チートあるけどまったり暮らしたい
016 商会設立
日本人だった頃の俺は普通の会社員だった。
エリートコースでもなく、本当にそこら辺に転がっている様なと言ったら怒られるだろうが、そんな会社員だ。
一流とは言えない高校に、一流とは言えない大学を卒業し、一流とは言えない会社に就職した普通の日本人だった。
趣味は競馬と月に1度のデリヘルさんだった。
競馬だって決められた範囲の金額で遊ぶ程度のものだし、少しだが貯金もあった。
残念ながら日本人の頃には結婚は出来なかったが、彼女は居たことはある。・・・妄想ではないと思いたい。
・・・ごく普通の日本人だったと思う。
俺が勤めていた会社は一族経営だったのだが、俺の上司は俺より2歳年下の創業者の一族だった。
そんな上司は創業者の一族って事で部長になっていたが、能力は最悪だった。
この上司のミスの尻拭いや言動に振り回されるのが所属していた部署の仕事なのかと言う感じだった。
そんな上司ともなんとか上手い事やっていた方だと自分でも褒めてやりたい。
で、今の俺なんだが、今の俺は貴族の次男坊だ。
しかも大貴族と言われるブリュトゼルス辺境伯家の次男坊なのだ。
あの頃の上司のようになりたく無いとだけ思っている。
この世界に転生して・・・しなければならない事は特に無いだろう。
あるなら俺を転生させた神様なり何かが指示なりお願いなりをして来ると思う。
・・・天啓なんて怪しいギフトは持っているけど取り敢えず無しって事だと思っている。
だから好きな事をして生きようと思う。
・・・今のところ、これだと言うものは無いが、その内見つければ良いと思う。
今はブリュトゼルス辺境伯家の無駄飯食らいでも良いし、子爵になって小さな町を経営するでも構わない。
つまり貧乏をしたり苦境に立たされなければそれで良いと思っている。
で、日本の頃に比べればやりたい事をやるにも親の威光と言うものが使えるだけに色々とアドバンテージがあると考えれば自分のやりたい事や能力を活かした事をしてまったりと生きて行くには丁度良い環境だ。
ただ、戦争は勘弁してほしい。
現状、戦争があってもかなり無双ができると思うのだけど、暗殺のターゲットなんかにされた日には洒落にならんしね。
そんなわけで今の俺は入学準備を進めつつ商売についても色々話を進めている。
無理やり話を変えるなって?
いや~ゴメン、ゴメン。
つまり俺の長所でもあり、興味が尽きないマジックアイテム作りを活かして金を稼げる環境を作っておくのだ。
以前、聞いた話では俺はいずれ子爵に叙爵されて小さな町を任される事になる予定だが、この話を聞いた頃と違い俺は健康になったし、今や俺は魔法の天才と父上に認識されてしまっているので、今後どうなるか分らない。
当初は病弱な俺を不憫だと思い子爵にと考えていたが、今では宮廷魔術師を足がかりに国の重職に就く事も夢ではないと父上は思っているようだ。
・・・父上も色々考えているようだ。
あくまでも父上がね。
それと父上に限って俺を飼い殺しにするような事はないと思うが、家の存続と個では家を取るのが貴族だし、俺がその立場でもそうすると思う。
・・・俺的には好きな事をさせてくれるのであれば飼い殺しでも良いのかな?
あと、未だ会っていない兄上が俺を疎ましく思う事もあるかも知れない。
なので、将来の事を考えると商会については俺名義でブリュトゼルス辺境伯家とは完全にとは行かないが分離させておく方が良いと思っている。
商会を作って金を稼げる環境が出来ていればどう転んでも何とかなりそうだし、今ならブリュトゼルス辺境伯家の威光を使い放題だ。
なので父上を説得するのに事業計画書まで作ってしまったよ。
商会を設立するのに商業ギルドで第三号商権を100万Sで購入し、ブリュト商会を立ち上げた。
この第三号商権とは王都内での商売(販売)を認めるもので、年間100万Sを商業ギルドに上納する必要がある。
この100万Sの上納金の内、70万Sは国への税で30万Sは商業ギルドの年会費となっている。
上納金が日本円で1,000万円相当なのでそこそこ高額なのかとも思うが、中小企業の小の方だと思えばこんなものなのかも知れない。
で、俺のブリュト商会は王都限定の小規模販売権を得たので店を開く事にした。
但し、クッションについては今まで通りゼブラ商会に卸す事で話が付いているので、それ以外のマジックアイテムなどを販売する事になる。
ここでバッサリ切って遺恨が残るのも避けたいし、何より俺のマジックアイテムを売ってくれた恩もある。
先ず最初に生産したのはポーションだ。
ポーションの作り方は2通りあり、俺の場合は水属性と無属性で作った魔力水に光属性の回復魔法の効果を付与する物だが、液体なので魔法陣が書き込めないのだ。
つまりポーションの効果には時間制限がある。
俺のような作り方をしたポーションは一般的に生産から1ヶ月程度で効果が弱くなって行き、2ヶ月もすると唯の水になってしまう。
