チートあるけどまったり暮らしたい
008 クッション
奴隷の女の子はフィーリアと言う名前だ。
気が付いた時に知らない部屋でベッドに寝かされていた事に暫く困惑していたと聞く。
説明はハンナがしてくれたので俺の手は煩っていない。
それと俺を警護していたレビスを問い詰めてやったら、予想通り「私達が出るまでもなくクリストフ様なら大男を半殺しにされると思っていました」と抜け抜けと言いやがった。
このレビスは俺の剣の師匠の1人でもあるので、俺の実力を知っているのだ。
イケメンだし天罰が落ちれば良いのに!
「ご、ご主人様、お助け頂き有難うございました。私はフィーリアと申します」
今回、フィーリアが暴力を受けていても殆ど何も思う事はなかったのだから、あまり仰々しく考えて欲しくはないが、フィーリアは嬉しそうに俺に尻尾を振ってくる。
因みにフィーリアは犬の獣人なのでケモ耳も尻尾もある。
「私はクリストフだ。ご主人様では無くクリストフと呼んでくれ。それと体調はどうだい?」
「おかげ様でどこも痛くありません。クリストフ様」
フィーリアは確りとした受け答えをしているし、字も書けると言うのでそれなりの教育を受けていたのだと思い、奴隷になった理由を聞いてみたら元商人の子で親である商人が魔物に殺され借金を返済する事ができずに奴隷として売られる事になったそうだ。
よくあるパターンではある。
これも命の重さが軽いファンタジー世界の常なんだろう。
奴隷とは言え、ブリュトゼルス辺境伯家の使用人なのでハンナに預けルーナ同様に俺の侍女として教育をしてもらう事になったのだが、母上が暫くフィーリアを着せ替え人形にしていたのでフィーリアもグッタリしていた。
翌日、再び町中に繰り出した俺の傍らには6人の護衛が存在した。
昨日より増えているのはハンナの指示だそうだ。
俺がトラブルを起こさないように見張るように護衛達に指示をしていたのが聞こえてきたぞ!
今日は何事も無く買い物ができた。
宿に帰って早速魔法陣を書き込む。
これで俺の尻も王都までもつと思いたい。
今回、馬車が4台に俺と母上と侍女長のハンナに俺専用の侍女のルーナ、他に侍女が2人と従者が6人に騎士団員が33人と魔術師団員が3人と大所帯で旅をしているが、俺の馬車には母上とハンナとルーナが同乗している。
今回、俺がフィーリアを連れてきたのでフィーリアも同乗して王都まで行く事になった。
当然の事だが、フィーリアは恐縮しっぱなしだった。
小動物みたいで可愛いな。
俺達の乗っている馬車は貴族用の豪華な作りに居住スペースも大きいので5人でも余裕で乗れる馬車になっている。
それと俺が魔法陣を書き込んだクッションが役立った。
クッションには振動吸収の魔法陣を施している。
母上にも好評で褒められてしまった。
母上は相変わらず俺を猫可愛がりで、べた褒めである。
一応、馬車に乗る者達全員分を用意したので配っておいたのだが、家臣達にも好評だった。
ただ、騎馬に跨っている騎士達には流石に用意していなかったので、馬車組の家臣達はかなり羨ましがられたようだ。
「相変わらずクリストフ様は面白い事を思いつきますね」
「先生が良かったのですよ。ロザリア団長」
「私は何もしていませんよ」
「しかし、これを王都やブリュンヒルで売り出したら売れると思いますよ」
フェデラー副団長が商売気を出してきたが、この程度のマジックアイテムでは直ぐに真似され値崩れしてしまうだろう。
しかし、真似される前に数量限定で売り出すっていうのは考えておこう。
王都の屋敷に着くと直ぐに父上の執務室に挨拶に向う。
「来たか、旅は辛くなかったか?」
父上は母上とハグをした後に、俺にも抱き着いてきたのでちょっと引いたが、それだけ俺を愛していると言う事で許そう。
「途中、何度かお尻にヒールをかけましたが、大丈夫です」
「アーネスト、クリストフがとても有用なクッションを作りましたの。そのおかげで最後は大分楽になりましたわ」
「ほう、そうなのか?そのクッションを見てみたいものだな」
父上に請われてクッションを見せるとその座り心地に父上も感嘆する。
このクッションの真価は馬車などの振動を吸収する性能だが座り心地も良いのだ。
そんな感じであれよあれよと販売が決まってしまったが、この両親は俺が受験生だと言う事を忘れている気がする。
それとフィーリアの事も父上に話したら俺が責任をもって管理すれば良いと言ってくれた。
その後は久し振りに家族でディナーを摂る事になったが、ここで他の家族と顔を合わす事になった。
長男と長女は騎士団員なので騎士宿舎、次女も王立魔法学校の寮で暮らしているので会えたのは妹で三女のアントワネットと第2夫人のフリージアさん、第3夫人のアンネローゼさんの3人だった。
11歳以前の記憶が無い事は皆知っているようで俺の行動に不審は抱いてないようだが、妹のアントワネットは俺に本を読んでもらった記憶があると言う事で少し悲しい表情だった。
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