カードメーカー【最強の魔物をつくりあげろ!】
003 召喚
「え?ど、どこに?」
そこにあるはずのゴブリンの死体がなかったのだから驚くのは無理もない。
ダンジョンでは魔物や人の死体はダンジョンに取り込まれるのが普通だ。
とは言え、十分ほどでダンジョン内に取り込まれることはない。
それなのに目の前には倒したはずのゴブリンの死体がないのだ。
暫く呆けて、ゴブリンが傍にいるのではと思い至るまでに時間がかかったが、周囲を見渡してもゴブリンはいなかった。
通路のような場所なので隠れる場所もない。
ダンジョン内の真っすぐな通路なので索敵能力がない将磨であっても間違いないだろう。
「……いったい……ん?これは?」
ゴブリンの死体があるはずの場所には血の海が広がっているが、その中に何かがあるのを見つけた将磨はそれをよく見ようと腰をかがめる。
半分ほどドロドロの血に浸って表面が見づらくなっているが、間違いなくそれは将磨の思っている物だった。
「……これが俺のスキル【カード化】の効果……」
拾い上げたのはキャッシュカードほどの大きさのカード。
血で汚れてしまったので手で拭いそのカードをよく見る。
「ははは……何だよこれ……」
そこに記載されていたのは絵と文字。
絵はゴブリンが爪で何かをひっかくようなポーズをしており、文字は日本語で書かれていたので簡単に読めた。
@ゴブリン
説明:ゴブリン〈ランクH〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:五
簡単で非常に分かりやすい。
「このカードで倒した魔物を召喚できるのだろうか……」
ここで問題なのはどうやってゴブリンを召喚するのか、召喚できた場合にゴブリンが将磨の命令をきくのか、そして何より倒した魔物が全てカードとなってしまっては魔石を入手することができない、ということだ。
もし全てがカードとなってしまうのであれば将磨には魔石を得る手段がなくなってしまう。
魔石が手に入らなければ探索者として生計を立てることができない。
深い層に行けば魔石以外にも魔物の素材が買い取り対象になるし運よく宝箱を発見すればお宝を得ることもできる。
しかし浅い層では魔物自体が買い取り対象にならないし、宝箱も滅多には出ない。
仮に宝箱が出ても低層ではそれほど高額のアイテムは得られない。
探索者の成形は魔物の魔石、そして魔物から得られるアイテムから成り立っているので【カード化】の効果は将磨にとって懸念材料が多いことになる。
「残数が五になっていることから五回は召喚できるのか?死んだらどうなるのかな?それにレアリティがあるってことは★★とかもあると考えて良いのかな?」
疑問は尽きない。
そして疑問を解消するには試せることを試すしかないのだ。
「ゴブリン召喚!」
どうやって召喚するのか分からなかったのでゴブリンのカードを持ちそう唱えるとカードが発光する。
カードの光が眩しく目を瞑ってしまう将磨だったが、数秒で光が消えて目を開けるとそこにゴブリンがいた。
ゴブリンの姿を見た将磨は身構える。
よく見ると目の前にいるゴブリンは倒した時よりも髪の毛がフサフサしている。
ゴブリンにはほとんど髪の毛がない。まったくないわけではないが、某温水系の名前の俳優と良い勝負なのだ。
それがカツラでも被っているのかと思うほどフサフサなのだ。
「お前は俺が召喚したゴブリンか?」
手に持っていたはずのカードが無くなっていたことから分かり切った質問だったが、本当に自分が召喚したのか聞きたかった将磨はゴブリンに質問を投げかけた。
しかしゴブリンは首を傾げる。将磨の質問が理解できないようだ。
それでも将磨と相対しても攻撃してこないことからゴブリンは将磨が召喚したのだろう、と思うしかなかった。
「こうしていても埒が明かないな。ゴブリン、俺の前を歩いて魔物を見つけたら止まれ」
その命令にゴブリンは頷く。理解できたようで歩き出す。
