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なんじゃもんじゃ

037 ダンジョンアタック1

 


 5月は決闘以外は平和に過ぎて行く。
 ブリュト商会の売り上げも順調に伸び、フィーリアを始めとする売り子達に専属の客もつき、裏ではファンクラブも出来ているらしい。
 俺がそれを知ったのはつい最近の話で冒険者や傭兵だけでは無く王家や貴族に仕えている兵もらもファンクラブに入会しているらしい。


 ・・・王家に仕える兵までファンクラブに入会しており大丈夫なのかとも思うが、客がつくと言うのはブリュト商会にとっては良い事ではあるので現状で何も問題が無いなら特に言う事は無い。


 最近ではクラン対抗戦が迫って来ているので、カルラが過去に出された課題集とニラメッコしながら、アーダ、コーダと俺達クラン員に対策を伝授している。
 てか、このクランは『MIツクール』って言うクラン名なのにマジックアイテムは何時になったら作るんだ?


 カルラの行動は俺から見れば本末転倒で手段が目的になってしまっている様に見える。
 だが、カルラの熱の入れようを見ていると何も言えないな。


 そんな感じで5月は過ぎて行く。
 6月に入ると実戦講座で授業名の通りに実戦を行う事になる。
 どの様に実戦を行うかと言うと、王立魔法学校では幾つかのダンジョンを管理しており、俺達生徒はパーティー単位でダンジョンの攻略を行う事になる。


「今回、お前たちがチャレンジするのはダンジョンの中でも最もレベルの低い初心者用のダンジョンになる。このダンジョンは5層からなり現れる魔物もランクGやFばかりだ。しかしダンジョン内では魔物は強化されるので甘く見ると大怪我をしたり下手をすれば死ぬ事になる」


 ブルーム先生は一旦話を切り、生徒達の顔を見回し再び話を進める。


「最初は3・3・4パーティーで行動し俺達教師も付き添う事になる。今から一緒にダンジョンに潜るパーティーの組み合わせを発表する。パーティーリーダーの名前を呼ぶので、そのパーティーはそれぞれの先生の前に集まれ」


 何故か俺がパーティーリーダーに登録されている。
 登録時にカルラに任せたのが不味かった。


 ブルーム先生の付き添いの集団の時に俺の名前が呼ばれたので俺達のパーティーはブルーム先生が付き添う組となる。
 俺達以外に2パーティーの合計3パーティーとブルーム先生だ。


 実は他の2パーティーのメンバーと俺は話したことがない・・・と言うか名前も覚えていない・・・ペロンに同級生の名前くらい覚えようと呆れられてしまった。


 同級生なので名前ぐらい覚えておけよと思うかも知れないが、友達はカルラとペロンがいるので今はそれで十分だ。
 貴族なので上辺だけの付き合いをとも思わない事も無いが、俺自身にそれ程余裕があるわけではないので今はそれで良いと考えている。
 交友関係は徐々に広げていこう。


 ペロンの説明によると俺達と一緒の組になった2パーティーのメンバーは平民階級の集まりだそうだ。
 俺達のクラスは入学試験の上位者が集められたクラスなので平民は少ないのだが、今年の1組には7人の平民が在籍している。
 俺の友達でパーティーメンバーのペロンも平民階級なので、残った6人がこの2パーティーのメンバーなのかと思ったが、5人だと言う。
 で、1人は男爵家の三女だそうだが、その娘もカルラ同様平民を蔑むような事はしない娘だと言う。


「クリストフ、お前が全体のリーダーだ。この3パーティーを纏め1層のボスを倒せ」


 え、俺?
 え~面倒だよ~。


 俺の心の声が聞こえたのか、ブルーム先生は「お前、首席だろ!」って威圧してきました。


「クリストフです。ブルーム先生に指名されましたのでリーダーをします。宜しくお願いします」


 一応、全員が自己紹介してくれたので、名前と顔は記憶した。
 ・・・心理の眼を使えばいつでも名前は分かるのだけど、そう言う問題じゃないしね。


 しかし今更だけど、パーティーって前衛と後衛がいて前衛が魔物を抑えている間に後衛が魔法でダメージを与えるって感じじゃないのか?
 後衛だけの構成ってパーティーとしてはいびつだよね?


 ブルーム先生に促され俺達はダンジョンに入って行く。
 他の2組は既に中に入って行ったので俺達が最後になる。


 ダンジョン内は薄暗いが真っ暗では無い。
 壁や天井が僅かに光っており俺達の視界を確保してくれている。
 心理の眼で見てみると名称がダンジョンの壁で、ダンジョン内の魔素を変換し発光させるとだけ説明が出てきた。
 少し持って帰り研究してみよう。


 ダンジョンに入り少し進むと十字路に出る。
 直進、左折、右折、どっちに行くのか誰が決めるんだと思っていたら、ブルーム先生から直進するようにと指示が出る。
 どうやら3組でそれぞれ進む道が決まっているようだ。


 後で分かった事だけど、直進の道がボス部屋にまで一番遠い道だった。


 最初に現れた魔物はブラックラビットと言うランクGの魔物だ。
 ブラックラビットは4匹が固まっているので、1匹だけと言う訳には行きそうにない。


「ルームさん、土属性でしたよね?アースバインドって使えますか?」


「え、あ、はい。アースバインドなら使えますが、4匹全ては拘束出来ないと思います」


 土属性の下級魔法であるアースバインドなら魔物を拘束してタコ殴りにできると思ったのだが、ルームと言うドワーフの男子生徒のアースバインドでは4匹を拘束出来ないと言う。


「ブリジットさんは闇属性でしたね?ダークバインドは使えますか?」


「はい、最近使える様になりました」


「では、ルームさんは左の1匹、ブリジットさんは右の1匹、中央の2匹は私が拘束しますので、他の方はそれぞれのパーティーメンバーが拘束したブラックラビットに得意な魔法か魔術で攻撃してください」


 俺の指示で自分たちの役割が分かったようなので、全員が頷く。
 俺が合図をするとルームさんとブリジットさんが魔法陣に魔力を流しアースバインドとダークバインドが発動する。
 俺も2人に合わせてダークバインドを中央の2匹に放ち、これで4匹全てのブラックラビットが拘束されたので、他の6人が攻撃魔法を放つ。


 流石に動けない魔物をタコ殴りするだけなので、ほどなくして4匹の魔物は息絶える。


 死んだ魔物からは魔結晶と冒険者ギルドや商業ギルドが買い取ってくれる部位を剥ぎ取る事になるのだが、俺としてはこの剥ぎ取り作業の方が戦闘より時間がかかるので、まどろっこしい時間だ。
 剥ぎ取り作業は魔物討伐とセットになる作業だし、この剥ぎ取り作業が下手だとギルドが買い取る時に安く買い叩かれる事になるので意外と重要な事なのだ。


 

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