カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】

なんじゃもんじゃ

007 四層同行

 


 階段がある大きな岩山の洞窟から出ると将磨たちの前には見渡す限りの草原が広がる
 三層までの洞窟タイプとは違いこの四層は草原と森タイプのエリアとなるのだ。
 尚、〖探索者支援庁〗のサイトの情報では十層まで同じような草原と森の層が続く。


 上を見ると太陽があり眩しい光を振りまいている。
 ここがダンジョンの中だと忘れさせる光景だ。
 奥の方には森もあり情報では森の中にボス部屋があるので、そのボス部屋を目指す為に森に入らなければならない。


 しかしここで注意するのは見晴らしがよい草原でも草が膝上ほどまで伸びており、小型の獣型の魔物が隠れるには丁度良いのだ。
「いつもスマホで情報を確認しているのですか?」
 将磨がスマホで四層の情報を再確認していると林原が質問をしてきた。
「ええ、ソロだし探索者の知り合いもいないので」
「〖探索者支援庁〗の公式情報であればよいのですが、個人の情報を鵜呑みにしますと危険ですからそのことは心にとめておいてください」
「……分かりました」
 にべもない対応の林原である。


 将磨も公式情報と個人の情報は切り分けて考えているが、それでも個人の情報の方が情報量が多いので見てしまうこともある。
 〖探索者支援庁〗がもっと情報を上げてくれれば個人の情報に頼ることもないのだろうが、〖探索者支援庁〗としても不確定要素のある情報は簡単にはアップできないと林原は説明する。
 それならカードの情報をもっと慎重に確認してほしかったと思う将磨だが、持ち込まれたカードが初めて発見されたアイテムだったことと、何より魔物を召喚するためのカードなのは鑑定すれば分かるので発表に至ったそうだ。


 探索者が多い繁忙期だと草原に獣道ならぬ探索者道ができるのだが、閑散期の現在では探索者が踏み固めた道もなくなっている。
 そんな草原をゴブリンシーフとゴブリンアーチャーを先頭にして進む一行。


 ゴブリンシーフとゴブリンアーチャーは他のゴブリンよりも索敵能力が高いので便利である。
 ゴブリンアーチャーが立ち止まり将磨を呼ぶ。呼ぶと言っても手を挙げるだけだが。
 ゴブリンシーフよりもゴブリンアーチャーの方が索敵範囲は広いようだ。
 盗賊と狩人では狩人に軍配が上がるのが索敵のようだ。
 ゴブリンアーチャーが指さす方を見る。しかし将磨には何がいるのか分からなかった。


「何もいないが?」
「いえ、いますよ。グリーンバイパーですね。牙には麻痺毒がありますので気を付けてください」
 林原にはグリーンバイパーが見えるようだが、将磨には一面緑色の草の絨毯にしか見えない。
「ゴブスリー、矢を射ろ!」
 その命令でゴブスリーと呼ばれたゴブリンアーチャーは矢を番えた弓の弦を弾く。
 シュッと矢が放たれ草原の中に着弾するとその周囲の草が激しく動く。
 時々緑色のクネクネした体が草の上に現れるも保護色なので非常に見分けがつきにくい。
「当たりましたね」
「ゴブワン、ゴブツー、行け!」
 剣を持った二体のゴブリンソルジャーが激しく動く草に向かう。
 何度か剣を振り下ろす二体のゴブリンソルジャーの動きが止まる。
 戦いが終わった合図でもあるので二体のもとに向かう。




 @グリーンバイパー
 説明:グリーンバイパアー〈ランクH〉を召喚できる。
 レアリティ:★
 残数:五




「神立様がトドメを刺さなくてもカードになるのですね?」
 半眼の林原さんが将磨をみている。
 包み隠さず全てを吐けと目で言っているようだ。
「召喚したゴブリンなら俺の【カード化】が適用されるようです……」
 林原を見て宇喜多と内田は苦笑をする。
 しかしゴブリンが戦闘をするので将磨は指示を出すだけというのが今の戦闘でよくわかった。


