チートスキルはやっぱり反則っぽい!?

なんじゃもんじゃ

チート! 005 初依頼をするのです!

 


 シーロは名を変え冒険者ギルドに登録している。
 これはステータスを偽装や隠蔽しているわけではなく本名を改名したものである。
 改名は神殿に行けばできるが、神殿に行くと改名の記録が残ってしまうので後々の事を考えると神殿での改名はしていない。
 改名程度で【チート】を発動させるのは勿体無いとも思うシーロだったが、これは徹底しようと思い【チート】を発動させ改名だけではなく、出自が分かる情報の全てを変更し更に容姿も変更している。
 容姿までと思うかも知れないが、念には念をというやつだ。


 ただ、黒髪黒目はそのままにしている。
 これはシーロを態々転生させたのに容姿をこの国では珍しい黒髪黒目にしたのには訳があるのではないかと考えたからである。
 お陰でシーロの容姿は日本人であった前世を彷彿させるものだった。
 ステータスの情報は『ファイフォーレン騎士爵家三男』から『村人』に変更し冒険者登録をしたので更に『冒険者』に変わっているだろう。






 ■ 個人情報 ■
 シロー
 人族 男 12歳
 冒険者


 ■ 能力 ■
 HP:486/486
 MP:1,512/1,512
 STR:300
 VIT:300
 AGI:200
 DEX:200
 INT:500
 MND:300
 LUK:200


 ■ ユニークスキル ■
 チート


 ■ ウルトラレアスキル ■
 解析眼Lv10
 時空魔法Lv10


 ■ スーパーレアスキル ■
 MP値増加200%
 HP値増加50%
 雷魔法Lv10


 ■ レアスキル ■
 隠密Lv10
 空間把握Lv10
 危機感知Lv10
 剣士Lv10


 ■ ノーマルスキル ■
 気配感知Lv10
 魔力感知Lv10
 身体強化Lv10


 ■ 状態 ■
 エクリプ神の加護


 ■ 称号 ■
 世界を渡りし者






 カウラニの街の西側には草原があり、その奥には森がある。
 その草原や森に棲み付いているグラスウルフが時々街道まで出没し商人や旅人などを襲う。
 その為にカウラニの街の領主が冒険者ギルドを介して常時依頼としグラスウルフの駆除を発注しているのだ。
 グラスウルフは群れで行動しており初心者の冒険者が勢いや調子に乗って挑み返り討ちにあう事が多いので気をつけるようにと犬耳の受付嬢に言われていたシローだが、カウラニの街に入る前にグラスウルフに襲われており大した労力もなく撃退している事もありシーロは緊張もしていなかった。
 シロー自身日々【チート】によるドーピングのおかげでこの年齢の人族ではあり得ないほどの身体能力を持っており、戦闘スキルもしっかりと高レベルであるので当然とも言える。


 今のシローは【空間把握】を駆使してグラスウルフの位置を把握しているのでグラスウルフに関しては探すのに苦労はしない。
 何故グラスウルフの位置を把握できるのかといえば、グラスウルフとは一度戦っている事からその気配や魔力のパターンを覚えており【空間把握】のマップ上でグラスウルフの選別ができるのだ。
 この選別は一度でも遭遇していないと流石に難しく、今回グラスウルフ以外に狩る予定のゴブリンには会った事もないしナオリ草も採取した事がないのでそれに関してはグラスウルフのように選別ができない。


 取り敢えずグラスウルフをサクサクと狩り取って行き、12匹を狩ったところで森に入る。
 森の中に入ると直ぐに3匹のゴブリンを発見したのでそれぞれ一太刀で切り伏せる。
 シローが使っている剣は数打ちなのでこれだけスムーズに骨まで裁てるのは【剣士】スキルが高いおかげだろうと血糊の付いた剣を見て思う。


 ゴブリンに遭遇した事によりゴブリンの選別もできるようになったので後はナオリ草を見つければ今回の目的はほぼ達成できたと言っても良いだろう。
 シローは地面を見ながら森の中を進みそれらしい草があれば【解析眼】で確認していく。
 正味2時間は森の中を歩いたと思うがナオリ草は見つからず、代わりにマヒシ草やタンメイ草などの毒草を大量にゲットできた。
 それとゴブリンとグラスウルフは見かけては殲滅しているので最低討伐数は既にクリアできているがナオリ草はまったく見つからない


 更に暫く歩くとゴブリンやグラスウルフとは違う反応があるのでそちらに向かって歩く。
 そこに居たのは牛のような魔物で【解析眼】によればジャイアントモウと言う魔物だ。
 牛の魔物だけあって体は大きく体高が2mに体長も4mほどで頭には2本の巨大な角が存在感を主張している。
 ジャイアントモウは草を食べていたようでシローを見止めると食事の邪魔をしたものを威嚇するというよりは、興奮した闘牛よろしく鼻息を荒くさせ前足で地面をかく仕草をし、やる気満々のようだ。