どうもゴブリンには理解できることと理解できないことがあるようだ。
将磨の前を裸足でペタペタ音を立てて歩くゴブリンが止まる。
止まって動かない。命令に忠実なようだ。
将磨はゴブリンの横まで行くと視界の先に別のゴブリンを見止める。
そのゴブリンも髪の毛は殆どないので、将磨が召喚したゴブリンとは簡単に見分けがつく。
「よし、あのゴブリンに向かって走ってタックルしろ!そしてそのまま押さえつけて動かないようにするんだ!」
将磨の命令でゴブリンは走り出す。
その後を追って将磨も走る。
髪有りゴブリンが髪無しゴブリンにタックルをし、押し倒してホールドする。
そこに将磨もやってきて右足で髪無しゴブリンの左手を踏み、短剣で髪無しゴブリンの胸を突こうとする。
その時に偶々髪無しゴブリンの顔を見てしまった将磨の手はピタッと止まる。
髪無しゴブリンの濁った眼が将磨を射るように見つめる。
「うっ」
今は生きているゴブリンの命を刈り取ろうとする自分を濁った瞳で呪詛でもしているような鋭い視線で見つめている。
醜悪な顔をしていても生き物であり、魔物であっても生き物なのだ。
将磨は生き物を殺した経験が先ほどのゴブリンしかない。
知らずに蟻を踏みつぶしたことはあるだろう、蚊を叩き潰したこともあるが、ゴブリンは魔物とは言っても人型の生き物、短剣を突き刺すのに躊躇しない方がどうかしているだろう。
「悪く思うなよ、お前だって立場が逆なら容赦なく俺を殺すだろ?」
自分に言い聞かせるように声に出す。
そして意を決し短剣を振りかぶり髪無しゴブリンの胸に突き刺す。
「GYAAAAAA!」
断末魔ともいえる声をあげる髪無しゴブリン。
暴れて拘束からのがれようとする髪無しゴブリンを必死で抑え込む髪有りゴブリンと将磨。
血が出ないように短剣は抜かず、絶命するのを待つ。
「Gyaaaaaa……」
髪無しゴブリンが力なく声を上げて息絶えると数秒で死体がカードとなる。
将磨は髪有りゴブリンを褒め、現れたカードを拾う。
@ゴブリン
説明:ゴブリン〈ランクH〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:五
カードに描かれた絵のポーズは多少違うが記載内容は同じものだった。
「これってカードを沢山集めたら大軍団を組織できるんじゃないか?」
一度に召喚できる数に制限がなければだが、低ランクのゴブリンでも上のランクの魔物に数の暴力で対すれば勝てる可能性はあるかもしれないと考える将磨。
「ゴブリン召喚!」
手に持ったカードがピカッと光る。
カードが光るのは分かっていたので予め薄目で少し視線をずらしていたので思ったほどは眩しくなかった。
目の前に二体目の髪有りゴブリンが現れる。
その姿は一体目の髪有りゴブリンと全く一緒である。
「二体いると判別ができないな」
見た目はまったく同じ二体の髪有りゴブリンを前にして将磨は紛らわしいと思う。
「お前たちに名前を与える。お前はゴブワン、お前はゴブツーだ」
二体の髪有りゴブリンは将磨に名前をもらって少し嬉しそうに頷く。
そして何かに使えるかもとバックパックに入れておいた油性マジックを取り出してゴブワンの胸に大きく「1」と書き込むと背中にも同様に「1」と書く。
ゴブツーには「2」と胸と背中に書きこれで完全に見分けがつくぞとご満悦な将磨であった。
二体の髪有りゴブリンは少し迷惑そうな顔をしていたような……
ゴブワンを先頭にして歩き出す。
ゴブツーはゴブワンの少し後、そして将磨はその後を歩いていく。
ゴブワンが止まった。それと同時にゴブツーも止まる。
視界の先にいる髪無しゴブリンにゴブワンがタックルをして髪無しゴブリンが倒れたところでゴブツーが一緒になってゴブリンを抑えるように命令を出す。
「GYAAAAAA!」
髪無しゴブリンが叫ぶがゴブワンとゴブツーに抑え込まれ動けない。
その動けないゴブリンに将磨は余裕をもって近づき胸に短剣を突き立てる。
暫くしてゴブリンはカードになったので拾い上げそれを見る。
