クランを追い出されたのでクランを作って最強になる
001
天上界と地上界、そして地底界を繋ぐ塔。
人々はそれをソロモンの天支塔と呼ぶ。
天上界は神々が住まう世界。地上界は人間たちが住まう世界。地底界は魑魅魍魎が住まう世界だ。
そして地底界に住まう魑魅魍魎は暗くて閉鎖的な地底界よりも広い地上界をその手に入れようとしてソロモンの天支塔を登ってくる。
人々はソロモンの天支塔を登ってくる魑魅魍魎を魔物と呼ぶ。
過去に地上界は魔物の侵攻によって壊滅的な被害を負った歴史がある。
その時に地上界を救うために神々が人間に力を与えたのだった。
神々に選ばれ、神々と契約をした者が魔物を討伐する力を与えられる。
そして選ばれた者はソロモンの天支塔を登ってくる魔物と戦う使命を与えられる。
人々はその者を使徒と呼ぶ。
神々に選ばれ契約した使徒は特殊な力を与えられる。
それが使徒の証でもあるのだ。
「おい、ゼクス」
ゼクスと呼ばれたのは僕だ。ゼクス=アスタリオ、田舎のコウヘイゲン村出身のヒューマン。
最近、成長が止まったのが少し悲しい165㎝で、鍛えているつもりでも細身で頼りなさげな少年なのは見なかったことにしてほしい。
このソロモンの街において、非常に珍しい黒髪黒目の僕は下級剣神を祀るクラン『ソッポムガーデン』に所属して半年の15歳。
そして僕を呼んだのは『ソッポムガーデン』をまとめる使徒ガランさんだ。
「はい、ガランさん、なんでしょうか?」
「お前クビだ」
「え?」
「すぐに荷物をまとめて出ていけ」
僕は呆けるしかなかった。
これまで『ソッポムガーデン』の為に一生懸命に雑用をしてきたのに、いきなりクビと言われても理解が追いつかない。
「な、何故ですか!?」
「役立たずをいつまでも置いておくほどソロモンは甘いところじゃねぇんだよ!」
ソロモンの天支塔に連れて行ってもらっていないので、戦闘に関しては役立たずというよりも分からないはずだ。
雑用に関しては少なくても最近は失敗もしていないので、クビになる意味が分からなかった。
「おめぇがいると新人を入れられないんだ。さっさと出ていけ」
何それ? ソロモンの天支塔に入ってもいないのに、なんでそんなこと言うんだろうか?
クランには規模によって所属人員の上限がある。それは知っている。
下級剣神のクランである『ソッポムガーデン』のクランランクは十段階あるうちの下から二番目のランク2だ。
だから所属できる人員は15人までなので、新人の入れ替わりはかなり頻繁に行われている。
「で、でも、僕はまだソロモンの天支塔にも入っていないのにクビはないですよ!?」
「うっせーっ! ごたごた言ってるとたたき出すぞ!」
ガランさんは使徒とは言え、性格はかなりガサツだ。
だからたたき出すと言われればたたき出されるのは分かる。
しかし僕だって納得がいかないんだ。
ソロモンの天支塔に入って役に立たないと言われるのならともかく、何もしていないのに役立たずと言われるのは納得がいかない。
だから僕は必至で考え直すように頼んだ。
「うっせんだよ!」
ガランさんはいきなり僕を殴り飛ばした。
そして二度、三度と僕を蹴る。
下位クランとは言え、クランリーダーであり、使徒であるガランさんの力は僕の及ぶところではない。
そして後から知ったけど、気絶した僕をゴミを扱うように裏路地に捨てたのはガランさんだ。
ゼクスが気がついた時には無造作に捨てられた荷物を乞食が漁っているところだった。
その乞食を追い払おうとして、反撃を喰らう。
そして何もかも持ち逃げされた僕は途方に暮れる。
ソロモンの天支塔に入るにはクランに所属していなければならず、田舎から出てきたばかりの僕を入れてくれるクランはなかなか見つからなかった。
そんな中、たまたま新人を募集していた『ソッポムガーデン』になんとか潜り込めたのが半年前の話だ。
それ以降、僕は『ソッポムガーデン』の雑用係として働いてきた。
いつかソロモンの天支塔へ連れて行ってくれると信じて真面目に雑用をこなした。
「何だよ!? 何でクビなんだよ!?」
裏路地に自分をボロ雑巾のように捨てたガランを憎むように低く唸る。
既に日は暮れて建物の隙間からは綺麗な星空が見える。
「綺麗な星だな……」
それに比べ僕の姿はなんて汚らしいのだろう。悔し涙が頬を伝うのが分かった。
「ククク、力がほしいか?」
急にかけられた声に僕はビクッとしてしまった。
「誰!?」
また乞食かと身構える。
暗がりから何かが近づいてくる。
それはまるで死神のような黒いマントを羽織っていた。
どう見ても怪しいし、ヤバそうな感じがした。
「ソロモンの天支塔に入りたいのだろ?」
「……どうしてそれを?」
「ククク、我にはお見通しじゃ。だが、ソロモンの天支塔に入るにはクランに所属しなければならない」
「……」
黒マントの何かは全てをお見通しだという。
「だが、クランを追い出されて途方に暮れていたな?」
一体この黒マントは何者なのか?
「我と契約をすれば使徒としてクランを立ち上げることが可能だぞ」
「えっ!?」
クランを立ち上げることができるのは使徒のみ。
つまり、目の前の黒マントは自分が神だと言っているのと同義なのだ。
「あなたは……神なのですか?」
「そうじゃ、我は神。我が名は―――」
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