カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】

なんじゃもんじゃ

022 契約

 


 福井遠征の準備はほぼ済んでいる将磨だったが、女性陣の買い物に付き合うことになっている。
 もうすぐクリスマスなので街中はクリスマスムードに染まっている。
 週間天気予報ではクリスマスはもしかしたら雪になるかもとあった。
 ホワイトクリスマスなんてロマンチックだな、とは将磨は思わない。
 雪が降れば当然のことながら寒いし、雪道を歩くのも慣れていないので外に出るのが面倒になる。
 だから純粋に雪は降らないでほしいと思っているのだ。


 約束の時間に間に合うように待ち合わせの場所に行く必要はない。
 将磨の家で集まってから出かけるのだ。
 将磨としてはボロアパートで霧子の家のような豪華で座り心地の良い応接セットもないので、どこか外で待ち合わせてと主張をしたが、美月に却下された。


 服やお菓子などを買うので二人の誕生日のプレゼントを買った栄ではなく、ショッピングモールへ行くことになっている。
 ショッピングモールなら服もお菓子も大概の物はあるからだ。
 せっかくの買い物だから栄の地下街やデパートでも良かったが、ショッピングモールに決まった。


 ピンポーンと呼び鈴が鳴る。
 二人が来たと思いドアを開けるとそこには海野の姿があった。
「神立君、おはようございます」
「……おはようございます」
「申し訳ないのですが、少しお話をさせてもらえればと」
「えーっと、長くなりますか?」
「予定が、あるのでしたら改めて寄らさせてもらいますが」
 海野はそう言うがかなり急いでいるようである。


「八幡さんと百瀬さんがもうすぐ来ると思いますが、構いませんか?」
「神立君が良ければ問題ありません」
「……どうぞ」
 一体、どんな話なのかと身構えてしまう。
 四人がけのテーブルの椅子に座ってもらい、コーヒーを淹れる。
 海野は「お構いなく」と言うが、そうもいかないだろう。


 暫く気まずいと思った時、呼び鈴が鳴る。
 今度こそと思い将磨はドアを開ける。
 そこに二人の姿を見た将磨はこれで気まずい雰囲気ともおさらばできると表情をぱぁっと明るくする。
 そんな将磨の表情を見て霧子もにっこり微笑む。
「おっは~、将磨っち」
「おはよう、神立君」


 将磨が二人に挨拶をしようとした時、二人の表情が強張る。
 そして視線が将磨の後ろに固定されているのが分かった。
「八幡さん、百瀬さん、おはよう」
 将磨の後ろで二人に挨拶をする海野に視線が固定されているのだ。


 そして二人は盛大な勘違いをした。
 簡単に言うと海野が将磨のアパートに泊まったと勘違いをしたのだ。
 朝の八時半過ぎだったので余計に勘違いをされてしまったようだ。
 そうなると美月は興味深々で、霧子は涙目で将磨に詰め寄る。
 二人が勘違いだと気付くのに少々の時間を要し、将磨は朝からとても気疲れするのだった。


 海野は至って平静で、三人のコントのようなやりとりを見守っていた。
 将磨からしたら「アンタが原因なんだよ!」と言いたかった。


「本日、私がこちらに寄らせて頂いた目的は、カードの販売についてです」
 三人は平然と話す海野を恨めしそうな表情で見つめる。
「取り決めでは三人が十八層に到達してからカードの販売について発表し、発表から一カ月程度後にカードの販売をする予定でしたが、どうも前倒しになりそうなのです」
「どういうことでしょうか?」
「年明け早々に、遅くても二月からカードの販売が始まる可能性が高いのです」


 海野は将磨たちの安全を考えて将磨たちが十八層に到達してからカード販売の発表をする予定だったのにと申し訳なさそうに謝罪をする。
 そして将磨たちは感じ取った。
 海野よりも地位の高い人が圧力をかけているのだと。
「最近、木崎さんがみえなかったようですが、その件と関係が?」
 海野は勘が良いなと苦笑いをする。
「木崎にはできるだけ発表が遅くなるように動いてもらっています」


