カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】

なんじゃもんじゃ

010 スキル

 


 将磨は探索者として生きていくことを既に決めているので進路は決定している。
 しかし一般的な高校三年生は進学や就職のことで不安な時期だろう。
 将磨としては美月はともかく霧子は間違いなく進学するものだと思っていたので、昨日の話を聞いて霧子も探索者になることを希望しているのがとても意外だった。
(あんなに大きな家に住んでいるのだから八幡さんは金持ちなんだよな?だったら態々危険な探索者にならなくても良いのに。異世界が見たいと言っていたけど命がけだからな……)
 霧子の乙女心が分からない将磨だった。
 そして放課後、将磨は霧子、美月の二人と一緒に下校をする。
 その途中にあるファミレスに入ってドリンクバーを頼む。
「じゃぁ、いくね……ステータス」
 そう唱えることで自分のステータスが視界に浮かぶ。
 これが今の世界標準だが、このステータスを見るのには条件がある。
 その条件はスキルが発現したことだ。
「……」
「……」
「……」
 将磨と霧子が美月を凝視する。
 とてもゆっくりとした時間が流れる。
 美月の瞳に涙が浮かぶ。
 そんな美月を見て将磨と霧子はスキルが発現していなかったのだと判断し、慰めようと霧子が口を開こうとした瞬間、美月が叫んだ。
「やったーっ!あったよ!やったーーーっ!」
 当然、店員が飛んできて大声で叫んだ美月だけではなく、三人を注意をしていく。
 美月はというとチロッと舌を出す。とんだとばっちりを受けた将磨と霧子は美月を非難の視線で見る。
「それで、スキルはどんなだったの?」
 言いたくてウズウズしている美月が霧子に水を向けるが霧子はそれに乗らない。
「あーもう、言うわよ!」




 ■ 個人情報 ■
 百瀬美月
 人族 女 十八歳


 ■ スキル ■
 聖騎士の心得(一)




「……」
「その【聖騎士の心得】って……凄そうね……」
「そうでしょ~なんたって聖騎士よ、聖騎士!」
「神立君、【聖騎士の心得】がどんなスキルなのか知っている?」
「……」
 将磨は放心していた。
 それほどショッキングだったのだ。


「神立君?」
「将磨っち?」
「え、あ、うん。【聖騎士の心得】だよね?このスキルは凄いスキルだよ、レア中のレアだよ。とても超強力なスキルだよ……まさか百瀬さんに出るとは……」
「将磨っち。私がレアスキルをゲットしたのがそんなに羨ましいのかな~?」
「正直言って羨ましい。それほどのスキルだよ」


 美月に発現したこの【聖騎士の心得】は過去に一例しか報告事例がないスキルだ。
 しかも過去にこのスキルを発現した人物はダンジョンの最高到達点をマークしたパーティーのメンバーで今でもその記録は破られていない。
 残念なことに二年前に病気で引退を余儀なくされ、最近亡くなったと将磨の記憶にはある。


 スキルの能力としては重鎧と盾を装備しての前衛の要であり、襲い来る敵をひきつけ味方を守る。
 しかも高いのは防御力だけではない。
 盾装備時には片手剣、短槍など片手で扱える武器を、盾を装備していなければ両手剣に両手斧と近接武器なら何でもござれだ。
 前衛としてどんな局面でも対応ができる器用さと圧倒的な強さを持つのがこの【聖騎士の心得】というスキルなのだ。


「へっへ~、羨ましいでしょ~」
「簡単に聞いただけでも凄いスキルね」
 美月は鼻高々で鼻の穴も広がるほど自慢する。
「良いスキルが出たからさぁ、将磨っちのパーティーに入れてよ~」
「……と、取り敢えず八幡さんのスキルも見てから考えるよ……」
「え~ちゃんと考えてよねぇ~」
 ダンジョン探索はきけんだということもあり、未だに美月や霧子とパーティーを組みダンジョンを探索するのが良いのか判断に迷っている将磨だった。
 それに箝口令のこともある。


 ただ、美月のスキルが伝説的な激レアの【聖騎士の心得】であることを考えると寧ろ美月の方が国から狙われてしまうのではと思ってしまう。
 それならいっそのことパーティーを組んでお互いに助け合うのも悪くはないかと考えを軟化させるのだった。