「お、これは!」
@魔石(ランクH)
説明:魔物から得られる魔石。
レアリティ:★★
残数:一
レアリティの★が二つになったらゴブリンではなく魔石のカードになった。
魔石が入手できないのでは、と思っていた将磨の懸念は少し解消された。
しかしレアリティが★★なので魔石のドロップ率は低いだろう。
「待てよ……カードを〖探索者支援庁〗に買い取って貰えば……もしかしたらゴブリンとはいえ召喚できるのだから高額で買い取ってくれるんじゃないか?」
一縷の望みではないが、希望がさした瞬間だった。
その後、ネズミ算式ではないがゴブリンを倒すとゴブリンのカードがドロップするので数の暴力で戦いを有利に進めるとボス部屋の前にやってきた将磨は休憩を兼ねてバックパックからコンビニで買っておいた炭酸飲料を飲む。
「ぷは~、やっぱり四矢サンダーはうみゃ~!」
地面に座り込みお気に入りの炭酸飲料のペットボトルを傾ける。
何故か語尾だけ大袈裟な名古屋弁になる。
戦いの前なので食事ではなく軽くカロリーエイトというビスケットのような栄養補助食品をかじり、喉が渇くとペットボトルを傾けて炭酸飲料を流し込む。
誰もいないのでゲップを我慢する必要もないので盛大にゲップをする。
「さて、行きますかね」
目の前には十体のゴブリンが整列し将磨の命令を待っている。
倒したゴブリンは十六体で魔石はたった一枚しかドロップしていない。
つまり十五枚のゴブリンカードを保有しているのだが、十一体目のゴブリンを召喚しようとしても召喚できなかったことから現状では十体までしか召喚ができないと考えられる。
ボス部屋は大きな金属製の扉によって塞がれている。
その扉には三体のゴブリンが描かれている。
この絵がこのボス部屋で出てくる魔物を表しているのは有名な話だ。
一応はスマホでボスの情報を確認してボス部屋の扉を開ける。
「行くぞ!」
髪の毛がフサフサの十体のゴブリンが金属製の扉を開けたので将磨は何もしていない。
ボス部屋の中には予定通り三体のゴブリンがおり、将磨たちを待ち受ける。
ボス部屋に入ると将磨は素早く十体のゴブリンに命令を出す。
三体の髪有りゴブリンが一体のゴブリンを抑え込んで余った一体の髪有りゴブリンは予備兵力として将磨を守るように命令がされている。
髪有りゴブリンたちは将磨の命令に従いそれぞれ担当のゴブリンに走り寄って防御も考えずにタックルをして押し倒し抑え込もうとするが、ボス部屋の主たちだけあって普通のゴブリンよりもやや強めの設定だ。
主たちは髪有りゴブリンを殴り飛ばしたり爪で切り裂いたりとなかなか抑え込めない。
「前方、後方、横の三方向から一度に抑え込め!」
反撃を受けるも三方向からから囲み何とか抑え込んだゴブリンを将磨が首を切り裂き倒していく。
本当は盛大に血しぶきを上げるこのような倒し方をしたくはなかったが、髪有りゴブリンよりも力が強い髪無しゴブリンを抑え込むのが大変そうだったので確実に素早く倒せる方法をとったのだ。
だから抑え込んでいた髪有りゴブリンたちは盛大に返り血を浴び酷いことになっている。
「ふ~なんとか倒せたな」
将磨がひと息入れると髪有りゴブリンがバタッと倒れる。
「え?どうしたんだ!?」
相次いで六体の髪有りゴブリンが倒れそして消える。
どうやら格上の髪無しゴブリンを相手に死力を尽くしたことで力尽きたようだ。
「ギリギリの戦いだったのか……それともボス部屋以前の戦いでのダメージも蓄積されていたのか?」
残った四体の髪有りゴブリンを見ながら考えるがゴブリンは言葉を発しないので意思疎通に問題があり原因追及は難しい。
そして力尽きた六体の髪有りゴブリンはカードに戻ることはなかったことから、召喚した魔物が死亡した場合には死体もカードも残らないという結論に至った。
せめて死体でも残れば魔石が回収できるのに、と思うのだが自分の為に戦って死んでいった魔物の魔石を取り出すことができるのか?とも思う。
