チートあるけどまったり暮らしたい
フィーリア side1
私の名前はフィーリアと言います。
フィリアム伯爵様が治めているフィルズと言う町の雑貨屋の店主の奴隷をしておりましたが、ある日私は冒険者風の体の大きな男性の剣に触れてしまい激怒した冒険者風の男性から殴る蹴るの暴力を受けていました。
私はこのままでは死んでしまうと思いながらも如何しようも無く、意識を失ってしまいました。
気付くと昔父や母と過ごしていた頃に見たことがあるような高級そうな家具や寝具が所狭しと設置されている部屋でベッドに寝ておりました。
奴隷である私がベッドでねるなど有り得ないので、私は死んでしまったのかと思い寝心地の良いベッドに再び体をうずめ、意識を手放しました。
再び目を覚ますと、今度は見たことも無いメイド風の初老の女性が私の顔を覗き込んでいました。
私はビックリして体を起こしたのですが、その女性は私を再びベッドに寝かせ、そのままの状態でこれまでの経緯を話して下さいました。
メイドさんの名前はハンナさんと言い、ブリュトゼルス辺境伯様に仕えている侍女だと名乗りました。
そして私を助けてくださったのはブリュトゼルス辺境伯家のご次男であるクリストフ様だと教えて下さいましたが、最初は何を言っているのだろうかと理解が出来ませんでした。
私は奴隷であり人間ではなく物なのです。
その物である私を貴族様が、しかも大貴族であるブリュトゼルス辺境伯様の一族の方が助け治療をするなど考えるまでもなく有り得ない事です。
自分でも解っていたけど私の怪我はかなり重傷だったはずで、私の怪我を治すには大金が必要なのは私でも解る事です。
そして大金を出して奴隷の怪我を治そうなんて言う貴族様は居ないのです。
壊れてしまった物は捨てれば良いのですから・・・
「ご、ご主人様、お助け頂き有難うございました。私はフィーリアと申します」
大怪我をした奴隷の私を引き取り治療をしてくださったクリストフ様は綺麗な金髪に白い肌が映えているとても美しいお顔をしておられました。
これほど美しい方を私は見た事がありません。
「私はクリストフだ。ご主人様ではなくクリストフと呼んでくれ。それと体調はどうだい?」
「おかげ様でどこも痛くありません。クリストフ様」
大貴族であるご主人様を名前で呼ぶなんて叱られ殴られるのではないかとドキドキしてしまいましたが、クリストフ様は私に笑顔で良かったと仰って下さいました。
その後、クリストフ様は私が何故奴隷になったのか、どのような事ができるのか色々聞いてこられましたが、私は包み隠さずお話をしました。
「暫くはハンナについて侍女としての教育を受けてもらうからね。一人前になるまでは私の専属侍女見習だよ」
奴隷なのに侍女って、クリストフ様は少し浮世離れした考えをされている。
「はい、承知致しました」
クリストフ様は急に笑い出しました。
「そんなに改まらなくて良いから。もっとリラックスして」
リラックスと言われましてもその様な事ができる訳も無く困っていましたら、クリストフ様は「肩の力を抜けば良いんだよ」と言って下さいました。
それと「ハンナには内緒にね」とも付け加えておりました。
ハンナさんに聞いたのですが、クリストフ様は生まれつき病弱で11歳まで寝たきりで何度か心臓が止まる事があった程に病弱なお体なので専属侍女としてクリストフ様の体調には気を使うようにと厳命されました。
そして11歳より前の記憶も無くされていると聞いた時には驚きました。
クリストフ様はもう直ぐ13歳になられるそうですが、たった1年半の記憶しかもっていないのです。
とても悲しい事でないでしょうか。
もし私がそんな状態であればあのように明るく振舞うなど到底出来ないでしょう。
クリストフ様はそんな事を感じさせないほどに周囲の方に笑顔を向けております。
この時、私に何ができるか分りませんが、私がクリストフ様をお守りしなければと思いました!
記憶が無くなり不安ではないのかと、後にクリストフ様本人に聞いたのですが、クリストフ様はそんな事を気にしてネガティブに考えているより、これからどうするかポジティブに考える方がよっぽど有意義だと思っていると仰っておりました。心の強いお方です。
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