 先に進んだ将磨たちの前に現れたのはイビルキャットという魔物で、薄汚れた感じの灰色の体に大型犬程度の大きさのネコだ。
 ネコだけあって動きが速く普通のゴブリンでは動きを止めるのも難しい。
 しかしここでゴブリンシーフが活躍する。
 イビルキャットの動きに合わせ短剣で足を切り付けると動きが悪くなったイビルキャットにゴブリンアーチャーの矢が刺さった。
 後はゴブリンソルッジャー二体がボコり討伐完了だ。




 @イビルキャット
 説明:イビルキャット〈ランクG〉を召喚できる。
 レアリティ:★
 残数:十




「素早い動きにも対応できる。なかなか死角が少ない構成だ」
「ここにメイジと回復ができる魔物がいればかなり安定したパーティーになりますね」
 宇喜多と内田はゴブリンたちの戦闘を分析して講評を行う役に徹してしまったようだ。
 その後、十体のゴブリンを擁する将磨は出てきた魔物をゴブリンたちに任せ疲弊なく森に入る。
 因みに回復できるゴブリンプリーストは存在しない。
 理由は分からないが、これまでにゴブリンが回復系のスキルを使った報告はない。


「ゴブリンとは言え、十体もいると四層では敵なしだな」
「はい、これは下手な初心者パーティーよりも強力ですね」
「しかし神立様が襲われると指示系統が混乱するでしょうから神立様自身の強化や護衛の強化は最重要課題ですね」
 ゴブリンたちの戦闘力はこの四層では十分にある。
 それでも数によって得られた優位性なので指示系統が混乱すると脆いだろうと考える三人の〖探索者支援庁〗職員。


 職員たちの懸念は将磨も考えてないわけではなかった。
 自分が弱いということが課題なのは戦闘系のスキルを持っていない以上、なかなかに厳しい現実なのだ。
 だからゴブリンを上位種にランクアップできないかと自分の短剣を渡したりして検証をしたこともある。
 結果は残念だったが、考え、できることがあれば実行するに何も憚ることはない。


 そして将磨は希望を持っていた。
 それは魔物を倒すと極稀にスキルを入手できるからだ。
 だから有名な探索者になるとスキルを複数所持していることも珍しくない。
 残念なのはスキルはその場で取得する以外の方法がなく、しかも三十分ほどで消えてなくなってしまうらしく誰かを呼びに行く時間もない。
 現在分かっている情報としてはどのダンジョンでも十五層程度にならないとスキルがドロップしないということだけである。


 森の中は草よりも土の地面が多い。
 気を付けるのは木の上や木の陰に隠れている魔物の奇襲である。
 しかしここでもゴブリンシーフとゴブリンアーチャーの索敵能力が優秀だった。
 ゴブリンシーフは先頭を歩き木陰に隠れる魔物を見つけ、ゴブリンアーチャーは木の枝に登り高所から索敵を行う。
 だからゴブリンアーチャーには魔物を見つけたら合図をしてから攻撃することを許し、ゴブリンソルジャーにはゴブリンアーチャーが攻撃した魔物のトドメを刺すことを許した。
 これで一々将磨が命令しなくてもゴブリンたちが動く。
 残念なのは普通のゴブリンはこういった自立を促しても動けないことだ。
 どうも上位種にならないと融通がきかないようなのだ。


 森の中心部には木が柵のように生えている場所があり、その木の間を蔦が覆っていることでその中が見えない場所がある。
 これがこの四層のボス部屋であり、中にはイビルキャット二体とゴブリンテイマーが陣取っている。


 四人と十体のゴブリンがそのボス部屋に入る。
 中には二体のイビルキャットとゴブリンテイマー、そしてゴブリンメイジが陣取っていた。
「何だと!?」
「そんな情報ありませんよ?」
「これは!?」
 将磨はまたかと思ったが、同行した三人の〖探索者支援庁〗の職員は情報にない魔物の布陣に驚いている。


「ゴブワンとゴブツーはゴブリンメイジを、ゴブスリーとゴブフォーはイビルキャットを、他のゴブリンはゴブリンテイマーに総攻撃だ!」
 三人が驚いている中、将磨はテキパキとゴブリンたちに命令を出す。
 因みにゴブワンとゴブツーはゴブリンソルジャー、ゴブスリーがゴブリンアーチャー、ゴブフォーがゴブリンシーフで他の六体は全て普通の髪有りゴブリンだ。


