クランを追い出されたのでクランを作って最強になる

なんじゃもんじゃ

005

 


「ど、ど、ど、ど、どうしたんだ!?」
 黒いマントを頭から被ったユニクス様が僕の姿を見て盛大に驚く。
「ユニクス様……僕……疲れました……パンとソーセージを買ってきました……あとはご自分で……」
 僕はそのままベッドに倒れ込んだ。
 ユニクス様は死んだように倒れ込んだ僕の回りをぐるぐるおろおろするけど、僕も疲れ果ててユニクス様を構う余裕がない。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「いったい、何があったのだ?」
 少し落ち着きを取り戻したユニクスはゼクスが眠るベッドの縁に腰を下ろす。
「ん? これは……」
 寝ているゼクスのすぐ横に置いてあったリュックサックの口からチラッと見えた何か。
 それはハグレが残した銀の腕輪であった。


「……まさか……」
 ユニクスにはその銀の腕輪から漏れ出す力を感じ取る。
「やっぱりだ。そうすると、この頬の傷は……ふふふ、我の見込みに間違いはなかったのだ! まさかこんなに早く使徒を倒すなんて!」
 その日の夜は遅くまで奇声にも似た笑い声がどこからか聞こえてきたとか……。


 落ち着いたユニクスはベッドで死んだように眠っているゼクスの額に手をかざす。
「ふむふむ、やっぱり下級享楽の堕天神ユパの使徒と戦ったんだね。よく生きて帰ってきた。ゼクスはいい子だね」
 使徒は全てを神に捧げる契約をしている。
 その中には記憶も含まれていて、ユニクスはゼクスの記憶を見ることができるのだ。
 ただし、それは神域内だけの話である。
 今のユニクスの神域はボロボロの家とわずかな庭だけであるが、その中であれば使徒であるゼクスの全てを知ることができるのだ。
「ふむふむ、うんうん。明日になったら驚くだろうな~。楽しみだな~」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌朝、朝日が昇ると僕は目を覚ます。
 いつもは朝日が昇る前に目が覚めるけど、ハグレとの戦いの疲れがあったので朝日が顔にあたった眩しさで目を覚ました。
「あ、寝坊した! っ!?」
 上半身を起こそうとしたら躰中に激痛が走って起きられない。


「起きたか、ゼクス」
 僕のベッドの横で椅子に座っていたユニクス様が僕を覗き込む。
 黒いマントを頭から被っているけど、覗き込まれるとさすがに顔が見える。
 ユニクス様は浅黒い肌に真っ黒な髪の毛、そして漆黒の瞳の美少年。僕と同じ黒髪黒目だ。
 原初の神や大神と言われているだけに、神々の中でも最も古くから存在する神なんだ。
 そんなユニクス様が10歳ほどの少年の姿なのだから、僕も最初は本当に神様なのか疑った。


「ユニクス様! 今、朝食を作ります!」
 ユニクス様に朝ご飯を作らないとと思った。
「朝食など後でよいぞ。まぁ、その体では朝食どころではないだろう」
 ユニクス様の指摘通り、僕の躰は指を動かすのも厳しい状態だ。
「うっ……申し訳ありません……」


 ユニクス様は机の椅子に座り買い置きのパンを齧る。
 もぐもぐと咀嚼すると僕の方に振り向く。
「そう言えば、ゼクスが持ち帰った腕輪なんだけど~」
 腕輪と言われて一瞬分からなかったけど、昨日のハグレが消えた後に落ちていた銀の腕輪のことを思い出した。
「はい、ハグレに襲われて必死で戦ったんです。そしたらあの腕輪を落としたんです」
「あれね、使徒の神器だよ」
「え? 使徒? 神器?」
 魔物が使徒なんて僕には理解が追いつかなかった。
 だって、魔物なんだよ? なんで魔物が神の加護を持っているのさ? 何で魔物が使徒なんだよ?


