クランを追い出されたのでクランを作って最強になる

なんじゃもんじゃ

013

 


 僕は今、幾つかあるポーターのクランの一つにきている。
 ポーターのクランの中では所属員が少ないクランだけど、知り合いがいるので誰か紹介してもらえないかと思ってきてみた。
 一応、僕も何人かポーターを知っているけど、残念ながら僕が知っているポーターは全員地下五層以降の層を中心に活動する人たちばかりなので、僕のような一層で活動するウィラーの仕事は受けてもらえないし、受けてくれても報酬が少なくて申し訳なく思ってしまう。


「こんにちは、ボックスさん」
「ん? おう、ゼクスか。珍しいな……って、聞いたぞお前、使徒になったんだってな?」
 この人は僕の知っているポーターで、クラン『ポッタムボルター』の代表で、上級物流神のポッタム様の使徒なんだ。
 このポッタムボルターは小規模なクランだけど、ボックスさんはとても優秀なポーターであのウィラーズウォーの使徒であるアーマーさんのパーティーの専属ポーターなんだ。


「はい、暗黒神ユニクス様に気に入ってもらえて使徒になりました」
「すっげーな、大神の使徒様か~。上手くやりやがって」
 僕の肩に手を回してグリグリしてくるボックスさん。
 ちょっと苦しいので止めてください。


「それで今日はなんの用だ?」
 グリグリしながら要件を聞くのも止めてください。
「あ、あの、ポーターを紹介してほしいかなと思って……まだ一層なんですけど……」
「おう、俺が行ってやろうか? アーマーのところが大規模討伐から帰ってきたばかりだから、しばくは休みなんだ」
「いやいやいやいやいや! ボックスさんに支払う報酬を用意できませんから!」
 ボックスさんなら一回の仕事で数十万WPを稼ぐはずだから、とても頼めないよ!


「暇だから20%で構わないぞ」
 超がつく一流ポーターのボックスさんをポーターにしたいというウィラーは沢山いる。
 だけど、ボックスさんは自分が牛の獣人だからか、獣人のいないパーティーの仕事はしないと言っていた。
「それに僕のパーティーには獣人はいませんから……」
「獣人がいなくてもゼクスなら特別にポーターをしてやるぞ!」
 こうなることはある程度予想できたけど、僕はとても困ってしまった。


「あははは、まぁ、いい。俺がポーターをするのはゼクスがもっと出世したらで構わん!」
 僕の困った顔を見て察してくれたのか、元々僕をからかうためなのか、ボックスさんは諦めてくれた。
 でも、まだグリグリされているので、いい加減止めてほしい。


「ちょっと待ってろ。新人を連れてくる」
「あ、はい。ありがとうございます」
 クランハウスの玄関前で偶然会って、それからそこで話していたので僕は玄関前で待つ。


 ボックスさんは超一流のポーターだけど、ポッタムボルターは大きなクランじゃない。
 それでも所属しているポーターの多くは一流と言われる人が多い。
 それなのに規模が小さい理由は、ボックスさんがクランの運営が面倒だって言って、あまり規模を大きくしなかったからだし、何よりもポッタムボルターには獣人しか所属が認められていないからだ。


 獣人は僕のようなヒューマンよりも身体能力が高い種族なので、戦闘を生業とするウィラーになる人は多い。
 クランランク10という最高ランクのウィラーズウォーを率いるアーマーさんも熊の獣人だ。
 だから戦闘を行うクランに所属する獣人が多く、ポーター志望の獣人は数が少ないという理由もあると思う。
 さらには所属するなら大手の方がいいという人が多いので、ポッタムボルターに入りたいという人は少ない。
 本来は悪循環だけど、ボックスさんはそれがいいと言う人なんだ。


「おう、待たせたな!」
 ボックスさんがクランハウスから出てきた。
 その後ろには新人さんなのか、見たことのない若い人がついてきていた。
「いえ、無理言ったので僕ですから」
「こいつは四日前に加入したんだ。試用期間ってやつだな。使ってやってくれ」
「キャナルトとって言います。よろしくお願いいたします!」
 にこやかに僕に挨拶をしてくれたキャナルトはウサギの獣人で身長は155㎝くらいで細身の少年だ。
「僕はゼクスです。まだ一層でアサルトボアを狩っている初心者です。よろしくお願いします」
 僕が挨拶するとくりんくりんの大きな目を細めにっこりとするキャナルトは可愛らしい。


 第一印象はとてもいい。
 ただ、ポーターとしては華奢に見える。
 そんな風に思っていたのが顔に出たのかボックスさんが補足をしてくれた。
「キャナルトはこんな見た目だが、力はあるぞ。それに俺たちの加護は荷物の重量軽減だからな」
 僕が懸念していたことをボックスさんが補足してくれたので、報酬の話をしてみる。
「僕は今、二人で活動しています。だから報酬は30%を考えています。もし、仲間が増えた時には事前に相談するということでどうでしょうか?」
 報酬の話なので僕は真面目な顔でキャナルトに提案した。
 そうしたらボックスさんが噴き出して笑い始めた。
「おめー、初心者ポーターが30%ももらえるなんて話はないぞ」
 笑いから復活したボックスさんが報酬の指摘をした。
 キャナルトも驚いているようで、大きな目をさらに大きく見開いている。


「今は、です。先のことは分かりませんから」
「ふ、お前がいいって言うならそれで構わねぇ。なぁ、キャナルト!」
「は、はい!」
 よし、ポーターをゲットしたぞ!


 

コメント

コメントを書く

「冒険」の人気作品

書籍化作品