 ドドドドドドッ


 シローに向って走り出したジャイアントモウは細い木は薙ぎ払い、太い木は器用に避けながら突進する。
 その突進力は日本でいうブルドーザーを彷彿とさせるが、その速度はブルドーザー以上であり威圧感は半端ない。


 ジャイアントモウの依頼があったかは見ていないが、来るものは拒まないのがシローの心情なので迎え撃つ事にする。
 ジャイアントモウのは長く大きな角でシローを串刺しにしようと突進する。
 そんな角が刺さったらいくら超人的な身体能力を持つシローでも痛いだけでは済まない気がしたので前方宙返りの要領でジャイアントモウを飛び越える。
 飛び越えたついでに【雷魔法】の『ライトニングジャベリン』をジャイアントモウの頭に至近距離で放ったらジャイアントモウの頭部が半分ほど消失しており突進の勢いもあり前方の大木にぶち当たってジャイアントモウは息絶えてしまう。
 ジャイアントモウの体が発光し消えた後には『ジャイアントモウの肉(上質)』『ジャイアントモウの角』『ジャイアントモウの皮(上質)』『ジャイアントモウの魔石(C級)』の4種類のアイテムが残った。
 それらのアイテムをストレージに仕舞い再びナオリ草を探す事にしたが、ふとジャイアントモウが食べていた草があった場所を見ると図で見たような草が生えていた。


「あった、ナオリ草だ!」


 そこにはナオリ草が群生しており、先ほどのジャイアントモウに多くは食われてはいたが20Kgほどを採取できたので一旦カウラニの街に帰る事にした。
 恐らくあのジャイアントモウが周辺のナオリ草を食い漁っていたので少なくなっていたのだろうと考え、迷惑なやつだと溢す。


 カウラニの街に帰り冒険者ギルドに到着する頃にはすっかり日も暮れており、流石にこの時間ともなると冒険者の数が多く3つある受付カウンターは長蛇の列ができていたのでシローもその列に並ぶ事にした。
 多くの冒険者を効率よく捌く必要があるのでナイスバディのお姉さん2人も昼のように無駄話はせずにテキパキと処理をしている。
 20分ほどしてシローの前に並んでいた冒険者の処理が終わりシローはギルドカードを犬耳の受付嬢に渡す。
 ゴブリン駆除とグラスウルフ駆除の処理をして貰う為だ。
 しかし犬耳受付嬢の手がピタリと止まる。


「どうかしましたか?」
「・・・・・・・・討伐記録によりますと・・・ジャイアントモウを討伐されたとなっております・・・」


 犬耳受付嬢、シロー曰く『犬耳さん』は小声でシローに討伐記録の事を確認する。


「はい、ナオリ草を探していたら偶然遭遇し襲ってきたのでっちゃいました」


 この時のシローは冒険者ギルドの受付嬢並みの営業スマイルで犬耳さんに答えていた。


「アイテムはドロップしましたか?」
「ええ、しましたよ。見せましょうか?」
「できればお願いします。ああ、あちらの部屋でお願いします」


 犬耳さんは緊張した面持ちで小部屋が並んだ方を指差す。
 シローは小部屋から犬耳さんに視線を戻そうとした時、いつの間にか周囲が静かになっている事に気が付く。
 シローがキョロキョロと周囲を見渡すと目があわないようにシローから顔を背ける冒険者。
 犬耳さんは席を立つと他の職員に何か耳打ちしてシローに着いて来るように言うと、開いている扉の部屋に入って行く。


 ジャイアントモウってヤバイ魔物なのだろうか?


「メアリー君か、どうしたんだい?」


 犬耳さんの名前はメアリーだ。
 当然の事だがシローには【解析眼】があるから犬耳さんの名前がメアリーだというのは知っていた。
 しかし本人が自己紹介したわけではないのでシローの中では犬耳さんであった。


 メアリーは部屋の中に居た壮年の男性とヒソヒソ話しシローを紹介する。
 エレロンは【解析】を持っている人族の男性だが、そのエレロンはメアリーから耳打ちされた内容に一瞬驚いたようにシローを見たが、直ぐに表情を戻す。


「そうですか・・・私はこの支部で鑑定士長をしていますエレロンと言います。宜しくお願いしますね」
「シローです。こちらこそ宜しくお願いします」
「早速ですが、そこの台にアイテムを置いて貰えるかな」


