クランを追い出されたのでクランを作って最強になる

なんじゃもんじゃ

012

 


 アサルトボア狩りもかなり慣れてきた。
 ペルトは突進してくるアサルトボアをしっかりと受け止めることができるほどに成長しているので、戦いがとても安定している。


「このポーションは効果がいいですね」
「そんなことないよ。低価格帯のポーションだから失血とかは止められるけど、そこまで効果は高くないよ」
 僕が作ったポーションだからか、ペルトは効果がよいと褒めてくれる。
 だけど、じいちゃんに教えてもらった作り方で同じように作っているはずなのに、じいちゃんのポーションには遠く及ばない。
 じいちゃんの作ったポーションくらいに効果が高いものを僕も早く作りたい。


 アサルトボアを7体倒した。
 ドロップしたのはばら肉が5つだ。
 毎回こんなこんな感じで、一般的なドロップ率よりも倍くらいになっている。
 これにはわけがあって、僕が倒した下級享楽の堕天神の使徒だった大きなコボルトが落とした神器の腕輪のおかげなんだ。
 あの腕輪をユニクス様が浄化してくれたので、今は僕があの腕輪を嵌めている。
 ただ、浄化したので銀色だった腕輪が今では黒い腕輪になっている。
 以前の僕なら逆に呪われるんじゃないかと思ったことだろう。


 漆黒の腕輪の効果はドロップ率の上昇。
 もともとの腕輪の効果が敵との遭遇率上昇だったらしいけど、そのままでは僕たちが使うことのできない腕輪だった。
 それをユニクス様が浄化したことでドロップ率上昇の効果に変化してしまったんだ。
 ドロップ率上昇は非常に嬉しい効果だし、とても助かっているのが実情だね。


 今日も沢山の肉を背負い袋に入れてソロモンの天支塔を出た僕とペルトはネゴスヘルエスの買取所へ向かった。
 ソロモンの天支塔のすぐ横に建てられた買取所はとても立派な建物で、僕たちが住んでいる家が百軒は入りそうなほど大きい。
 それに石造りの建物なので重厚感があって凄くWPもかかっているんだろうな、と思える。


「今日もありがとうございます。アサルトボアのばら肉が75Kgですね」
 これだけの肉を二人で持って帰るのはきつかった。
 それでもユニクス様の加護があるのでなんとか持って帰ってきたけど、本気でポーターを探さないといけない気がしてきた。


「3,750WPになります。クランカードをかざしてください」
 指定された水晶の嵌った板にクランカードをかざすと、すぐに3,750WPが増えた。
 よく分からないけど、この水晶が嵌った板の上にクランカードを置くとWPが増えたり減ったりするんだ。
 このソロモンの街で商売をしている店はどこもこの板が置いてあるんだ。


 今日も綺麗な受付嬢さんがにっこりとほほ笑んでくれた。
 それだけで疲れが癒えてしまいそうだ。
 ペルトも綺麗な受付嬢さんの顔をぼーっと見ているので、僕と同じ、いや、僕以上に癒されているのかもしれない。


 家に帰るとユニクス様が自分の部屋から出てきた。
「おかえり。ゼクス、ペルト」
「「ただいま帰りました!」」
 僕とペルトはユニクス様に今日の戦果を報告すると、すぐに夕食の準備をしだした。
 最近は懐具合がいいので食事のグレードが上がっている。
 今日の夕食はコーンポタージュとローストチキン、そして柔らかいパンだ。
 ソロモンの天支塔の一層にはナイトバードという夜にしか現れない鳥がいるけど、そのナイトバードを丸ごと1羽を焼いたローストチキンはとても美味しいんだ。
 このナイトバードは空は飛べないし、弱い。
 でも夜にしか現れないし、体が黒い羽毛で覆われていて人にはあまり近づかないので、見つけるのに苦労する魔物なんだ。
 アサルトボアの方が稼げるのであまり狩る人はいないけどね。


「お~、今日はごうかだ~」
 ユニクス様にはいつも質素な食事で我慢してもらっているので、心苦しい。
 でも最近の僕たちの稼ぎは良くなっているので、これからはできる範囲で良い物を食べてもらおうと思う。


 翌日。僕たちはソロモンの天支塔に入るのは休んだ。
 ペルトには家の補修をしてもらい、僕は消耗品のポーションなどを補充する。
 大工仕事は苦手なので、ペルトに全部押し付けるようで心苦しいけど。
 だけどペルトはこういったポーション作りは苦手だって言っていたから、適材適所だと思う。


 ポーションは青草というソロモンの天支塔の地下三層から下の層に自生している薬草を乾燥させてから粉にした物をお湯の中に入れて煮詰めるとできるんだ。
 だけど、煮詰め方や水の質によってできるポーションの効果に差が出るんだ。
 他にもいくつかの薬草を混ぜると効果が上がったりするので、本当は色々な薬草を購入したいけど、先立つものがない。
 だから今は最低限の効果があるポーションを手作りするんだ。


「使徒様ー。使徒様ーー!」
 外で家の補修をしているペルトが僕を呼んでいる。
 何かとても焦っているようなので、急いで外に出る。
 家から出ると、門と言えるほど立派ではないけど、門の前でペルトが誰かと話をしていた。
「あ、使徒様!」
 僕の顔を見るとペルトが嬉しそうに近づいてきた。
「貴方がゼクス=アスタリオ様ですか?」
 ペルトが話していた人はとても綺麗な女性で、尖った耳なのでエルフだと分かる。
 やっぱりエルフは美人が多いね。
「そうですが、貴方はどなたですか?」
「私はクラン『オルディゼオス』に所属しますフリクカリア=イクタリカという者です。暗黒神ユニクス様の使徒であるゼクス=アスタリオ様にこの書状をお持ちしました」


 オルディゼオスというクランは法と秩序の神ゼオス様を祀っている。
 ウィラーは基本的にソロモンの天支塔に入って魔物を討伐するけど、オルディゼオスはウィラーの素行を監視して、目に余るウィラーがいると警告、そして最悪は捕縛するクランだ。
 つまりウィラーによる犯罪に対する警察機構のようなものなんだ。
 それともう一つ、オレディゼオスの役割がある。


「十日後、オレディゼオス本館にて使徒会議が開かれます。ご出席をお願いします」
 オレディゼオスはクランランクも司っている。
 三カ月に一回、各クランの代表者、つまり使徒はオレディゼオスの本館に集まって使徒会議を行う。
 使徒会議ではクラン間の揉めごとや素行の悪いウィラーが所属しているクランへの警告などいろいろなことが話し合われたりする。
 そしてその場で各クランのクランランクが発表される。
 その議長がオレディゼオスの代表者のアルダオさんだ。
 とうとう、僕も使徒会議にデビューすることになるのかと思うと、不安しかない。


「わざわざありがとうございます。本当は歓待したいのですが、こんなボロ家なので……」
「いいえ、お気になさらないでください。それでは私はこれで」
 綺麗な踵返しをして立ち去るフリクカリアさん。
 美人だからなのかもしれないけど、美人はどんな所作も美しいと思う。


 

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