ガベージブレイブ【異世界に召喚され捨てられた勇者の復讐物語】

なんじゃもんじゃ

ガベージブレイブ(β)_060_ギルド長

 


 冒険者ギルドを訪れた。ワイバーンは果たしていくらになるのか?
「ワイバーンの査定を聞きにきた」
 昨日の失禁痴女受付嬢がいたからそう話しかけた。すると失禁痴女受付嬢は顔を引きつらせて答えた。
「なんの話でしょうか?」
「はぁ? 昨日渡したワイバーンのことだ。いくら年増でもまだボケるほどじゃないだろ?」
「誰が年増ですか!?」
 俺が失禁痴女受付嬢と話していたら、ギルドの入り口が騒がしくなったので視線を向けてみた。
 そこには昨日のギルド長が豪華な鎧を着こんだ男と談笑していた。
「騎士団長殿、それではワシはこれで」
「うむ、ワイバーンの討伐は苦労した。しっかりと査定をしてくれ」
 どういうことだ? あの騎士団長と呼ばれた男もワイバーンを討伐したのか? ……いや、違うな。あいつらは俺の持ちこんだワイバーンを横取りしたんだ。
「ご主人様、あの者たちは」
「ああ、ハンナの思っている通りだろう」
 ハンナだけではなく、一ノ瀬も俺と同じことを考えていたようで、とても怖い顔をしてギルド長を睨んでいた。


 再び失禁痴女受付嬢に向き直り、念のため確認をした。
「俺が昨日持ちこんだワイバーンはどうなった?」
「何を言っているのですか? 貴方のような登録したての初心者の冒険者がワイバーンなんて討伐して持ち込めるわけないでしょ? 当ギルドに持ち込まれたワイバーンはこのエンゲルス連合国の騎士団が命がけで討伐した物です。分かったらさっさとそこをどいてください」
「ご主人様、この受付嬢を今すぐ丸焼きにしてやります!」
「カナン、抑えろ」
 俺のすぐ後ろで失禁痴女受付嬢に殺意を向けたカナンに対して手を上げて制止した。
「しかし……はい、分かりました……」
 カナンはしょんぼりして項垂れた。俺の為に怒ってくれているカナンの頭を優しくポンポンしてやると笑顔が戻った。
「でも、いいの? このままでは横取りされちゃうよ」
「一ノ瀬、これから俺がやることで俺を嫌いにならないでほしい。そう願っているよ」
「私がツクル君を嫌いになるわけないじゃない!」
「OK、ここは引くぞ」
「「「はい」」」
 話がまとまったので、失禁痴女受付嬢にもう一度向き直った。
「あんた、良い度胸だな。ワイバーンを単独で倒せる俺を怒らせてただで済むと思っているのか?」
 殺気を当てて失禁痴女受付嬢に凄んでおいた。すると失禁痴女受付嬢はまた失禁して「あわわわ」と声にならない声を出していた。


 踵を返してギルドを出ようとしたら、五人の冒険者が俺たちの行く手を阻んだ。
「てめぇ、何いきがってるんだよ!?」
 髭もじゃの小汚い男が凄んできた。
「てめぇのようなガキがワイバーンを倒せるわけねぇだろうが!」
 別の臭い男も凄んできた。これ、ハンナよ、鼻を押えてやるな。こいつらの体臭が臭くても……臭いからいいか。


「どけ、邪魔だ」
 今の俺に絡んでくるとはいい度胸だ。一度だけ警告をしてやるから、さっさとどけ。
「はぁ、ふざけてるんじゃねぇよ!」
 三人目の男が殴りかかってきたので、ハンナが動きそうだった。しかし、俺はハンナを制止して男の拳を受け止めてやった。
「なっ!? は、放せ!」
「殴りかかってきた以上、無事に済むと思うなよ」
 バキッ。男の拳を握りつぶしてやった。
「ウギャーーーッ!?」
 そのまま無造作に男を放り投げてやると、男の肩が脱臼する音がして飛んでいった。
 男は俺たちのやりとりを静観していた他の冒険者たちが飲食する場所に飛んでいってボーリングよろしく、冒険者たちを倒していった。
「てめぇ何しやがる!?」
 最初に絡んできた男が怒り心頭といった表情で俺に怒鳴ってきた。
「やられたらやり返す。当然だろ?」
 俺は男たちを馬鹿にするような口調でいってやった。
「ふざけやがって、おいやっちまえっ!」
 武器を抜いて襲い掛かってきた四人の冒険者の両手を切り飛ばす。四人は何をされたかも見えなかっただろう。
 ボトボトと自分たちの手が落ちて肩口から血を吹き出した四人は泣き叫んで痛がった。
「ななななな、何をやっている!?」
 ギルド長が慌てて出てきた。お前が建物の陰に隠れて見ていたのは知っているんだぞ。
「ギルドは冒険者通しの争いには不介入だろ? なんでギルド長が出てくるんだ?」
 飄々と聞いてやった。
「馬鹿言え!? こんなもの争いではない! 一方的なリンチだ!」
「ふ~ん、一方的に俺のワイバーンを盗んだ奴が何をいっているんだよ」
「どんな証拠をもってワシがワイバーンを盗んだと言うのだ!?」
「ふっ、なら、俺がリンチをしたという証拠はあるのかよ」
 にたーと笑って言ってやった。
「これだけの証人がいるだろ!」
 俺は周囲にいる冒険者ギルドの職員や冒険者を見た。笑っている奴も中にはいるが、いつまで笑っていられるかな?
「証人か、なら証人を全員殺せばいい」
「なっ!?」
「忘れたのか、俺はワイバーンを単独で殺せるんだぜ。それも無傷でな」
「「「……」」」
 冒険者ギルドの中を静寂が支配した。奴らは分かったようだ。証人がいるなら消せばいい。証人がいなければ俺を罪に問うことができないのだと。
 そして、俺はワイバーンを単独で倒せるのだと。
 さっきまでにやけ顔だった奴も恐怖で引きつった顔をしている。


