カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】

なんじゃもんじゃ

012 ゴブリン(X)

 


 日曜日、朝早くから〖名古屋第二 ダンジョン〗に入った三人。
 昨日は初めてのことだったので一層を踏破してダンジョンを出たが今日は既に四層にまで到達していた。
 魔物を倒すごとに霧子と美月は強くなっていくようだと将磨は感じ、実際に二人は一層のころと比較すると明らかに強くなっていた。


 グリーンバイパーを矢で射抜くとたった一矢でその命を奪う霧子。
 飛び掛かってきたイビルキャットを盾で防ぎ、僅かに態勢がくずれた隙をついて剣で首を切り付けてこれも一撃で決着をつけた美月。
 そして数メートル離れた場所からテンが拳を振り抜くだけでグリーンバイパーやイビルキャットの体の一部が吹き飛ぶのだ。
 魔物であるテンはともかく、霧子と美月の二人が異常なほど戦闘に馴染んでいるのはスキルのせいだろうか?と考える将磨だった。


 今のテンは腰蓑装備ではなく、将磨が〖探索者支援庁〗で革鎧を買い与えたことから傍から見れば普通の探索者に見える。
 革鎧よりも金属鎧の方が良いのではと言う将磨だったが、テンが動きが阻害されるような金属鎧より動きやすい革鎧の方が良いと言うので革鎧になっている。
 そして手には金属製のナックルが装備されており、格闘主体のテンには丁度良い武器だ。




 @ゴブリン(テン
 説明:ゴブリン十体を合体させたことで生まれた特殊個体。召喚者固定。
 レアリティ:不明
 残数:∞




 カードに戻るとテンはこのような表記となる。
 特殊個体は知っていたが、何と残数無限なのだ。
 しかも召喚者固定とあるので将磨以外にはテンを召喚することができない。
 事実、霧子や美月では召喚ができなかったので間違いないだろう。
 その強さだけでも異常なのは分かるが、カードの記載内容は皆を驚かせた。
 だから昨日は木崎と林原にこのカードを見せており、防具の購入に繋がっているのだ。


 戦いは霧子、美月、テンの二人と一体が行う。
 将磨はゴブリンアーチャーのゴブスリー、ゴブリンシーフのゴブフォーとゴブゴ、キラーバイパーのミドリ、ビックキラーキャットのダークなどを召喚し索敵を指揮し、霧子と美月が倒した魔物を解体して魔石を得るのだ。


 そうそう、ゴブリン系のゴブスリーやゴブフォーたちがテンを見た時に固まった。
 どうも自分たちと同種の存在だとは分かったようだが、テンの異様さに彼らの頭脳では理解が追いつかなかったようだ。
 二体ともテンを避けるというよりはリスペクトして配下ではないが配下的なポジションを受け入れた感じだ。
 ゴブリンの上位種よりもゴブリン十体を合成したテンの方が格上だというのがこの関係から分かる。とても面白いと思う将磨だった。


「ねぇ、ここがボス部屋なの?」
「ああ、ここが四層のボス部屋だよ」
「木が蔦によって繋がって門のような役割をしているのね?」
「中にはゴブリンテイマーと二体のイビルキャットがいる予定だよ」
 将磨の言った通り、ボス部屋の中ではゴブリンテイマーと二体のイビルキャットが将磨たちを待ち受けていた。
 今回はゴブリンメイジはおらず普通のボス戦が繰り広げられた。
 美月とテンが走って先行しイビルキャットを瞬殺すると霧子の矢がゴブリンテイマーの眉間に突き刺さる。


「あ~俺、何もできなかった……」
「過剰戦力のようですね」
「八幡さんも百瀬さんも強いからな」
「神立君のテンがとても強いから」
「まぁ、テンは強いけど俺自身はそれほど強くないからな……」
 微妙な空気が流れる。
 確かに将磨自身は強くない。ハッキリ言えば霧子や美月の強さが中堅クラスの探索者であれば将磨は初心者でも下の方の強さなのだ。
 だからカードの使い方が将磨の生命線であることを将磨自身は知っているのだ。