死体がない以上は考えるだけ無駄であり仕方がないので髪無しゴブリンからドロップした三枚のカードを拾い上げる。
そして髪無しゴブリンのカードを確認する。
@ゴブリン
説明:ゴブリン〈ランクH〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:五
@ゴブリン
説明:ゴブリン〈ランクH〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:五
@ゴブリンソード
説明:ゴブリンの鍛冶師が鋳造した片手剣。ゴブリンに装備させるとゴブリンソルジャーにランクアップする。
レアリティ:★★★
残数:一
「おおお、レアリティが★★★だ!」
ゴブリンソードはゴブリンの上位種であるゴブリンソルジャーが持っている片手剣である。
ただし、予備知識として持っているゴブリンソードの売値は大したことはない。
素材が珍しくもない粗悪な鉄なのが理由だ。所詮はゴブリンなのだ。
しかし★★★がドロップしたことと、何よりゴブリンに装備させるとランクアップするという説明文が将磨のテンションを最高まで上げる。
暫くテンションアゲアゲで二十面相をしていた将磨は四体の髪有りゴブリンが自分を注視しているのに気が付く。
そしてゴブリンとはいえ自分の恥ずかしいところを見られたことに顔を赤らめる。
恥ずかしさを誤魔化すように部屋の奥に出来ている光の渦をみる。
「あれが噂の……」
そこに在ったのはボスを倒すことで出現する『転移の渦』だ。
理屈は分からないが、この『転移の渦』の上にのれば入り口付近の階段の傍のセーフティエリアに転移することが分かっている。
「初体験……では!」
テンションが上がっていた将磨はその大事なことを考えていなかった。
それは将磨が『転移の渦』で転移したら将磨が召喚した髪有りゴブリンがどうなるのかということだ。
そしてそれは転移先で将磨に現実を突きつける。
「……俺だけしか転移していない……ゴブリンたちは……どうなった?」
ゴブリンたちは転移してこなかった。
将磨が『転移の渦』に入るように命じなかったからなのか、それとも将磨のように転移できないのか、理由は分からない。
暫くウンウン悩んだが分からないものは分からないので、気持ちを切り替えることにした。
「……はぁ~、今度はしっかりと確認しないとな」
残念なことは確かだが、手元には七枚のゴブリンカードがあるのだからそこまで悲観することでもないと考える。
二層に行くにしても一層をもう一度行くにしてもゴブリンならまだ沢山出てくるからだ。
だから気持ちを切り替えるためにも食事を摂ることにしたのだ。
ボス戦前に軽く腹ごしらえはしたが、バックパックの中には昼食用に用意しておいた食べ物が入っている。
バックパックに入れてあったコンビニで購入したサンドイッチと焼肉のおにぎり、そして炭酸飲料水のペットボトルを取り出す。
サンドイッチはハムとレタスが挟んでありマスタードとマヨネーズで味がついているものがシンプルで一番好きなのだ。
サンドイッチを頬張り味わう。
「シンプルイズベストってね、これが一番だよ」
三角形で三組のサンドイッチの内、一組を口の中に放り込むとペットボトルを持ちキャップを捻る。
プシュッと音がして炭酸飲料水の甘い香りが漂う。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッと喉を鳴らし美味しそうに炭酸水を呷る。
「ップハー、四矢サンダーはうみゃ~!」
エセ名古屋人の将磨は何故か「うみゃ~」というフレーズが気に入っている。
地面にペットボトルを置き再びサンドイッチに手を延ばそうとした時、地面の凹凸で安定感を欠いたペットボトルが倒れ将磨の大好きな四矢サンダーが零れる。
「あ、ああ~勿体ない~」
地面に零れてしまった四矢サンダーを悲しそうに眺める将磨。
いくら好きだからと言っても地面に零れた四矢サンダーに口を付ける気にはならない。