 数日後の同じファミレス……
 そこには喜色満面の霧子がいた。
 その横には美月、そしてテーブルを挟んで目の前には将磨が座っている。
「こんなことって……」
 絶句する将磨をよそに霧子と美月は喜び合う。
「凄いじゃん!霧ちゃんもパーティーメンバー決定だね!」
「美月、有難う。でも神立君はパーティーを組むとは言ってないから……」
「何言ってるのよ!?こうなったら三人でパーティー組むしかないじゃない!」
 美月の頭の中では既に三人パーティーが成立していた。
 そんな美月とは逆に霧子は将磨から拒否されるのではないかと不安でいっぱいである。


「そうだ、私たちのスキル教えたから将磨っちもスキル教えてよ」
「……」
「どうした~?私たちのスキルが凄すぎて恥ずかしくなっちゃったのかな~?」
「それが……言えないんだ」
「え?何で?」
 怪訝な表情で将磨を見つめる美月とどうしたら良いのか分からず困惑する霧子。
 将磨のスキルについては〖探索者支援庁〗の職員である木崎に箝口令が出されており口外することを禁止されている。
 その為、ここで将磨のスキルである【カード化】のことを話すことはできないのである。


「少しだけ時間をくれないか?問題を解決できるかは分からないけど努力してみるから」
「それってど~ゆ~ことよ~」
「美月、神立君にも事情があるのだから少しくらい待っていようよ」
「む~」
 こうして将磨は美月に白い目で見られてしまった。
 白い目はまだ良いが、霧子のように落胆されるときついものがある。


「はぁ~」
 何度目かのため息をつきながら自転車を走らせる。
 アパートに帰った将磨は何はともあれ木崎に霧子と美月の二人とパーティーを組むことになりそうだからスキルを教えても構わないかとメールをする。
 パーティーを組むことは確定ではないが、霧子にも超レアなスキルが発現していることから断るのは難しいだろうと思っているし、二人とならパーティーを組みたいとも思っているのだ。
 そしてパーティーを組む以上は将磨のスキルを教えないわけにはいかない。
「それにしても八幡さんにも超レアな【聖弓士の心得】がでるなんて……」
 霧子に発現したスキルは美月同様に希少で強力な【聖弓士の心得】というスキルだった。
 この【聖弓士の心得】では弓限定ではあるが非常に強力な攻撃力と射程の長さを誇る。
 美月の【聖騎士の心得】が前衛の要なら、霧子の【聖弓士の心得】は中衛の主軸でありダメージ源なのだ。
 何故自分の周辺にこれほど珍しいスキルが発現したのか?しかも二人に発現していることから何か作為的なものを感じる将磨であった。


 木崎にメールをしてから学校の宿題や夕飯の支度をして返信を待つと夕食後に返信がきた。
 内容は一度二人に会わせてほしいというものだった。
 恐らく将磨の特殊性と周辺環境の危険性を説明するのだろう。
 だから土曜日の朝に〖探索者支援庁〗へ一緒にいこうと二人にメッセージを送ったら、美月と霧子から直ぐにOKの返事あった。


 そして将磨は自分のスキルである【カード化】で先日ドロップした合体のカードを手に持ち眺める。
「スライムか~。一番近いダンジョンでは〖福井ダンジョン〗か……」
 スライムが出てくるダンジョンは多いが、〖名古屋第二 ダンジョン〗には出てこないはずの魔物なのだ。
 出てこないはずのスライムが出てきたことは考えても分からないので最初から考えてはいないが、合体のカードを使う為にスライムを集めたいと思う。
「触ったらプニプニなのかな……それとも湿っぽいのかな……」
 モフモフ系のダークがいるがスライムも愛玩魔物としてほしいと思う将磨だった。
「スライムの特徴である合体が行える。か……ん?あれ……まさかな……」
 何かを思いついた将磨は寝転がっていたベッドから起き上がり机の上にあったノートを開けペンを走らせる。
 一体何を思いついたのか、それは将磨のみぞ知る、である。


 土曜日、早朝の七時に〖名古屋第二 ダンジョン〗前の〖探索者支援庁〗の前で霧子と美月を待つ将磨。
 将磨は原動機付自転車でここまで来ているが、二人はバスで来る予定なのでもうすぐやってくることになっている。
 この〖名古屋第二 ダンジョン〗は偶々近くに地下鉄の駅があったが、他のダンジョン全てで電車の駅があるわけではない。
 ダンジョンの傍に電車を開通させるのは難しいがバスは必ずダンジョンの前に停留所があるのが特徴だ。
 これは日本政府がスタンピードを発生させないための施策としてインフラ面の整備を行っているからだ。
 インフラ面で不便がありダンジョンに入る探索者が少なくならないようにとの配慮である。
 その為、運行本数も多いのが特徴である。
 更にダンジョンの周辺には探索者専用の駐車場も用意されているので、自家用車で通っている探索者の評判は悪くない。