「魔物だって神の加護を得ることはできるんだよ。まぁ、魔物に加護を与えるのは堕天神なんだけどね」
「だ、堕天神……」
 意外な事実に僕の頭の中で思考がぐるぐる回っている。


「堕天神はね、天上界を追い出された神の総称なんだよ」
 ユニクス様は堕天神のことを語った。
 そして僕たち使徒は堕天神の使徒と必ず戦うことになるから覚悟しておくようにと言う。
 ユニクス様はソロモンの天支塔に入りだして二回目で堕天神の使徒が現れるとは思ってもいなかったので、そのことを話していなかったそうだ。
「だって、難しい話を一度にしてもゼクスは覚えきれないだろ?」
「……ごもっともです」
 たしかに、難しい話をされると知らない内に寝ていたりする。
「だから少しづつ教えていこうと思っていたんだけど、堕天神の使徒が現れるのがちょっと早すぎたね」
 一層に堕天神の加護を得た魔物が現れるとはさすがのユニクス様も思っていなかったと、ペロっと舌を出しておちゃらける。


「まぁ、今は躰を動かせないから色々と教えておこうかな。寝たらだめだからね?」
「……」
 そこからはユニクス先生のソロモンの天支塔講座が始まった。
 ユニクス様は時々パンを齧ってお腹を膨らます。
 僕はベッドの上でユニクス様の話した内容を理解しようと必死だった。


「そんなわけで、今回の使徒戦に勝利したゼクスは大量のWPを得ているはずだから。やったね!」
 通常の魔物と違って使徒になった魔物を倒すとWPが半端なく増える。
 CPも多く入るけど所属クラン員が僕一人なのでCPが多くてもあまり関係はない。
 CPはクランランクのアップダウンにしか関係しないから、たった一人のクランであるナイトユニクスにはあまり関係のない話なんだ。
 ユニクス様に促されてクランカードを見てみると、なんと35,340WPもあった!
「えっ!? こ、こんなに!?」
「使徒魔物は美味しいだろ? まぁ、使徒になっただけあって普通の魔物よりもはるかに強くなるけど、ゼクスには我の加護があるんだ。これからもバンバン使徒を狩っちゃおう!」
 そんなに簡単に狩れるのであれば誰も苦労はしない。
 それに今回は生き残ったけど、次も生き残れる保障なんてないのだから。


「我の加護があるから明日には普通に動けるだろうが……」
 ユニクス様が話ていると屋根に何かが当たる音がする。
 その音は次第に数を増やし、そして音も大きくなる。
「雨、か。この雨は数日続きそうだ。丁度良い、ゼクスも二・三日ゆっくりと休むといい」
「……はい」
 素直に躰を治すことと、休みをとることにした僕はそのまま目を閉じる。


 雨はユニクス様が言ったように雨脚を強め翌日も降り続いた。
 そして、さらにその翌日も雨は止まなかった。
 僕とユニクスが住む家はボロ家なので、あちこちから雨漏りがする。
 いくつもの容器が雨が漏る床に置かれ、トンチンカンと色とりどりの音を奏でる。


 さすがに三日目ともなるとなんの問題もなく躰を動かすことができた僕は食料の買い出しと消耗品の買い足しをすることにした。
 消耗品はともかく、食料品は切実な問題なので雨の中でも買い物に行く必要がある。
 かなり激しい雨の中、八百屋、肉屋、パン屋を回る。
 雨なのでどの店も客は少ない。
 僕だって雨の中、買い出しなんかしたくないけど、食べ物がないから仕方なく外に出た。


 買い物を終えて石造りの街並みから木造の建物が増え始めた時、地面に何かが落ちているのに気がついた。
 近づいてみるとそれが人だと分かった。
「え? 行き倒れ?」
 僕よりも小柄な赤毛の少年が通路脇に倒れていた。
 雨なのもあるけど、街の外れなので人通りが多くないので、助け起こす人もいない。


「おい、君。大丈夫か?」
「う……」
 生きているようだ。
 燃えるような赤毛の濡れ具合を見るにそれなりに長い間、雨の中にいたのがうかがえる。
「……仕方がないな。連れていくか」
 僕だっていつ行き倒れになるか分からないし、ユニクス様に会っていなかったら既に行き倒れていたかもしれない。


 

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