残念な気持ちに踏ん切りをつけ立ち上がり屈伸や伸びをする。
「よし、行くか!」
二層へ続く階段を降りる。
朝にはこの階段を降りようとしても見えない壁に阻まれ降りることができなかったが、一層のボスを倒したことで二層へ続く階段が解放されたのだ。
二層に出てくる魔物もゴブリンだ。
一層と同じ単体で現れることもあるが、多くは二体もしくは三体の複数構成で現れる。
しかし相手が二体だろうと三体だろうと七体の髪有りゴブリンを擁する将磨の敵ではなかった。
これが十体なら再び一層でゴブリン集めをしただろうが、複数で囲んでタコ殴りにできる数である。
そして将磨は二層のボス部屋の前に立っていた。
一層の時よりもスムーズに進んできたので五割り増し程度の道程もほとんど苦にならなかった。
「あっ!忘れていたよ。ゴブリンソードを装備させればゴブリンソルジャーにランクアップするんだった!」
今更だが髪有りゴブリンにゴブリンソードを装備させてみる。
装備させると言ってもどうすれば分からないので、取り敢えずゴブリンソードのカードをゴブリンに持たせる。
「……特になしか」
ならばと次は将磨自身がゴブリンソードのカードを持ちゴブリンに向かって「装備!」と叫ぶ。
髪有りゴブリンが発光してシルエットが少し大きくなるのが見えた。
「おおお、スゲーなおい!」
テンションが最高潮に達する将磨。
ゴブリンソルジャーは普通のゴブリンよりサイズが少し大きくなり小学生高学年ほどの大きさになっていた。
そして筋肉もゴブリンに比べるとしっかりしておりマッチョと言って差し支えないほどだ。
そんなゴブリンソルジャーを見てテンションを上げない方がおかしい。
将磨はそのテンションのままボス部屋へ突入する。
ボスは普通の髪無しゴブリンが五体だ。
ゴブリンソルジャーにランクアップした新生ゴブワンを前面に出して他の髪有りゴブリンを支援に回せばあっという間に五体の髪無しゴブリンを倒してしまった。
ランクが上がるというのは凄いことだと実感した瞬間だった。
そして今度は『転移の渦』に入る前に髪有りゴブリンを一体だけ残しカードに戻す。
@ゴブリンソルジャー
説明:ゴブリンソルジャー〈ランクG〉を召喚できる。
レアリティ:★
残数:九
カードになったゴブリンソルジャーを見てみると、残数が増えていた。
ランクアップの副作用だと思うことにした将磨は残していた一体の髪有りゴブリンを見る。
「ゴブジュウ、『転移の渦』に入れ!」
カードから召喚した髪有りゴブリンを『転移の渦』に入れたらどうなるのか、その検証だったが、ゴブジュウは『転移の渦』の上に乗っても姿が消えることはなかった。
「つまり召喚した魔物は『転移の渦』を使用できないのか」
そう結論づけてゴブジュウをカードに戻して『転移の渦』に入る将磨。
『プルル~、プルル~、プルル~、プルル~』
スマホのアラームが鳴る。
これは帰る時間を予め設定していたのでその時間がきた合図だ。
折角興が乗ってきたところなのにと将磨はアラームを無視しようかとも思った。
しかし帰る時間は将磨自身が決めたことなので、それを反故にしてこのまま探索を続けるのは止めておこうと自制するのだった。
ダンジョンの入り口に設置されている改札口もどきを通り外に出る。
本来ならその足で〖探索者支援庁〗の庁舎内にある買い取りセンターに向かうのだが、今日の将磨の入手したアイテムは魔石カードが三枚とゴブリンカードが多数だ。
ゴブリンソードのカードもあったが、これはゴブリンをゴブリンソルジャーにランクアップさせるのに使ってしまったので今はない。
(換金は今度でいいや)
そう考えた将磨はロッカールームで着替え帰宅するのだった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
1
-
-
52
-
-
3395
-
-
4112
-
-
2265
-
-
11128
-
-
15254
-
-
337
-
-
149
コメント