チートあるけどまったり暮らしたい
068 王族も料理をするんだね
今日は納品の為に登城する事は舞踏会の時に話をしている。
その話を聞いてドロシー様が帰りに少しでも寄れないかと言うのでこうして寄ってみた。
元々、9時30分に納品する予定だったので、ドロシー様には午前中にはと言う話をしていたが、流石に11時30分を越えるとは俺も思っていなかった。
御者は荷馬車と一緒に屋敷に帰した。
フィーリアはブリュトゼルス辺境伯家の控え室で待っているように指示している。
流石に城内でフィーリアを連れて歩く事はできないので、フィーリアは納得はしていないが指示に素直に従ってくれた。
「ドロシー様、遅れてしまい申し訳ありません」
「クリストフ様もお忙しい身、お気になさらないで下さい」
ドロシー様は中庭でお茶を飲みながら俺を待っておられたようで、申し訳なく思う。
しかし普通にしていてもドロシー様は人形のように美しいのだが、お茶をのむ姿は優雅で気品が漂っており、流石は王族だと思う所作である。
しかもこの中庭は王城内とは思えない程の庭園になっており、小さな池の辺で丸い白テーブルに向って白い椅子に座っているドロシー様は絵になるほど美しい。
似非貴族の俺とは違うね。
しかし、学校のドロシー様と、城のドロシー様ではイメージが違う。
ツンとした雰囲気の学校でのドロシー様、気品溢れ優雅な仕草の王城でのドロシー様、このギャップが良いね。
ドロシー様に促され椅子に座るとドロシー様付きの侍女が俺にもお茶を入れてくれた。
そう言えば、朝食後にお茶で喉を潤したきり何も飲んでいなかったので喉がカラカラだ。
ふ~、生き返るぜ~。
てか、このお茶、とっても美味いな。
しかも飲んだことのない味だ、これだけ美味ければ屋敷でも出てきても不思議はないのだが、飲んだ記憶がないな。
「この紅茶は美味しいですね。・・・複数の葉をブレンドされているのですか?」
「よく分かりましたね。この茶葉は王家専用のブレンドがされているのです」
王家用の特別仕様でしたか、それなら飲んだ事がなくても不思議はないね。
しかし流石は王家仕様だ、美味い!
「お菓子もありますわよ」
ドロシー様の声に促されテーブルの上に置かれた菓子を見る。
「有難う御座います」
この菓子は雪のように白い衣を纏い、薄い黄色地に赤色と白色のコントラストが綺麗な、日本で言うショートケーキだ。
三角形に切り分けられたショートケーキをホークで切り取り口に持っていく。
俺の好みとしてはもう少し甘味を抑えた方がよいが、十分に美味しいと思えるショートケーキだ。
楽しくドロシー様と話をしながらケーキを頂き、美味しいお茶も空になった。
「このケーキと言われるお菓子は城下で大人気だそうですのでクリストフ様も見た事はあると思うのですが、如何でしたか?」
ショートケーキの事は俺も当然知っている。
元々、この世界には日本でケーキと言われるような菓子がなかったので、上白糖を広める為にケーキのレシピをタダで配布したのは俺だからね。
ドロシー様はどうやら俺がこのケーキを広めた人間だとは知らないようです。
「美味しいですね」
ここで少し甘味を抑えた方が好きですねとは言わないよ。
王族の出した物に文句を言うのは不敬にあたるしね。
「お口に合わなかったようですね」
「そんな事は」
「クリストフ様は困ったりすると眉間に僅かに皺が寄ります。その癖は昔のままですね」
ありゃ、俺ってそんな癖があるのか・・・
てか、癖は記憶が無くても踏襲されるのかよ。
しかし、ドロシー様はそんな事を覚えているとは記憶力が良いのですね。
「甘味を少し抑えるとより美味しくなると思います」
俺が手放しで美味しいと思っていない事が分かっている以上、正直に言った方が良いだろう。
「次に作る時にはそのように致しますわ」
「はい?次に作る?」
「はい、このケーキは私が作っておりますのよ。次はクリストフ様に美味しいと言わしてみせますわ」
ははは、王女がケーキ作りなんてあり得ないだろう。
侍女や料理人の仕事を奪ってはいけませんよ。
「開祖アキラ様は料理やお菓子作りがとてもお上手だったのです。ですから王族は料理の1つや2つはできるようにと幼少の頃の手習いとして覚えるのです。日頃から料理をしているわけではありませんわ」
俺の心の声に反応するようにドロシー様が説明をしてくれました。
ドロシー様はエスパーのように俺の心の声が聞こえているのだろうか?
あ、俺の癖を見ているのか?
「料理ができるドロシー様はきっと良いお嫁さんになりますね」
「えっ!?」
ん、何か悪い事を言ったか?
「そ、その、私は良い嫁になるでしょうか?」
顔を赤くし、モジモジしている。
もしかして・・・・・・・トイレか?
「少し長居をしてしまいましたね。そろそろお暇しますね」
「え、あ、・・・はい」
レディーにトイレを我慢させてはいけませんからね。
俺は気が利く紳士なのだ!
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