 本日、二層から四層のカード入手はゴブリン二十七枚、ゴブリンシーフ一枚、ゴブリンテイマー一体、グリーンバイパー四体、イビルキャット八体だ。
 霧子や美月が倒した魔物は魔石を回収しているのでランクHの魔石が四十九個、ランクGの魔石が十五個になっている。
 今のところ、魔物のトドメは霧子、美月、テンで均等に割り振っているが、希少であるゴブリンの上位種が出てきた場合はテンがトドメをさしてカードにしている。


 〖探索者支援庁〗に戻った将磨たちは林原に魔石の買い取りをしてもらう。
 その際、林原からカードの買い取り要請があったので将磨は手持ちで使う予定のないカードの中から林原の要望にそったカードを売る。
 その総額が千百五十万円にもなったので将磨よりも霧子や美月の方が驚いていた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 その頃、東京にある〖探索者支援庁〗の本庁舎内の会議室では日曜日だというのに幹部たちが集っていた。
「それではレアスキルである【聖騎士の心得】と【聖弓士の心得】が名古屋で同じパーティーで活動しているのだね?」
 〖探索者支援庁〗の大臣である仙谷寺せんごくじが報告を行った海野に対しオウム返しの質問をする。


「はい、二人にもう一人を加えて三人のパーティーで〖名古屋第二 ダンジョン〗にて探索者登録を行い、ダンジョン探索を始めたばかりです」
「何故名古屋ばかりなのだ?例のカードの召喚士も名古屋ではないか!?」
 同じく〖探索者支援庁〗の大臣政務官である荒井が明確な回答ができるわけもない質問をする。
 彼は仙谷寺と古い付き合いで問題が多く誰も大臣になりたがらなかった〖探索者支援庁〗を仙谷寺が任さることになった時から大臣政務官の任に就いている。
 国会議員の間では次の大臣だと言われている男である。


「分かりかねます。以前【聖騎士の心得】と【聖弓士の心得】を所持しておりました探索者は同じパーティーで活動することなく探索者を引退しておりますので、私どもには分からぬ力が働いたのではと個人的には思っております」
「そんな私見など何の役にも立たぬ。もっと科学的に立証された見解を聞きたいのだ」
 その場にいた者は荒井のこの発言に「こいつは何を言っているのだ?」という言葉を飲み込む。
 荒井が言うようなことが科学的に解明されるのであれば誰も苦労はしないし、それ以前にダンジョンがこの世界に出現したことも解明してほしいものだと皆が思う。


 さらに会議は進みそこでまた荒井が発言する。
「ところで、カード召喚士の氏名は何というのだ?」
「それは特一秘匿事項に該当しますのでお教えすることは出来かねます」
 荒井は海野のこの回答がとても不満だった。
 大臣政務官という大臣に次ぐポジションに就く自分にも開示されない情報は有ってはならないとまで思っているのだ。
 彼のその考えはある意味正しいが、現時点で大臣政務官には特一秘匿事項を知るための権限がないのも事実である。
 それを知っていて聞くのだから荒井の底意地の悪さが窺い知れる。


「大臣政務官である俺が聴いているのだ、答えられないはずがないだろ!?」
「大臣政務官には特一秘匿事項を知る権限がありません。そのことは荒井大臣政務官の方がよくご存じのはずですが?」
「ふん」
 荒井は鼻を鳴らしただけでそれ以上は何も言わなかった。
 探索者支援法には特殊な探索者を保護することが定められた条項がある。これが特一秘匿事項のよりどころだ。
 そして探索者を守るという概念は相手が国会議員であっても適用される。
 大臣は立場上知る権限があるが大臣政務官にその権限がないのは情報漏洩の危険性を最小限に抑えるための処置でもあるのだ。


 

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