顔する。
 尻尾をパタパタ振り料理を作るアズハ、その周囲で野菜や肉などの食材を準備したり皿を並べる幼女体型のクルル。
 それを見守るクマの獣人で大柄のジーナ。
 全員が美形であり、ここにスノーが加われば正にシローのハーレムなのだが、今はスノーが居ない。
 シローも立ち直った後はスノーの居ない寂しさを隠し明るく振る舞っているがそれがかえって痛々しく見える。


 クルルは魔物と戦えない代わりにアイテム製作でシローたちを支える。
 シローたちが帰って来るとクルルはシローたちの装備をメンテナンスするのが彼女の日課となっている。
 クルルの【鍛冶師】のレベルは既に8となっており達人を超え人外の域に達している。恐らく既にオリハルコンでさえ扱えるだろう領域である。


 今は消耗が激しいジーナの大盾と鎧のメンテナンスをしているクルルだが、その素材は極僅かにしか採掘がされないアダマンタイトである。
 アダマンタイトは硬く丈夫なのだが、同じ容積の鉄に比べ5倍もの重さなのでSTR値とVIT値が高くないと装備ができない。
 しかし今のジーナであればこのアダマンタイト製の大盾と鎧を身に着けることが出来るのでクルルも精魂込めて鍛えるのだった。
 だが、如何せん重量が半端なく重いのでドワーフとは言えまだ少女であるクルルでは扱いに苦労を強いられているのが現状だ。


「く~重いです~」


 破損した部位を補修するための部品造りの為に金槌を振り下ろしながらアダマンタイトのインゴットを少しずつ動かし形を形成するのだが、その重さから何時ものようには作業が捗らない。
 そんなことからややイラつきながらも素材に向かうクルル。


 重量との戦いを制したクルルの前にある作業机にはたった今メンテナンスが終わったアダマンタイト製の大盾と鎧が置かれている。
 その重量により丈夫な作業机も悲鳴を上げている様に見えるほどだ。


「ジーナさん、鎧と盾のメンテナンスが終わりましたです」
「お、有難うクルル。これで安心してまた戦えるよ」
「はい、頑張って下さいです」


 嬉しそうな顔のジーナに比べクルルの顔は暗い。


「ん?どうしたんだ?」
「はい、実はアダマンタイトが重くて作業がなかなか捗らないのです……」
「なるほど……なら魔物でも狩って能力を上げるしかないな!」
「え?」


 ジーナは早速シローにそのことを相談しクルルの能力を上げる為に魔物狩りをしたいと伝える。
 それを聞いたシローは快く了承し翌日クルルを連れて4人でダンジョンに入るのだった。


「あわわわわわ。魔物がいるのです~」
「よし、アズハ頼む」
「はい!」


 炎の迷宮の5層でクルル向けの魔物を狩ろうとやってきたシローたちの前に赤い皮膚の小鬼が現れたのだ。
 レッドゴブリン、一般的なゴブリンは緑色の皮膚をしているが、この炎の迷宮に現れるゴブリンの皮膚は赤みの強いオレンジ色だ。
 強さは……まぁ、緑色のゴブリンと大して変わらない。口から火の粉を放出するだけの違いであると説明するシローだったが、それはシローから見た場合であり、一般的には普通のゴブリンより遥かに強いレッドゴブリンだった。


 アズハはレッドゴブリンの群れの中に単身突撃し、殴る蹴るなど一方的な暴力でレッドゴブリンを痛めつけるとシローたちの元まで戻ってくる。
 当然、一方的な暴力を振るわれたレッドゴブリンたちは怒り心頭、憤怒の表情でアズハを追いかけてくる。


「よし、クルル一発当てれば殺れるから遠慮なく殺れ!」
「えええええ!」
「大丈夫だ、この私がいるかぎりクルルには指一本触れさせないから」
「は、はいです!」


 ジーナに守られつつも自分の背丈ほどある大金槌を振り回しレッドゴブリンを爆殺していくクルルも大概だなと思うシローだった。


 レッドゴブリン大量殺戮現場でドロップ品を回収するシローとアズハ。
 それを申し訳なく見るクルルだったが、レッドゴブリンとの戦いで疲弊しているので今はジーナに守られて地面に座っている。


 次はレッドオークの大群が相手だった。
 レッドオークも皮膚が赤く口から火炎を放出するだけで普通のオークと強さは大して変わらないと説明するが、こちらもゴブリン同様強さに差はある。
 シローにとっては誤差範囲としか認識できないほどの違いかもしれないが、クルルにとっては命取りになりかねない差なのだが、ジーナとアズハのフォローによってクルルは安全にレッドオークを討伐していく。
 その後も順調にパワーレベリングで成長するクルル。


「あわわわ、もう20層なのです!」


 圧倒的強者であるシローたちに守られパワーレベリングされたクルルはたった1回の迷宮探索で爆発的な成長を遂げていた。
 と言ってもその能力値はシローから見ればまだまだである。


「よし、今日はここまでにするか」
「クルルのステータスも結構上がっただろ?」
「ハイなのです!」




 ■ 個人情報 ■
 クルル
 ドワーフ 14歳 女
 シローの奴隷
 対シロー忠誠度:100%


 ■ 能力 ■
 HP:1,000/1,000
 MP:500/500
 STR:800
 VIT:500
 AGI:200
 DEX:900
 INT:250
 MND:250
 LUK:350


 ■ ユニークスキル ■
 生産性超向上Lv5


 ■ ウルトラレアスキル ■
 解析眼Lv6(UP)


 ■ スーパーレアスキル ■
 生産品質向上Lv6


 ■ レアスキル ■
 採掘師Lv4(UP)
 鍛冶師Lv8


 ■ ノーマルスキル ■
 交渉術Lv2



「チートスキルはやっぱり反則っぽい!?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「冒険」の人気作品

コメント

コメントを書く