「そ、そんなこと―――」
「できるぞ。俺の後ろには俺と同じくワイバーンを単独で倒せる仲間がいるからな」
 そう言うと殺気を振りまいてやったら、ギルド長はへなへなと腰が砕けて尻もちをついた。おいおい、おっさんが漏らすなよ。
「お、俺たちは関係ない」
「そうだ、俺たちは関係ないぞ!」
 俺とギルド長のやりとりを見ていた奴らが自分は関係ないとアピールをし出した。
「そんなことは俺に関係ない。お前たちが証人になるって、このギルド長が言うから殺すんだ」
「「「ひぃーーーっ」」」
 冒険者たちが情けない声を出して泣き出した。仕方がないから、助け船を出してやるか。
「しかしだ、このギルド長が」
 俺は周囲を見回して溜を作った。
「俺が一方的なリンチをしたなんて世迷言を言わなければ、ここにいる奴を殺す必要はないよな? それと、俺にワイバーンの代金を渡すのも忘れるなよ?」
「ギルド長! あんたが不正なんかするからだ! 早くこの方に代金を支払えよ!」
「そうだ! ギルド長がこの方に痛い目を見させろって言うからこんなことになったんだ! ギルド長のせいだ!」
 冒険者たちはあっさりとギルド長を裏切った。


「まぁ、ギルド長がウンと言わなければ、誰かがギルド長を消せばいいんだ。あとは受付や隠れている職員に騎士団長も消えればお前たちの命を奪う必要はないぞ」
「「「ほ、本当か!?」」」
「俺はそこの泥棒ギルド長とは違って嘘は言わないぞ~」
 すがるような目で俺を見てくる冒険者たちに手をひらひらさせて答えた。
「お、お前たち、止めろ!」
「「「アンタがわるいんだ!」」」
「わ、分かった! ワイバーンの代金を払う! それにあいつらは喧嘩を売った相手に返り討ちにあっただけだからギルドは一切関知しない!」
 殺気だった冒険者たちに詰め寄られたギルド長が折れた。
 ギルド長が俺の足元で土下座しながら職員にワイバーンの代金を持って来いと指示をした。


 数分後、俺の目の前には金貨が詰まった革袋がいくつも置かれていた。
「わ、ワイバーンの代金の一千万ゴールドだ……です。お納めを」
 冒険者の誰かがゴクリと唾をのむ音がした。大金だから仕方がないな。
「何を言っているんだ? ワイバーンの代金は五千万ゴールドだろ? 残りを早く出せ」
 追い打ちをかけてやる。調子に乗った罰だ。
「ご、五千万!? そんな大金」
「嫌なら、俺の好きにさせてもらう」
「「「ギルド長!」」」
 俺が冒険者たちに殺気を向けたら冒険者たちがギルド長に詰め寄った。
「分かった! あと四千万持ってこい!」
「初めから大人しく全額支払えばいいのだ。ピンハネなんか考えているからこんなことになるのだぞ」
「ぐぬぬぬ」
「何だ、不満か?」
「「「ギルド長!」」」
「不満などない! ワシの勘違いだ」


 俺は冒険者ギルドでワイバーンの代金である五千万ゴールドを手に入れた。これでめでたしめでたし。
 人間、欲をかくのはいけないというよい見本となっただろう。これに懲りて真面目に職務を全うするのだぞ、ギルド長君。


 

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