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なんじゃもんじゃ

024 入学2

 


「ちょっと貴方」


 金髪の巻き髪が特徴の長身の豪華なドレスを着込んだ女の子が従者を4人も連れて教室に現れた馬鹿に声を掛けた。


「なん・・・だ・・・」


 馬鹿も声を掛けたのが王女だと気が付いたのだろう。
 ははは、世間知らずの俺でも王女の顔ぐらい知っているのだ、殆どの貴族が知っていてもおかしくは無い。
 けっして、ペロンに教えて貰った訳ではないぞ!
 ペロンはボソッと独り言を言っただけだ。


「従者を教室に連れてきてはいけない事を知らないのですか?今直ぐ帰しなさい」


 王女に言われたら何も言い返せないのかよ。
 ああぁ、従者を帰してしまったよ、気合入れろよなっ!
 あまりの馬鹿さ加減に笑いが我慢できないじゃないか!


 あ、思い出した!
 あれってバカボンだわ。
 取り巻きのソバカス豚や頭の悪そうな雑魚キャラが居ないな・・・あいつら入試に落ちたか?それとも別の組なのか?


 うわっ、こっちを睨んできたぞ。
 俺が笑っていたのを見つけたらしいが、バカボンだから睨まれても凄みが足りないし、怖くは無いんだけど。


 あ~あ、バカボンがこっちに歩いてくるんだけど、ウザそうだ。
 と思ったら教師が入って来た。


「席に着け!」


 バカボンもこっちに来るのを諦めて、席についたが俺にロックオンしたままなんだろうなぁ~。


「先ほど、従者を数人連れてきた馬鹿が居ると聞いたが、お前たち知っているか?」


「先生、その者達でしたら既に教室にはおりません」


「ん?そうか、君が注意をしたのか?」


 教師は発言したのが王女だと分かった様だ。


「はい、不肖の身ながら新入生総代を申し付かっておりますので、注意をさせて頂きました」


 王女にしてはへりくだった物言いをする。
 この王立魔法学校の校風を把握しているようだ。


「うむ、では君に免じて今回はその馬鹿が誰か追求する事はしないが、その馬鹿に一つだけ言っておくぞ。この王立魔法学校は貴族だろうと平民だろうと区別はしない。嫌なら直ぐに退校届けを提出しろ。分かったか馬鹿者が!」


 教師とは言え、生徒をここまで馬鹿呼ばわりして良いのだろうか?
 これで大人しくなれば良いが、あのバカボンは人の言葉を理解しなさそうだし、大人しくはしないだろうな。


 教師の名前はブルーム・ケツレヘムと言うらしい。
 本人曰くケツレヘムと言われるのは好きではないのでブルームと呼べと言っている。


 ブルーム先生が1組の出欠を取ってから注意事項の簡単な説明があり、大講堂で入学式となった。


 入学式の式場に俺達が姿を現す頃には在校生や保護者は席に着いており、俺の家からは父上と母上が出席をしている。
 てか、父上しか来ないと思っていたが、身重の母上の体は大丈夫なのか?


 俺が父上達を簡単に見つけれたのは父上達が隔離されたエリアに居たので直ぐに分かったのだ。
 幾ら学校として生徒に差別はしないと言っているとは言え、現役の国王が出席する以上はそれなりの警備が必要なのだろうし、上級貴族に万が一の事があった場合には王家と貴族の間に亀裂が生じないとも言えないからな。


 今更だが、国王まで出席かよ!
 王女が入学しているからありなのかも知れないが一国の王がこんな処で大した護衛も付けずに良いのだろうか?


 最初に司会の教師の合図で生徒も教師も保護者も国王に敬礼をする。
 そして校長の話となって・・・長いよ!
 ついで在校生代表の挨拶・・・長いって!


「-----在校生代表、クリュシュナス・フォン・ブリュトゼルス」


 あっ、あれが俺の2番目の姉上なのか!


 新学期の準備と新入生を迎えるのに忙しいから家に帰って来たのが2日だけで、しかも俺も商会の事が忙しくて泊りで仕事をしていたので、未だに会った事がなかったのだが、思わぬ処でお目にかかれた。


 え?入寮して直ぐに挨拶に行けば良かったって?
 確かにそうなのだが、商会を全てフィーリア達に引き継ぐのに忙しくて寮に帰って来るのが門限ギリギリで挨拶に行けなかったのだ。
 態とじゃないからね。ただ忘れていただけだからね。


 ・・・今日は挨拶できると思っております!


 次いで、来賓の挨拶があり、最後に新入生総代の王女様が登場だ。


「-----新入生総代、ドロシー・フォン・バンダム」


 寝ていました。すみません。
 ペロンに起こして貰うまで爆睡してました。
 ここまで我慢したんだから許してよ。
 こう見えても飛ぶ鳥を落とす勢いのブリュト商会の会頭なので忙しかったのよ。
 睡眠時間を削って帳簿の確認とか新商品の開発とか色々やっているのですよ。
 これもまったりの為の先行投資ですよ!


 それよりも国王の傍にいる護衛騎士から視線を感じるのですが・・・
 およよよ!
 あれはもしかして、もしかすると、ジムニス兄上ではないか!
 こう言う時、心理の眼って便利だよね!


 ジムニス兄上は俺が王都に上京してから1度も屋敷に戻って来ていないので、始めて顔を見ますよ。
 ジムニス兄上とエリザベート姉様は共に任務で地方に行っていたと聞いていたのだが、帰って来ていたのか。


 こうして見ると父上に良く似ている・・・のか?
 眼は母上似かな。


 これで会った(見た)事が無いのが、エリザベート姉様だけとなった訳だ。


 さて、入学式も終わり俺達は早々に開放された。
 全寮制なので保護者と最後の別れをさせる為だろう。
 死ぬんじゃないからね!


 しかし、ここで思わぬ人に出会った。


 そう、長女のエリザベート姉様だ。
 エリザベート姉様は準騎士なので国王の周辺では無く少し離れた処での警備をしていたそうで、少しだけ時間を貰って来たそうだ。
 ・・・国王の警備がそんなんで良いのか!


「初めまして、ジムニス兄上、エリザベート姉様、クリュシュナス姉様。クリストフです」


「・・・僕達はクリストフの事を良く知っているので初めてと言われると、記憶が無くなったんだなと痛感するよ」


「そうですね。私は小さかった頃のアナタを抱っこした事もあるのよ・・・」


「で、でも記憶が無くなってもこうして元気なクリストフの姿を見ることができて私は嬉しいよ!」


 エリザベート姉様は俺を抱きしめ中々放してくれなかったし、クリュシュナス姉様も俺より低い背なのに俺の頭を撫で回してきた。


 どうやら俺の兄姉達は俺を愛していてくれている様だ。
 嬉しい限りだ。


「クリュシュナス姉様には寮に入ってから直ぐに挨拶に伺おうと思ったのですが、忙しくて行けませんでした。すみません」


「そうね、では暫くは私と一緒に夕食を摂ると言う事で許してあげます」


「はい、喜んで!」


 

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