 エレロンは物腰が柔らかく随分と丁寧な言葉使いでシローにアイテムを出すように頼む。
 シローはギルドの職員は言葉使いについても教育を受けているのだろうか? と疑問を浮かべながらエレロンに促され『ジャイアントモウの肉(上質)』『ジャイアントモウの角』『ジャイアントモウの皮(上質)』『ジャイアントモウの魔石(C級)』を指定された台の上に並べる。


 メアリーとエレロンはシローが何もないところからジャイアントモウのアイテムを次々取り出したのを見て【収納BOX】ですか、と少し驚いていた。
 もともとシローは軽装で小型のサクバックを背負っているだけなので考えればすぐに【収納BOX】系のスキルだと想像はできた。
 しかし【収納BOX】はレアスキルではあるが商業の神を祀っている神殿で高額な寄進をすると覚えるらしいので持っている人は割りと多い。
 但し、シローの場合は【時空魔法】であるのだが。


 ジャイアントモウはかなりデカかったがドロップした『ジャイアントモウの肉(上質)』はたったの5Kgほどしかなく、『ジャイアントモウの皮(上質)』もあの体格から想像するよりは全然少ない。
 あの巨体であれば大量の肉や皮がドロップしても良いだろうにと回収した時にシローは思っていた。


「た、確かに『ジャイアントモウの肉』『ジャイアントモウの角』『ジャイアントモウの皮』『ジャイアントモウの魔石』だね」
「・・・これらのアイテムはどうされます?」


 どうされます?と言われても冒険者ギルドしか売れないので選択肢としては二択しかない。
 売る以外の選択肢としては自分用の装備を作る事になるのだが、それは資金が貯まらないので暫く考えるシロー。


「・・・これってヤバイブツですか?」
「知らないようですが、ヤバイですね・・・」


 シロー自分で聞いておいてあれだが、何がヤバイのか? と思う。


「ジャイアントモウってそんなにランクが高い魔物でした?」
「いいえ、ランクはCです。ただ・・・殆ど発見報告がない魔物で・・・数年に1匹討伐されれば良いって感じですかね・・・」
「つまり、ドロップアイテムは希少だと?」
「ええ、その通りです」


 シローはメアリーに顔を近付けコソコソと話す。
 シローとメアリーとエレロンの3人しか居ないのでコソコソ話す必要はないのだが何故かそうした。


 犬耳に触りたいな。とジャイアントモウのドロップアイテムより犬耳の方が気になるシローだった。


「因みに引き取ってもらう場合はお幾らになりますかね?」
「魔石は普通にC級の買い取り価格で1万レイルですが、それ以外はこれだけの物ですからオークションに出品する事になると思います。ですから正しいか分かりませんが、過去の実績からすれば防具や革製品などの素材として需要がある『ジャイアントモウの皮』は最低でも100万レイルにはなると思います」


 (何っ! 1レイル10円相当だと思うから・・・ 100万レイルは1000万円相当っ!?)


 ドロップアイテムの価値を聞き驚き焦るシロー。


「剣や槍などに需要がある『ジャイアントモウの角』は1本で最低で200万レイルでしょうか・・・」


 (2000万円来ましたっ! しかも2本持っています! インフレです!)


「ただ、『ジャイアントモウの肉』は幾らになるか想像がつきません。・・・下手をすれば1000万レイルだってあるかも知れませんよ・・・グルメな方がどれだけの値をつけるか・・・」


 (い、い、1億円っ! 幾ら希少だと言ってもたかが肉に1億円ってあり得ないでしょ!)


「しかも皮と肉は上質ですから更に値は上がると思って良いと思います・・・」


 この世界の人の食欲に驚愕するばかりです!


「え~っと、肉だけオークションに出品して角と皮と魔石は手元に残しておくってのは有りですか?」
「有りですが、営利目的で商人などと直接取引しますと処罰されますのでお気を付け下さいね」
「・・・俺の武器や防具を作るのは問題ないですかね?」
「それでしたら問題はありません」


 そんなわけでシローは角と皮と魔石を回収し、肉はギルドに預けて預け証を貰う。
 オークションは月に1回開催されており次のオークションは7日後でそれまで代金はお預けだと言う。
 そしてオークションではシローにも席を設けてくれると言う事なので行ってみようと思うシローだった。


 その後は霞んでしまったが、ゴブリン討伐は31匹で銀貨31枚、グラスウルフ討伐は29匹で銀貨37枚と大銅貨7枚、それとナオリ草は20Kgで銀貨60枚、合わせて金貨1枚と大銀貨2枚と銀貨8枚と大銅貨7枚になったのでギルドに預ける事にした。
 これは依頼の成功報酬なのでドロップしたアイテムを売るともっとお金になるのだが、今回はジャイアントモウのおかげでギルド会館の中がシーンとしており身の危険を感じた事でドロップアイテムを売るのは後日にしてギルド会館から逃げるように出て行くシローだった。






 

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