カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】

なんじゃもんじゃ

020 コマンダー

 


 テンの剛腕がうなるとゴブリンナイトが吹き飛ばされる。
 金属製の鎧をぐしゃりと大きく変形させるほどの威力なのでゴブリンナイトはそのまま立ち上がってくることなくカードになった。


「うへ~一発か~、テンは相変わらず凄いパワーだねぇ~」
「美月だってパワー凄いよ」
「うん、そうだね」
「なんか、女の子に対する褒め言葉じゃないよね?」
 三人はあははは、と笑い合う。


 ゴブリンアサシンのゴブフォーはゴブリンシーフの後方にスーッと現れたかと思うとゴブリンシーフの首を切りつける。
 大量の血が噴き出すが、そのころにはもうゴブフォーはそこにはいない。


 ゴーッと音を響かせ火の槍が飛んでいく。
 ゴブリンハイメイジのゴブロクの火魔法だ。
 ゴブリテイマーの胸に命中した火の槍は胸に命中してゴブリンテイマーの全身を火で包む。


 ゴブリンたちの活躍を見て将磨も負けていられないと毒魔法を放つ。
 オークを遅効性の致死毒にする。
 毒に侵されたオークの動きは明らかに悪くなる。
 しかもスリップダメージも与えているので対峙するゴブワンもパワーで上回るオークと戦える。
 恐らく、同じランクFの魔物でも『F+』や『F-』のように差があるのだろうと将磨は考えている。
 しかしこれがゴブリンアサシンのゴブフォーになるとスピードで翻弄できる。
 しかしゴブフォーでは急所を突かない限り致命的なダメージを与えるだけのパワーがないのも事実でじり貧であった。
 だから将磨の毒魔法でオークを弱らせるというのは非常に有効な戦術である。


 十一層は森と湖のエリアだ。
 階段から十一層へと入るとすぐに木が乱立する森に入る。
 出てくる魔物はオーク、ゴブリンナイト、ゴブリンアサシン、ゴブリンスカウト、ゴブリンハイメイジ、ゴブリンコマンダー、ビックキラーキャット、エヴィルバイパー。
 全てランクFの魔物である。


 本来であればオークのような太くて長い棍棒を使う魔物には森のような地形は不利だと思われるが、木と木の間は広く棍棒を振り回しても余裕がある。
 また、将磨のような魔法を扱う者や、霧子のような弓を扱う者には隠れやすいので戦い易い場でもある。
 勿論、木陰から魔物が奇襲してくることも考えなければいけないが、霧子の索敵範囲は広いし、後方にゴブリンスカウトのゴブスリーを配置しているので死角は少ない。


 オークとの戦闘は霧子、美月、テンは問題ない。
 影丸も問題なくオークを拘束できるが、決定打のなさは相変わらずである。
 ミドリとダークはかなり良い戦いができる。ただし、勝ててもかなりのダメージを負ってしまう。
 ゴブリンナイトのゴブワンとゴブツーはパワーで劣り、ゴブリンアサシンのゴブフォーは決定打に欠ける。
 ゴブリンスカウトのゴブスリーは支援攻撃型だし、ゴブリンハイメイジのゴブロクは魔法だけあって二発から三発当てれば決着がつく。


 問題はゴブリンコマンダーのゴブゴの使い方だ。
 ゴブゴはパワーやスピードはあまりない。
 テイマーの上位種だけあって攻撃にも防御にも向かない。
「……試してみるか」
 将磨はゴブゴに他のゴブリンたちを率いらせてみることにした。


「ゴブゴ、ゴブリンたちを率いてオークを倒せ!」
「フゴ!」
 ゴブゴは「フゴフゴ」などと声を出して他のゴブリンたちに指示を与える。
 そうすると何とオークが振り回す棍棒をゴブワンがしっかりと盾で受け止めたのだ。
 いつもなら吹き飛ばされるゴブワンだが、オークの棍棒を複数回に渡って受けてもしっかりと受け止めている。


「へ~、能力が上がっているようだね」
「多分、俺のカード化の強化以外にゴブゴの統率下にあることで追加の強化があるんじゃないかな?」
「もしそうなら、あっ、ゴブフォーの短剣もかなりのダメージを与えているね」


 ゴブゴに率いられたゴブリン軍団はどうやら通常よりも強くなるようで、オークを一蹴した。
 それを見た将磨たちは嬉しそうに話し合う。
「今後はゴブゴの下にゴブリンたちを置いて戦いを指揮してもらおう」
「そうだね、戦闘が早く終わるし、神立君の指示もしっかり理解できているみたいだから、いいと思う」
「よ~~し、ゴブリンたちに負けないように頑張らないとね!」


