カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】

なんじゃもんじゃ

009 デート

 


 栄地下街のクリスタル広場に赴いた将磨。
 将磨の住むアパートからはそこそこ遠い。
 名古屋市は東京のように鉄道が多いわけではない。
 JR、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、市営地下鉄と一部の地域に乗り入れているローカル鉄道会社が少々ある程度だ。勿論、バスもある。
 〖名古屋第二 ダンジョン〗の目の前にはバス停、五分ほど歩けば地下鉄の高畑駅があるので交通の便はそれほど悪くない。
 ただ、探索者というのは大きな荷物を持っていることが多く、地下鉄を利用すると他の乗客に迷惑がかかる時もあり車を使用する者も少なくない。
 将磨は探索者として活動する時は大きなバックパックを背負い原チャリを走らせるので地下鉄を使うことはないが、交通量が多くスピードを出す自動車が多いので原動機付自転車では怖いし、何より原動機付自転車は自動車の通行に邪魔になりそうなので早く免許を取り自動車を買いたいと思うのだった。


 〖名古屋第二 ダンジョン〗の五層ボスを倒してすぐに林原に報告にいった将磨。
 簡単に報告を終わらせるつもりがボス部屋に出現した魔物がまた増えていたと言うと林原に捕まり木崎が呼ばれ思った以上に報告に時間がかかってしまった。


「スライムなんて五層に現れたこともない魔物が……」
「こうなると神立様がトラブルを引き寄せていると思うしかありませんね」
「え。俺のせいなの?」
 林原の発言に自分のせいなの?と疑問を投げる将磨。
「他の探索者からはそのような報告は上がってきておりませんし、探索者がダンジョン内で行方不明になったという報告もこの半年で二件ですから」
 将磨は二件も行方不明があるのなら俺だけじゃないかもしれないだろ!と言いたかったが、林原の視線が恐ろしく口には出さなかった。
 何故か林原のインテリ眼鏡越しの視線が恐ろしく感じるのだ。
「取り敢えず他の探索者には注意喚起をするに留めますが、神立君も気を付けて下さいね」
「はい、俺も死にたくはないので……」
 こうして報告は終わった。
 そして将磨はアパートに帰りシャワーを浴びてバスと地下鉄を乗り継いで栄に出かけたのだ。


「おまた~」
「遅くなって御免なさい」
「今きたところだから大丈夫」
 そう、将磨は美少女二人とデートなのだ。
 ぶっちゃけると美月が誕生日プレゼントを要求してきたが将磨にはどのような物をプレゼントすれば良いのか分からなかったので素直に何が欲しいのかと聞いたら「じゃぁ一緒に買いに行こう!」となったのだ。
 勿論、全て美月主導によるもので霧子や将磨は美月のペースに押され何も言えなかった。
 そんな感じで美少女二人と地下街からファッション系のテナントが多く入っているLOCHICロシックに向かった。


「あ~これ可愛い!」
「うん、これも可愛いね」
 高校生の女性が二人もいるのだからショッピングにかけるパワーは凄い。
 ファッションには興味もない将磨にとっては苦痛に近い時間が流れる。
「将磨っち~、疲れたからカフェでも入ろう~」
 行動の主導権はほぼ美月が握っている。
 絶妙に霧子の趣味の店も織り交ぜ自分の見たい店をチョイスするのだ。
「あっ、このパンケーキ美味しそう!私これにするわ」
「私はどっちにしようかな?」
 二人はクリームやベリー系の果物がのったふっくらとして柔らかそうなパンケーキ、そしてタピオカ入りドリンクを頼む。
 将磨は甘い物は嫌いではないが、今は食欲より喉の渇きをひどく感じたのでタピオカ入りのドリンクだけ頼む。