まぁ、冒険者や傭兵に兵士は怪我をする可能性が高いし、光属性の回復魔法を使える者は少ないのでポーションは消費され易いアイテムなので問題ないだろう。
因みにもう1つの作り方は錬金術のポーションで薬草を元に作り出す方法だ。
現代のポーション作りはこの錬金術が主流で俺のような魔力付与型のポーションは滅多に市場に出ない。
市場に出ない理由は簡単で、水属性と光属性を持つ人が少ないのと、作成時の魔力加減が難しいからだ。
あ、水属性と光属性は2人で分業しても良いけど、魔力にも相性があるみたいなのであまりお勧めはしない。
次の商品は力のリング、守りのリング、ファイアボールリング、ウォータリングの4種類のリングだ。
力のリングは【筋力】を20UPさせる物、守りのリングは【耐久】を30UPさせる物で想定した用途としては兵士や冒険者などの戦闘職の能力UPと一般人で力仕事に就いている者の強化だ。
そしてファイアボールリングは火魔法のファイアボールを放つ事ができる物で、想定した用途はそのまま戦闘である。
このファイアボールリングは火魔法が使えない人でもファイアボールを放てるので、ファイアボール自体の攻撃力はそれほどでも無いが戦闘時の牽制などに使えると思っている。
ウォータリングはコップ1杯程度の冷たい水を出す物で、こちらの想定した用途は飲み水だ。
家庭用でもキャンプ用でも結構な需要はあると思っているので、一番多く生産している。
商会についてはフィーリアを店長にしている。
ただフィーリアは奴隷なので侮られる可能性が極めて高い。
よって俺の奴隷からは解放し平民となっている。
それとまだ幼いのでブリュトゼルス辺境伯家の兵士を1人派遣して貰う事になっている。
勿論、派遣料は払うし店が軌道に乗れば普通に人を雇ったり奴隷を買っても良いと思っている。
「傷ポーションが1,000本、血液ポーションが600本、マナポーションが600本、中級傷ポーションが200本、中級血液ポーションが200本、中級マナポーションが200本」
フィーリアが店の倉庫に保管している在庫を確認している。
この倉庫は俺の時空魔法で時間経過を停止させているので、ポーション類の劣化を防げるし、扉には魔力の認証機能を付与しているので俺とフィーリア以外は扉を開ける事ができない。
無理に扉を開けようとしたら雷魔法のスタンで気絶する事になるだろう。
「力のリングが200個、守りのリングが200個、ファイアボールリングが200個、ウォータリングが400個、それと上白糖が500壷」
この王都で俺は面白い木の実を見つけた。
その木の実を心理の眼で確認してみたら糖分が35%もあったので闇魔法の分解で糖分を抽出して出来たのが上白糖だ。
この木の実は油花と呼ばれる植物の種になるのだが、名前の通り油分が豊富で基本的に王都では食用油に加工しているので、上白糖の事は皆知らないようだ。
だから油分を抽出したカスを手に入れ糖分を抽出しているので原価は壷代くらいしか掛かっていない。
一般的に砂糖は1壷4Kg程入っている物が市販されているのだが、白色では無く茶色で所謂ザラメのような物しか流通していない。
なので上白糖のようなきめ細かく白い砂糖はこの世の中に無いし、値段もザラメが1壷4万Sもするが俺の店の上白糖は半額の2万Sだ。
これで売れなかったら泣くぞ。
「傷ポーションは3,000S、血液ポーションも3,000S、マナポーションは5,000S、中級傷ポーションは1万S、中級血液ポーションも1万S、中級マナポーションは1万5千S、力のリングは5,000S、守りのリングは7,000S、ファイアボールリングは1万S、ウォータリングは8,000S、上白糖は2万Sで売ってくれ。それと定価で5万S以上買ってくれた人には2割、10万S以上買ってくれたら3割値引きして良いからな」
「分かりました」
実を言うとポーション類もリング類も父上から注文を貰っている。
まぁ、ブリュトゼルス辺境伯家の家臣は王都だけでも1,000人以上も居るので実験的にポーションを使える環境は揃っているし、リングの効果に関しては訓練の中で実感できるので大変評判が良い。
父上も1,000人全ての家臣にリングを与える事は流石に出来ないし、それをすれば領地に居る家臣にもと言う話になるので、緊急時用に300個ずつストックするようだ。
それでも大きな金が動くので、家族割りをして一般価格の5割で販売する。
俺の店の売り上げは月に50万Sを想定しているので、ほぼ1年分の売り上げが転がり込んでくる。
他にはポーション類も通常の3種類を毎月30本、中級の3種類を月に10本購入してくれるそうだ。
なのでポーション類の保管をする薬品庫として店の倉庫と同じ時間停止型の倉庫を王都の屋敷にも作っておいた。
コメント
くあ
なんかすっごい進んだ。