 テンと影丸は今まで通り将磨が指示するが、他のゴブリンはゴブゴの指揮下に置く。
 こうして快進撃をする将磨たちのパーティー。
「そ~う言えば~、パーティー名を決めないとね~。将磨っちはもう考えた?」
「まだだよ……」
「十層を越えたパーティーにはパーティー名の登録が許されるなんて思っていなかったからね」


 十層を踏破したのは十一月に入ったころなので一カ月以上パーティー名を保留している三人。
 そこにゴブスリーが何かを持ってやってきた。
「ん?草?……もしかして薬草か?」
「フゴフゴ!」
 頷くので薬草で間違いないようだ。


「おー、ゴブスリーは薬草採取までできるんだ~偉いね~」
「フゴフゴー」
 褒められて自慢気なゴブスリー。
 ゴブリンもこのランクになると声を出せるし感情や表情も豊かになる。


 十一層を奥へ奥へと進む。
 そうすると湖が出てくる。
 この湖の周りには先ほどゴブスリーが採取してきた薬草が多く自生しているので探索者の姿があちらこちらに見える。


 そんな中に将磨たちが行けばどうなるのか。
 言わなくても分かるだろうが、目立つのだ。
 真っ赤な灼熱鉄鋼製の全身鎧の美月だけでも目立つのにゴブリンたちとミドリ、ダークを従えているのだから完璧に目立つ。
 探索者が将磨たちの方を見て指を指している姿も見える。


 将磨はスキルの重要性からあまり多くの人に身分を知られるわけにはいかない。
 だから木崎より帽子とサングラス、そして口元を隠すスカーフを与えられている。
 それらを身に着ければ顔は分からないだろう。
 霧子にも同じ物が与えられているので顔は隠せている。
 ダンジョン内の探索には不向きと思われるが、意外と邪魔にならない。
 しかし他の探索者からは間違いなく浮く姿である。
 また、美月に至ってはフルフェイスの兜を被っているので元々顔出しの不安は少ない。


 将磨たちは薬草採取よりも先に進むことを優先した。
 薬草はポーションの材料なのでお金になるが、カード化のおかげでお金には困っていない。
 木崎が〖探索者支援庁〗でカードの販売を始めるというので一枚当たりの買い取り価格は下がったが、数を揃えれば問題ない。
 カードの価格が下がったことに抗議の声を上げた将磨だったが、あまり高いと初心者では買えないのでと木崎が頭を下げてきたので仕方がなく了承をした。
 それでも高値の花と言った感じの値段だ。


 基本的にカードの販売は戦力が不足がちな初心者への販売を考えている。
 ただし、ランクE以上のカードは初心者向けではないので買い取り価格もそこそこ高く設定するそうだ。
 そういったランクがある程度高いカードは初心者相手の販売ではなく、それなりの探索者相手の販売になってくるからだ。


 湖の畔を慎重に進む。
 湖だけあって水生の魔物もいるからだ。
 ただし、湖に入らなければ水生の魔物に襲われることはない。
 だから湖には入らない。


 そんな将磨たちの前に五人の探索者が立ちふさがる。
「お前たちが召喚士か?」
 世紀末のような服装のいかつい探索者が一歩前に出て将磨たちに問いかける。
 将磨たちは緊張して身構える。
「ああ、違うんだ。〖探索者支援庁〗が魔物のカードを売り出すって噂が本当か聞きたいんだ!?」
「……」
「お、俺たちはイビルキャットのカードがほしいんだ!あの毛並みをこの手で堪能したいんだよ!」
 いかつい探索者五人が体をクネクネさせイビルキャット愛を語るその姿はある意味恐怖である。


「え、あ……その……ごめんなさい。分からないです……さ、さようなら!」
「あ~まってよ~」
「あ、あの、ごめんなさーい」
 気持ち悪い探索者たちから逃げ出す将磨に続いて美月と霧子も逃げ出す。


「はぁはぁ。気持ち悪かった」
「気持ち悪かった。じゃないよ~。私たちを置いていこうとしたでしょ~?」
「本当ですよ!」
 美月と霧子に責められ謝りっぱなしの将磨。


 そんなこんながあったが将磨たちは十一層のボス部屋の前にやってきた。
 ボス部屋の前には二組の探索者パーティーが順番待ちをしている。
 その列に将磨たちも並ぶが、ゴブワンたちがいるので目立ってしょうがない。


 

「カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】 」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く