「ふ~今日は疲れたけど楽しかったわ~」
「神立君、今日はありがとう。こんなに楽しい時間を過ごしたのは久しぶりだったわ」
「そうなら俺も嬉しいよ」
「それにプレゼントも買ってもらったし、今日は良い日だったわ~」
 プレゼント目的の美月は欲望に忠実である。
「ねぇ、今週は私と霧ちゃんが誕生日を迎えスキルゲットする予定だけど……」
 ここでもったいぶったタメを作る美月。
「将磨っち私たちとパーティー組まない?」
「え?……パーティーって二人とも探索者になるのか?」
「当然じゃない!ダンジョンよ、異世界よ、行かないわけにはいかないわよ!」
「……八幡さんも?」
「私も異世界を見てみたいかなって……」
 この世界に現れたダンジョンの中にはある共通した物が存在する。
 それは〖異界の門〗と呼ばれる異世界と繋がった巨大な扉である。
 この〖異界の門〗を通ることで異世界へいけるのだが、探索者を阻むように〖異界の門〗の前には数十体にもおよぶ魔物が陣取っている。
 相当な実力者でなければ異世界を見ることさえ叶わないのだ。
「まぁ~スキルが出たらなんだけどね」
「うん、スキルがないと足手まといになるし……」
 確かにダンジョンを探索するにはスキルの存在は大きい。
 スキルがなくても探索者にはなれるが、なったからダンジョンで生き残れるとは限らないのでスキルの存在は探索者にとって非常に大事なことなのだ。


 将磨は考える。
 二人が探索者になるのは彼女たちの自由だ。
 しかし将磨とパーティーを組みダンジョンを探索するのはどうなのだ?と。
 将磨の目標は〖異界の門〗を通り異世界を見て旅したいというものだ。
 だから異世界を見たいと言う二人と目的が重なる部分はあるし、この二人であればパーティーを組むのも悪くないかとも思う。
 しかし問題がある。それは将磨のスキルのことだ。
 将磨のスキルである【カード化】はある意味探索者どころか国のパワーバランスさえ変えてしまう。
 そのことを二人に教えるのは問題ないが、その後にもし将磨がどこかの国に追われるようなことになれば二人にも迷惑がかかる。
 それは避けたいと思うのだ。
 それに木崎から箝口令が発令されていることも将磨が躊躇する理由である。


「将磨っちはソロなんでしょ?無理にとは言わないけど考えておいてよ」
「ああ、考えておくよ……」
 少し曇った表情の将磨を見た美月が一歩引く。そういったことには敏感なようだ。
 そして霧子も軽く頷くに収める。彼女もまた将磨の表情が曇ったのを感じたのだ。
 ここで注文した物が運ばれてきたので話を切り上げる。タイミングが良い。
 その後は美味しそうなパンケーキとドリンクで話が盛り上がる。
 食べる前の写真もしかっかり取っていた二人なのでインスタにでもアップするのだろうかと考える将磨。
「将磨っち、パンケーキ少し食べる~?」
「え、あ~……」
「私のが嫌なら霧ちゃんのもらったら?」
「「えっ?」」
 ニヤニヤと二人を交互に見る美月の視線が不思議と不快とは思わない将磨。
「えーっと、食べる?」
 霧子が上目遣いで将磨を見る。
(ぐっ、そんな目で、反則だぞ!?)
 思わずコクリと頷いてしまった将磨だった。
 そんな将磨を見て霧子がパンケーキを切り分けてフォークに刺し、クリームとベリーがのったパンケーキを将磨の方に差し出す。
 ゴクリと唾を飲む将磨。そして口を少し開けてゆっくりフォークに口を近づける。
 霧子の視線もその口元にくぎ付けだ。
 パクリ。
 二人の視線が交差する。ポッと音がしそうなほどに真っ赤になる二人。
 とてもピンクな雰囲気が周囲に伝わる。
「お~、熱いね~もう秋だっていうのにここだけは熱帯だよ~」
「な、そ、そんなんじゃ!?」
「そ、そうよ!そんなんじゃ!?」
 熱い、熱いと繰り返し手で顔尾を仰ぐ美月。
 将磨と霧子は必死で否定するも美月はそれを取り合わない。寧ろ呷っている。
 散々二人をいじったことで二人から無視されてしまったほどだ。
「ゴメンてば~、もうしないから許してよ~」


 

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