 将磨はカードの供給者であり、唯一の存在だ。
 その将磨との合意事項を勝手に変更するわけにはいかないと、今回、海野が謝罪にきた。
 海野もこれで話が収まると思っていた。
 相手は高校生なのでそこまで深く考えないだろうという打算があったのだ。


「神立君……」
「将磨っち、どうするの~?」
「海野さん、今回のカード販売の件、僕は非常に不満です」
「……」
 海野は将磨の言葉に驚いた。
 まさか将磨から不満という言葉が出るとは思っていなかったのだ。


「今回の〖探索者支援庁〗の行いは僕たちを危険に曝すという意味に取れます。つまり重大な契約違反だと僕は思います」
「っ!?」
「〖探索者支援庁〗が僕との合意内容を無視して〖探索者支援庁〗の理論を押し通すのであれば僕にも考えがあります」
「そ、その考えとは?」
「今、それを言うつもりはありません。とにかく、合意事項の履行をお願いします」
 将磨の主張は正論であり、〖探索者支援庁〗の方が合意に至った約束を反故にしようとしているのだから何も言えない。
 話し合いというほどのこともないが、話し合いは十五分ほどで終わり海野は帰っていった。


「……どうなるのかな~?」
「なるようになると思うよ」
 もし将磨の主張が無視されたなら、将磨も黙っているつもりはない。
 将磨の安全は即ち霧子と美月の安全にも繋がるのだから、なし崩し的にされてはいくら温厚な将磨でも怒りを覚える。


 もし〖探索者支援庁〗が発表を強行するのであれば将磨は〖探索者支援庁〗へのカードの供給を絶つつもりだ。
 【カード化】が国家間のパワーバランスに関係すると言い出したのは〖探索者支援庁〗であり、それに関しては自分の身の安全に関わるからと面倒な話も受け入れてきた。
 しかし〖探索者支援庁〗が将磨や霧子、美月の安全を無視するのであれば将磨は徹底的に戦う覚悟だ。


「それで、どんな考えがあるの~?」
「そうなったら教えるよ。やりようはあるから」
 一応、カードの供給に関する契約だったので契約に関する勉強をした。
 勉強と言ってもネットで調べる程度だが、その際に色々と調べていた。
 まさかこのような話が出てくると思ってはいなかったが、調べておいたことが役に立つかもと思っている。
 そうならないことが一番良いのだが。


「でも凄かったね。海野さんもタジタジだったよ」
「大したことないよ」
「大したことあるよ!海野さんにぴしゃりと物を言うところなんてとてもかっこよかったよ!」
「あははは、そうかな?」
 美月はこの二人は、と思いながら生温かい目で見守る。
「ほら、二人とも買い物行くよ!」
 こともなかった。


 買い物は将磨が荷物持ち。
 そして霧子と美月は二人して服選びを楽しんだ。


 <霧子>
 チェック柄のマフラー
 黒のレディース用ダウンジャケット
 薄い青色のシャツ
 牛革の手袋
 ジーパン
 ファー入りのブーツ


 <美月>
 グレーのマフラー
 ベージュ色のロングコート
 紫色のセーター(Vネック)
 ラムレザーの手袋
 ジーンズ生地のホットパンツ
 網タイツ
 黒い革のブーツ


「とりあえず~、初日分は決まったね~」
「うん!」
 将磨は「えっ!?」と二人を見る。
 まだ買い物をするのかとうんざりする。


 次に向かった先はランジェリーショップだった。
 美月は「えへへ~見たいでしょ~」などと将磨をからかう。
 将磨も見たいが、「見たい」などと言えるわけもなく、近くのベンチに座り二人を待つ。


 結局、霧子と美月の買い物は大きな袋がいくつもにもなった。
 それを抱えて帰るのも大変なのでタクシーで帰ることになった。
 歩けば三十分程度のところなので行きは三人で歩いてきたが、流石に大きな袋がいくつもあるのでタクシーを頼むことにしたのだ。


 美月と霧子をそれぞれの自宅前で降ろして将磨が最後になった。
 こうしてタクシーを使うと自動車の便利さが身に染みる。
 早く自動車を買おうと思う将磨であった。


 

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