カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】

なんじゃもんじゃ

024 対応

 


 十五層のボス部屋ではランクEのファイティングフロッグがイレギュラーとして現れた。
 他の魔物は情報にあったままの陣容だ。
 ファイティングフロッグは二足歩行のカエルで格闘が得意な魔物だ。しかも長い舌を第三の腕のように使いパンチのような攻撃もしてくる。
 しかし、将磨たちの方にも格闘が得意な頼りになる奴がいた。


「テン。ファイティングフロッグの相手を!」
 ファイティングフロッグはファイティングポーズをとりボクサーのような構えをしていた。
 対峙するテンは右半身をやや引き、空手家のような構えだ。
 動のファイティングフロッグに対し静のテンという構図である。
 ファイティングフロッグが左手でジャブを撃つとテンは躱すのではなく、左手でファイティングフロッグのジャブを受けた。左右のコンビネーションで攻めるファイティングフロッグだが、テンはそれをことごとく躱すか受けるのだった。


 テンの口元が緩んだ。ファイティングフロッグはそれを見て馬鹿にされたと思ったのか、左右の連打に口から伸びる舌を追加した。
 しかし、テンはその三本目の腕とも言える舌での攻撃までも見切ってクリーンヒットをもらわない。


 別の戦いを見ると、霧子がオークリーダーへ三本目の矢を放ったところだった。オークリーダーの胸には二本の矢が刺さっていて、三本目が喉にぶすりと刺さった。
 さすがのオークリーダーも急所である喉に矢が刺さってはなす術もなく、叫び声をあげることも許されずに倒れた。
 美月はオークの棍棒を盾で受け流し、オークの体勢がくずれたところに斧を叩き込む。まったく危なげなくオークを屠る。
 豚太郎が率いた部隊がゴブリン種を倒して回る。いつものように遠隔攻撃のあるゴブリンを優先的に倒していくのだ。
 そして将磨もオークに【毒魔法】を放つ。麻痺毒で体の自由を奪い、致死毒でダメージを与える。致死毒はオークを死に追いやるには時間がかかるので、もう一体のオークを倒した美月がトドメを刺した。
 将磨の致死毒はレジストされることが多い。だからレジストがあまりされない麻痺毒で抵抗力を弱めてから致死毒を放つことが多くなっている。


 ファイティングフロッグとテンの戦いに目を戻す。
 ファイティングフロッグの凄まじいラッシュを受けて防戦一方のテン。しかしその目はまったく動じていない。ファイティングフロッグの攻撃をしっかりと見極めているようだ。
 ファイティングフロッグが舌で殴ってきたところでテンが動いた。その舌を掴むと力一杯引っ張り、ファイティングフロッグの顔がグイっとテンに近づいてきたところに回し蹴りを放つと、ファイティングフロッグの顔面にクリーンヒットした。
 蹴り飛ばされたファイティングフロッグだが、テンが舌を持っているために吹き飛ばされることなくその場にとどまったが、それはテンの射程内に今もいるという意味である。
 テンは足がふらついているファイティングフロッグに正拳突きを放つが、ファイティングフロッグは辛うじて手でガードした。しかしその正拳突きでガードした右腕が折れたファイティングフロッグは思わず「ゲロッ」と声を漏らした。


「これでお終いだ!」
 テンは右腕で三連正拳突きを放った。テンの左手に持たれているファイティングフロッグの舌が千切れて吹き飛んだ。
 これにより戦いは終わり、全ての魔物がカードになった。


「格闘系の魔物だとテンの格好の餌食だったね」
 美月がテンの肩をポンポンと叩きながらテンを褒めた。
「テンのパワーとスピードはランクEの魔物では相手にならなくなっているね」
 テンは間違いなく能力が上がっているのを将磨は感じていた。それは将磨たちが成長するように、テンも成長している可能性を示していたのだ。


 十五層の探索を終えて、〖探索者支援庁〗で林原への報告を終えた将磨たちは数日後に迫った福井行きに心を移していた。
 武器と防具はメンテナンスをするために、〖探索者支援庁〗の建物内にある装備をメンテナンスする専門の窓口に預けて、メンテナンスをしてもらってから福井へ送ることにした。
 この装備をメンテナンスしてくれる窓口は売店に併設されていて、割安でメンテナンスをしてくれるので初心者から中堅探索者まで幅広く利用をしている施設だ。
 ただ、上級探索者になると特殊な武器や防具を使うことが多いので、そういった特殊性のある武器や防具は〖探索者支援庁〗の外で個人経営の店や企業にメンテナンスを頼むのが普通だ。上級者用の武器や防具は生産者にメンテナンスを頼むのが慣例化しているのだ。