 イビルキャット二体に向かったゴブスリーとゴブフォー。
 それぞれが一体づつイビルキャットと対峙するが、そのイビルキャットに命令を出しているゴブリンテイマーはゴブリンアーチャーの矢と五体の髪有りゴブリンに殺到されて命令どころではない。
 上位種とは言え、テイマーなので今の将磨同様、魔物がいないと強さを発揮できないのだ。
 その間に動きの悪いイビルキャットをゴブスリーとゴブフォーが傷を負わしていくが、ボス部屋の効果で強化されているので決定打に欠ける。


 一方、ゴブワンとゴブツーはゴブリンメイジに向かって走る。
 しかしそこに詠唱を終えたゴブリンメイジから火の玉が放たれゴブツーの肩口に命中する。
 ゴブツーはその衝撃で倒れたが、ゴブワンが再び詠唱を始めたゴブリンメイジに取り付き剣で一撃を与える。
 ゴブリンメイジはゴブワンの一撃で眉間をかち割られ倒れてカードとなった。
 流石は紙装甲の魔術師系ゴブリンである。


 ゴブツーはというと肩口に火傷を負っているがまだ戦える状態だ。
 しかしその傷を見た将磨はゴブツーをカードに戻す。
 フリーとなったゴブワンはそのままゴブリンテイマーを屠り、残ったイビルキャット二体を九体のゴブリンがタコ殴りにして決着がつく。
「「「……」」」
 そんなゴブリンたちと将磨を〖探索者支援庁〗の三人の職員は声もなく眺めていた。


「終わりました。カードも拾ったので『転移の渦』で転移しますが……どうしました?」
「神立様は今回のボス戦の異常さをご存知ないのですね」
「そうだな、情報になかったゴブリンメイジが増えていた。こんなことは初めてだ」
「え?そうですか?三層でもゴブリンシーフの他にゴブリンソルジャーが現れたのでそういう設定かなと思ってましたけど?」
「「「な!」」」
 三層に続き四層でも情報と違う魔物構成だったことから、こういう設定だと受け入れた少年将磨と理解が追いつかない大人たち。
 そして復活した林原にそのことを何故報告しなかったのかと問い詰められた将磨は半泣き状態だ。


 場所は変わり〖探索者支援庁〗ビルの一室。
 四人が戻ってきたのを聞きつけた木崎と三十代前半に見える女性も加わって今回の目的である【カード化】の能力についての確認報告が行われている。


 女性は部屋に入ってくると軽く将磨に会釈をすると皆と少し距離がある机に陣取りノートとペンを出したので将磨は彼女を書記か何かだと思ったようだ。
 今回の同行で確認できた内容は林原、宇喜多、内田が交代で口頭報告する。
 後日書面に起こして報告するのは役所でなくてもお約束だという。


「なるほど、そうするとカードのドロップ率は百パーセントでその殆どがレアリティ★だったのだね」
「はい、★が四十八枚、★★が十一枚、★★★が二枚となります」


 今回の探索ではグリーンバイパーのカードが二十二枚、イビルキャットのカードが二十四枚、ゴブリンテイマーのカードが一枚、ゴブリンメイジのカードが一枚、ここまでが★だ。
 そして★★は十一枚全てが魔石で、★★★はグリーンバイパーの毒袋とイビルキャットのかぎ爪だ。




 @グリーンバイパーの毒袋
 説明:グリーンバイパーに食べさせるとキラーバイパーにランクアップする。
 レアリティ:★★★
 残数:一




 @イビルキャットのかぎ爪
 説明:イビルキャットに与えるとビックキラーキャットにランクアップする。
 レアリティ:★★★
 残数:一




 将磨は一層と二層で入手したカードの数より四層で入手したカードの数の方が多いことに嬉しくなる。
 ただ、問題なのは魔石のドロップ率が予想通り低く入手しずらいことだ。
 初心者の探索者にとって魔石は単価は低くても重要な収入源なのでそのドロップが二割程度では非常に厳しいと言わざるを得ない。


「最後の報告になりますが、神立君が魔物を十体召喚している時に私が持っていたカードを召喚しましたら、問題なく成功しました。よって一人当たりの召喚数には限度があるようですが、複数人による召喚は問題なくできる可能性が高いです」