 バスがやってきて停留所で止まる。
 時間が速いので乗客は数人しかおらず、すぐに霧子と美月が降りてきた。
「お待たせ~」
「おはよう、神立君」
「おはよう、八幡さん、百瀬さん」
 朝の挨拶を済ませると将磨は二人を連れ立って〖探索者支援庁〗の中に入っていく。
 受付は二十四時間営業なので必ず開いており、将磨は木崎を呼び出してもらう。


「おはよう、神立君。それにお嬢さんたち。私は〖探索者支援庁〗業務推進課の木崎という者です宜しくね」
 二人に名刺を渡しながら挨拶をする木崎。
 そんな木崎の大人の対応力に少し憧れる将磨だった。
「私は八幡霧子です」
「百瀬美月です。よろしく~」
 礼儀正しい霧子に対し、美月は木崎に馴れ馴れしく挨拶をする。
 これでも美月は女子陸上部の主将を務めていた。
 体育会系なのが信じられないと思う将磨だった。
「立ち話もなんだからついてきてくれるかい」
 木崎は将磨たちを先導してエレベーターにのりボタンを押す。
 エレベーター内では会話もなくすぐに扉が開き木崎が降りるように三人を促す。
 通されたのは先週の四層同行時の報告会に使われた会議室だ。


「さて、態々こんなところに来てもらって悪かったね。これから私の方からいくつか質問や話があるので申し訳ないけど付き合ってほしい」
「「はい」」
 三人を座らせると木崎も対面に座り話し出した。
 霧子と美月は将磨のスキルのことで何故〖探索者支援庁〗の職員が出てくるのか不思議ではあったが、先ずは話を聞くことにした。
「最初にここでの話は決して他言しないように誓ってほしい。敢えて書面におこさないけどとても重要な話なので、もしここでの話を他言した場合はそれなりの対応をしなくてはならない」
「「……」」
 神妙な面持ちの木崎の雰囲気に押され霧子と美月は頷くだけだった。
「有難う。では、神立君のスキルだが、二人はどのようなスキルか知っているかな?」
 顔を横に振る二人。
「うん、神立君のスキルは非常に特殊なスキルでね、この〖探索者支援庁〗の職員なら探索者の情報はある程度の権限があれば閲覧できるのだけど〖探索者支援庁〗の中でも知っている者は数人しかいない。それほど重要で秘匿しないといけないのが神立君のスキルなんだ」
 ゴクリと生唾を飲み込む二人の美少女。
「神立君から八幡さんと百瀬さんの二人とパーティーを組みたいという話があった時、私は迷ってね……神立君のスキルのことを知る人が増えるということは情報漏洩の危険が増えるのだけど……そうではなく、神立君とパーティーを組んだ人が危険な立場になりかねないと思ったからなんだ」
 二人は「一体どんなスキルを持っていればそんな話になるのか?」と将磨を見る。
 何故か先ほどから二人の行動はリンクしており、まるで双子のように見えてしまう。
「ここまで聞いても二人は神立君とパーティーを組みたいと思うかい?」
「「はい!」」
 二人は迷うことなく肯定する。
「分かったよ。では神立君のスキルの開示を認める。だけど、決して神立君のスキルのことは口外しないこと、これは絶対条件だからね」
「「はい!」」
「あ、そうだ。神立君のアパートの周囲には警護の人員を配置することになったからね」
「え?……いつそんな話に?」
「昨日、決まったんだ。悪いけど拒否権はないから」
「え~俺の人権は?」
「君の人権は考えないこともないけど、君の身の安全を優先させてもらうことにしたよ」
「うっ!?」
 木崎は敢えて言わなかったが、外務省には外国からカードについての問い合わせがいくつもきている。


 二人とのパーティーに関する話や将磨のスキル開示の話に隠すようにこそっと重大ごとを告げる木崎に将磨は大人はズルいと思った。
 そして国益対個人の権利を天秤にかければ国益が優先されるのだと思い知った時でもあった。
 それからは木崎は席を外し三人で今後のことを相談する時間となった。


「それが将磨っちのスキル……ちょっと前にテレビでニュースになっていたやつだよね?」
「魔物が召喚できるってかなり話題になっていたと思うけど、まさか神立君が関係していたなんて……」


 

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