 将磨たちは現在、〖探索者支援庁〗のそばにあるファーストフード店に入って食事がてらの雑談中である。
 紙の容器を持ち上げてストローに口をつけ、容器の中のジュースを飲む霧子の所作に見惚れながら将磨もジュースを飲んだ。
「今以上の武器や防具はまだ必要ない層だけど、将磨っちがいるとイレギュラーが多いから、武器や防具の買い替えもそろそろ考えないといけないね~」
「またそんな言い方をする。美月はデリカシーがないよ」
 霧子は美月が将磨のせいでイレギュラーが多いと言うのを窘めた。
「いや、百瀬さんの考え方でいいと思うよ。先手、先手で武器や防具をよい物に替えていくのは間違っていないと思うんだ」
 今後はより強い魔物が出てくることは間違いないだろうから、武器や防具だけでもいいものに変えていくのはよいことだ。
 普通は十一層から十五層を踏破するのに半年から数年単位の時間がかかるが、将磨たちはあっという間に駆け抜けてしまった。
 〖探索者支援庁〗のからすれば、将来有望で、なおかつ魔物のカードというオンリーワンのアイテムを持ち帰る将磨たち三人は重要人物だ。しかし、最近の〖探索者支援庁〗と将磨の関係はあまりよい物ではない。
 言うまでもなく、〖探索者支援庁〗が約束を反故にしてカードの販売を前倒ししようとしているからだ。
 将磨たちの担当受付である、林原もいつもの刺々しさは鳴りを潜めている。あまり将磨たちを刺激するなとでも言われているのだろう。


「それなら、父の会社で上級探索者専用装備を扱っている部門があるから、聞いてみようか?」
「うん、そうしてくれるかな。アイテムの買い取り担当の人を紹介してくれると助かるよ」
 将磨は霧子からの思ってもいなかった提案を快く受け入れるとともに、この際だからついでではないがアイテム買い取り窓口の紹介を頼んだ。これは言うまでもなく、〖探索者支援庁〗が将磨との取り決めを反故にした時のためのものだ。


 〖探索者支援庁〗は非営利組織だが、活動費はアイテムの販売益より出ている。そのため、〖探索者支援庁〗は法人や個人へアイテムを売っている。このことから、探索者はアイテムを〖探索者支援庁〗以外に売ることは許されていないのだ。
 しかし、探索者が〖探索者支援庁〗へ売ったアイテムの転売先を探索者が指定することはできる。将磨は〖探索者支援庁〗が約束を反故にするのであれば、カードの転売先を指定するつもりなのだ。
 〖探索者支援庁〗との契約では、将磨がカードを供給するにあたっての扱い量について決められているが、転売先のことは明文化されていない。これは木崎がもしもの場合に備えて将磨に有利な契約内容にしたのだ。木崎の親心であり、探索者を保護する〖探索者支援庁〗の基本理念に沿った内容になっているのだ。
 当然、将磨もこれについて認識しているので、〖探索者支援庁〗が約束を反故にすれば、将磨も転売先の指定をするつもりなのだ。


「それは構わないけど、例の件?」
「そう。例の件だよ」
 もし、ヤワタ生産所がカードについて興味を示さなかった場合、転売先を探す必要はあるが、最悪は霧子や美月にしか売れない指定もできるだろう。
 しかし二人はパーティーメンバーなので、すぐに対応されてしまうのは容易に想像できた。だから企業の方が将磨としてはいいのだ。
「面倒をかけてごめん」
「いいのよ、そんなこと」
 二人は目と目を合わせ見つめ合う。なんだかいい雰囲気だ。しかし、こういう時にはおじゃまむしが出てくるものだ。
「ゴホンッ!」
「「……」」
 美月おじゃまむしが咳ばらいをすると、二人が気まずそうに美月を見た。


「えーっと、私はじゃまかな?」
 将磨は「はい」と答えたかった。しかし、そう答えるわけにはいかない。
 霧子は気まずそうに「そんなことないよ」と言うが、将磨といい雰囲気になっていたところだったので少し残念な気持ちもあった。


 

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コメント

  • 茶々丸

    面白いです!
    更新楽しみにしてます

    0
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