クランを追い出されたのでクランを作って最強になる

なんじゃもんじゃ

010

 


 目的の魔物を見つけた。
 この一層の奥にはコボルトやレギルンとは違う魔物がいる。
 重量が300Kgほどある大きなイノシシの魔物で、アサルトボア。
 赤黒い体毛は初心者ウィラーの血で染められていると言われている魔物だ。
 硬くパワーもあるので、ウィラーにとって最初の山となる魔物。


「アサルトボアは突進が強力なので有名な魔物だ。ペルトにとっては厳しい相手になるかもしれないよ」
「か、必ず受け止めて見せます!」
 ペルトが右手で拳を作り気合を入れる。


「幸い、僕たちは風下にいるから気づかれていない。僕が最初に攻撃をするね」
「はい!」
 僕は気配を消してアサルトボアの後方へ向かう。
 気づかれないように後方からアサルトボアの首へ短剣を突き刺す。
「ブモッ!?」
 くっ、なんて硬さだ!?
 僕の短剣はアサルトボアの首に少しの傷をつけただけだった。
 アサルトボアから離れるとペルトの方へ一目散に走る。
 ペルトも僕とアサルトボアの方に走り出している。
 僕とペルトが交差すると、ペルトは暗包敵意を発動させる。


 ガンッ。ペルトが盾でアサルトボアを受け止めようとして弾き飛ばされた。
 さすがのペルトもアサルトボアの突進をまともに受けきれなかった。
 僕はペルトが体勢を整える時間を稼ぐためにアサルトボアの後ろ足に短剣を突き刺す。
 多少の傷がつき、アサルトボアも多少の痛みを感じたようで立ち止まった。
 僕は同じ場所に短剣を突き刺す。
「ブモッ!?」
 同じ場所にダメージを受けたことで痛みが増したのか、アサルトボアの顔が歪んだように見えた。


「すみません!」
 ペルトが戦線復帰してきた。
「怪我はない?」
 なんと言ってもアサルトボアの別名は暴走イノシシだから、これまでにも数々のウィラーを跳ね飛ばしている。
 まともに受ければペルトのように弾き飛ばされるのは予想できた。
 それでも盾職はアサルトボアを止めなければならない。
 それが初心者から一人前になるための試練なんだ。
「問題ありません!」
 よかった。僕はホッとしてアサルトボアに短剣を刺す。


 初めてアサルトボアと対峙して、アサルトボアの突進を受けた盾職の半分はその時点で戦線離脱すると言われるほどの魔物なので、すぐに戦線復帰したペルトを褒めてあげるべきだと思う。
 接近戦に持ち込めば突進力がおちるので、簡単には弾き飛ばされることもないだろう。


 ペトルはアサルトボアの攻撃をしっかりと受け止める。
 最初の突進こそ受け止めきれなかったけど、それ以外は安定している。
「やぁっ!」
「ブモッ!」
 ペルトはアサルトボアの頭部を執拗に攻めているけど、アサルトボアも急所を殴られないように微妙に打点をずらしているので、長期戦の様相を呈している。


 ペルトとアサルトボアの攻防は、まさに力と力のぶつかり合いだ。
 アサルトボアの躰は大きいので、ペルトの攻撃もしっかりと当たっている。
 だからその攻防を見ていたかったけど、僕自身もアサルトボアの攻略法を見つけるために参戦する。


「はっ!」
「ブモォォォォォッ!」
「やぁっ!」
 僕はアサルトボアの後ろ足に連撃を放つ。
 これまでのダメージと合わさり、アサルトボアは右後ろ足に力が入らないようだ。


「よし! ペルト畳みかけるよ!」
「はい!」
 僕は今できる最高の攻撃をアサルトボアの右後ろ足に叩き込む!
 真っ黒な双短剣が僕の意思に呼応すかのようにどす黒さを増して、そのドス黒い神気が僕の手に纏わりつく。
「フィフススティンガー!」
 両手に持った短剣をそれぞれ五連撃する技だ。
 合わせて十連撃になるので、一発一発のダメージが少なくても累積ダメージで大きなダメージを与えることができる。
 僕がフィフススティンガーを放つとアサルトボアの右後ろ足の太ももが爆散して足がちぎれた。


「おいらも!」
 アサルトボアが痛みにひるんだのを見たペルトが鉄槌を大きく振りかぶり溜をつくる。
 数秒後、ペルトの鉄槌が黒い神気で満たされると、振り下ろした。
 ドンッ。ものすごい衝撃がアサルトボアの頭部を突き抜けて地面を抉った。
 そして次の瞬間、アサルトボアの頭部が爆散した。


「すっげーーっ!」
 僕はペルトの爆破槌のあまりの威力に思わず声をあげてしまった。
「僕のフィフススティンガーがもすごいと思っていたけど、ペルトの爆散槌の威力はけた違いだね」
「そんなことないです。溜の時間が長いので魔物の動きが止まらないと使えないですから」
 ペルトは頭に手をやって恥ずかしそうに謙遜する。
 でも隙は僕を含めて二人で作ればいいのだから、撃てる時はどんどん狙ってもらおう。


「あ、ドロップありました!」
 アサルトボアはコボルトやレギルンと違って倒すとドロップアイテムがある。
 最近、僕たちの食卓に並ぶばら肉がだいたい30%前後のドロップ率だと言われている。


「こ、これは……」
「ロース肉!?」
 アサルトボアの通常ドロップはばら肉で30%前後のドロップ率に対して、レアドロップのロース肉は2%未満のドロップ率だと言われている。
 売っても高値になるし、食べても美味しい。
 まぁ、僕はロース肉なんて食べたことないから人から聞いた話なんだけど。
 僕たちはレアドロップの嬉しさのあまり、小躍りしてしまった。


「……初めての討伐でレアドロップがあるなんて、僕たちはなんて運がいいんだ!」
「はい! これも暗黒神様と使徒様の御威光です!」
 いや、僕にそんなものはないから! 勘弁してよ!


 

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