 これは将磨が召喚できる魔物の数が十体なので、その十体を召喚した時に他の者が十一体目の魔物が召喚できるかという検証であった。
 結果は内田が報告したように将磨が十体召喚していても他者なら魔物を召喚できるというものだった。
「了解しました。今後は神立君以外の者がどの程度の数を召喚できるのか、そして何人が召喚できるかを検証する必要がありますね」
「ええ、一人で召喚できる魔物の数に制限があっても召喚する側の人間に制限がなければダンジョン探索の幅が広がるでしょう」
 木崎をはじめそこにいた者たちが皆頷く。


「さて、神立君。今回の協力に対しての報酬だが、約束通り三十万円を支払う用意がある。それ以外にこのグリーンバイパーのカードとイビルキャットのカード、それとゴブリンのカードをできるだけ多く売ってほしい。大丈夫かな?」
 木崎とは何度か電話やメールでやり取りしており、その際に様付けは止めてほしいと頼んだことで君付けになっている。
 同じく林原にも頼んでいるのだが、林原は頑なに様付けのままなのだ。
 そして木崎の提案は先ほどの召喚数に関する検証にも繋がるだろうことは将磨にも分かった。


「カードは俺の生命線なのでそれぞれ十枚を残してもらえば、余った分は売ることは可能です」
「有難う。では十枚づつ譲ってほしい。代金は少し安くしてほしいと思っている。グリーンバイパーが一枚八十万円、イビルキャットはランクGなので一枚百万円、ゴブリンは一枚五十万円でどうかな?」
「え?」
 あまりの額に将磨の思考は停止した。


 それぞれ十枚、合計三十枚の代金の総額が二千三百万円にもなるのだ、同行確認の報酬である三十万円などはした金に思えてしまう。
 それに初心者探索者の主な収入源である魔石も集める意味を感じない。
 魔物のカードを〖探索者支援庁〗へ売っているだけで大金持ちだ。


「最後にだが、今回の件は箝口令を発令させてもらう。神立君のこのスキルは個人もそうだが他国に知られると非常にまずいことになるからね」
「え?……そうなんですか?」
 真面目な顔で木崎が箝口令を発令する。
 将磨は木崎がなぜそのようなことを言うのか意味が分からなかった。


「神立君は中国や朝鮮半島、それに中東諸国やロシアなどでダンジョンから魔物があふれ出したスタンピードについて知っているよね?」
「はい……中国ではダンジョンに軍隊を送り反撃を受け壊滅したとか、その後スタンピードが発生したりドラゴンが現れたりして都市が幾つか壊滅したとか色々聞きます。木崎さんが言われた他の国も似たような状況だと思いますが?」


 将磨はあまりテレビは見ないが、ダンジョンや魔物関連の報道には耳を傾けているしネットにアップされている情報にも目を通している。
「そう、そして中国や他の国々は軍事的に非常に脆弱な状態になっている。中国は内戦状態なので特に不安定な状態だ。そこに君の【カード化】の情報があればどうなるか分かるかな?」
「……もしかして俺を拉致しようと……?」
「可能性はないとは言えない。そのスキルはそれほど貴重なスキルだと思って行動をしてほしい。海野うんの参事官も宜しいですね?」
 将磨が書記だと思っていた女性に木崎が顔を向けて笑顔で同意を求める。


 女性は自衛隊から出向中の参事官という高い役職に就いている海野琴美うんのことみだった。
 この〖名古屋第二 ダンジョン〗の〖探索者支援庁〗だけではなく、日本全国の〖探索者支援庁〗でも発言力のある人物だ。
 その海野に木崎は箝口令の同意を求め、更には将磨には言わないが陰ながら将磨を護衛することを提案していた。


「箝口令は当然ですね、諸外国に神立君のスキルを知られることになれば無用な圧力を受けかねませんから。私の方でも根回しをしておきます」
「ありがとうございます」
 木崎は頭を軽く下げ海野に感謝の意を告げる。


(確かに魔物を召喚できたりランクアップさせることができるので使い方次第でダンジョン探索には困らないだろうとは思っていたけど、そんなに凄いスキルだとは思っていなかったよ。やっぱり違う角度で見るのは大事だね)


 

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