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なんじゃもんじゃ

072 ブリュト島

 


 俺の島に名前を付けろと国土地理院の役人が訪ねてきた。
 この国土地理院というのは神聖バンダム王国の貴族の領地を管理している部署で、地図の管理もこの国土地理院の仕事だ。
 今まで神聖バンダム王国の地図上になかった島を追加するのに名前が必要だからと言う理由で俺を訪問しているのだ。


 ネームセンスの欠片もない俺にそんな事を言うのかと思わないでもないが、役人に愚痴っても仕方がない。
 だから適当に付けておいてと言ったら、後々面倒になるので俺に決めろと返されてしまった。
 役人が勝手に決めたと言われない為の予防策だね。
 俺がそんな事言うわけないのにね。


 メッチャ考えたけど良い名前が浮かばなかったので無難に『ブリュト島』と命名した。
 何の捻りもないが、俺の所有物と分かり易いし、ブリュトゼルス辺境伯家との繋がりも直ぐに頭に浮かぶ名前だろう。


 その後、再びブリュト島を訪れゴーレムの仕事の結果を目の当たりにする。
 こいつら・・・


 ・・・やるじゃないかっ!


 予想以上の成果だ!
 屋敷の外装は既に出来上がっており、あとは内装を施したり調度品を設置するだけになっていた。
 見た目も立派な屋敷だし、その周囲には高さ15mほどの塀がしっかりと屋敷を守っている。
 屋敷は地上3階、地下2階の5層構造になっている。
 ゴーレム達には土と風の魔法が使えるようにしてあったのが良かった。
 この2属性で大概の工事はできるし、地下を掘った時に出た土や石に岩は塀の材料にもなっている。


 田畑も順調に進んで今は20haヘクタールほどの土地が開墾されている。
 勿論、この開墾で伐採した木材や不要な石や岩が屋敷や塀の材料にもなっている事は言うまでもない。
 魔物駆除も順調でマジックバックには大量の魔物の死体が収納されていた。
 ただ、魔物駆除用の20体のゴーレムは戦闘を行うので五体満足なゴーレムは存在しない。
 自立歩行ができるのが14体で、6体は大破若しくは歩行が出来ない破損を負っている。
 その為に戦闘用ゴーレムは全て使用する素材を見直し石のゴーレムから鋼のゴーレムにグレードアップしている。
 銅や鉄を通り越して鋼にしたのは、材料が容易に手に入る鉄鉱石を使え更に柔らかい鉄よりも強度を上げる為だ。
 アイアンゴーレムよりスチールゴーレムの方が強度が上なのは言うまでもない。


 それと追加で10体のゴーレムを作り出し、地下資源を採掘するように命令を出している。
 採掘作業は過酷だと思うので戦闘ゴーレム同様に素材は鋼を使っている。


「フィーリア、カーテンの色は何色が良いだろうか?」


「はい、寝室は淡いピンクで統一し、リビングはベージュ色、廊下は白色で如何でしょうか?」


「じゃぁ、それで作るからフィーリアはカーテンを付けて行ってくれ」


「はい!」


 既に屋敷内の全ての窓ガラスは嵌め込んだのでカーテン作成に移っている。
 流石にゴーレムでは細かい事ができないので、細かいところは俺たちが作業している。
 カーテンが終わったらキッチンの水回りを整備、その次はトイレに風呂、今日中に寝室までいきたい。
 ゴーレムの改造と増産で予定外の時間を使ったので、小物は作り出すだけでその後はフィーリアに任せ、大物は俺が最終まで面倒をみる。


 キッチンの水回りは水道をマジックアイテム化して魔石から魔力供給して誰でも水を出せるようにして、マジックコンロも設置し食器棚も作っておく。
 食器棚の中身はフィーリアに渡してあるマジックバックに入っているので後はフィーリアがやってくれる。


 トイレは水洗式で、流した汚物は闇魔法などで分解加工し綺麗な水と栄養素などにし、栄養素は田畑の肥料として使う。


 風呂は男女それぞれ10人はゆったり入れる物を作り、男女共にドラゴンの口から常時お湯が流れ落ちるタイプにしている。
 シャワーもそれぞれ5つずつ作り、お湯や水が出るようにしてあり、お湯と水の供給もマジックアイテムだ。
 更に石鹸、シャンプー、リンスを常備して風呂は完了だ。


 俺の寝室にはキングサイズより大きいサイズのベッドを設置し、ゆったりと寝られるようにして、その他の家具を設置して行く。
 フィーリアの部屋も同様にベッドや家具を設置して女の子らしく可愛いデザインにしている。


 ここまでで夕方になってしまったので、今日は屋敷に帰る事にする。
 本当はここに泊まっていきたいのだが、夕食は母上と一緒に摂ると約束しているので帰らなければならない。


「フィーリア、残りは明日以降にして今日は帰ろうか」


「はい。しかしこの屋敷をこのままにして良いのでしょうか?」


「大丈夫だよ、屋敷の周りには結界をはっておいたから魔物が入ってくる事はないし、人間がここを訪れる事もないだろうからね」


「そうですね」


 一応、屋敷を建築していたゴーレムには侵入したものを無力化するように命令して、塀を作っていたゴーレムには農耕地の柵を作るように命令しておいた。


 人間でこの屋敷や田畑を管理する者もほしいな。
 もう少し開発が進んだら本格的に考えよう。












 イグナーツは生後1ヶ月ほどしか経っていないので、首も据わっていない。
 だから抱き上げるのにも神経を使ってしまう。


「クリストフ、そのような抱き方ではイグナーツが苦しいと言っていますよ」


「そ、そうですか?・・・ふ~、小さいので抱くのも一苦労ですね」


 抱いていたイグナーツをハンナに渡し額の汗を拭う。


「うふふ、クリストフの方がもっと小さかったのですよ。それはもう触ったら壊れそうな感じでしたよ」


 母上は事ある毎に俺の小さかった頃とイグナーツを比べて話してくれる。


「あ、そうだ。これをイグナーツに」


 照明の光を浴びてキラキラと輝いている真っ白な布を母上に渡す。


「まあ、これをイグナーツにですか?とっても綺麗な生地ですね。それに手触りもとても良いですね」


「む、この生地は・・・クリストフ、これはシルクスパイダーの糸か?」


 父上は目利きだ。
 シルクスパーダーの糸やその糸でできた生地なんて殆ど市場に出回らないのに一発で当ててしまった。


「そうです。偶々入手しまして、イグナーツの産着に丁度良いかなって思いまして」


「産着に丁度良いと言うのはクリストフぐらいだ。これだけでも100万Sは下らんほどの価値だぞ」


「可愛い弟へのプレゼントです。価値とかではなく気持ちですよ」


 父上は諦め顔で、母上は終始笑顔だった。
 後ろで給仕をしていたハンナをはじめとする侍女たちの顔は引きつっていた。
 ハンナたちの顔が引きつるのも無理もない、100万Sといえば1000万円相当なのだから。
 一般人が数年は余裕で暮らせる金額だ。
 まぁ、島に行けばシルクスパイダーは沢山居るので大量には無理でもシルクスパイダーの糸を安定的に供給する事もできる。
 また金の成る木を見つけてしまった気分だ。




 

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