ジュエリークラフター 【魔物を宝石に変えて魔王も倒せるけど勇者じゃないおっさん】

なんじゃもんじゃ

005A_アシスタント

 


 俺に家族ができた。とても可愛いウサ耳の少女だ。
 俺の娘の名前はユキというんだ。可愛いぞぉ。
 現在、ユキは俺の横ですやすやと寝ている。川沿いの大きな岩の下にテントを張って野営をすることにしたのだ。
 周囲の警戒はジュエルモンスター、略してジュエモンに任せている。ジュエモンたちはとても優秀だから安心して寝ることができる。


 そして、またあの浮遊感が俺を襲った。


「またか……」
『何度もお呼び立てして、申し訳ありません』
 呼ばれても拒否権がない。相手が神なのでと恨めしく思うが、文句を言える相手ではない。肌で感じる圧倒的な上位者の存在。


「いえいえ。それで、今度はどのようなご用件でしょうか?」
 なんか卑屈だな。これはいかん、主導権をこっちに引き込まなければ。
『ラーディアの処分が決まりましたので……あら……まぁ、そんな……』
 話の途中でかなり挙動不審な声が聞こえてきた。一体全体なんなんだと怪訝な表情になる。
『も、申し訳ありません。貴方はたった数日でレベルがとても上がっていますね?』
「ドラゴンに襲われたのです。でもアフロディーテさんにもらったスキルのおかげで生き残りました」
『……それはよかったです。スキルもあると便利でしょ?』
 少し動揺したような声のアフロディーテさんだ。


「今思えば便利ですね。ところで、スキルを4つもらったのですが、2つじゃないのですか?」
『2つは異世界転生特典です。そして2つは私からのプレゼントです』
「そんなことをして大丈夫なのですか?」
『大丈夫ですよ。これでも上位の神なのですよ』
 上位の神と聞き、やっぱりかと思った。ダメ神とは違う神々しさを感じるし、対応をできるだけ丁寧にした自分にグッジョブだ。


「丁度よいので質問をしてもよいですか?」
『ええ、答えられることでしたら』
「カーシャ姫が勇者じゃないと魔王を倒せないと言っていました。俺は勇者ではないので、魔王を倒せないと思うのです」
『うふふふ、魔王を倒すのは職業ではないのです。スキルを持っていることが前提になるのですよ。ですから、スキルを持っていないこの世界の人では魔王を倒せないのです』
 なんだよ、職業の勇者はどうでもいいのかよ。
『勇者職はレベル成長が早く能力の成長も早いので意味がないわけではありませんよ』
 成長が早くて強い勇者職とスキルの組み合わせで魔王討伐ができるわけだ。


「そう言えば、俺のこのレベルってどんな感じなんですか?」
『えーっと、それは……―――です』
 急に声が聞こえづらくなった。
「え? なんですか?」
『人外のレベルです。今の貴方なら魔王も瞬殺です!』
「……人外……? 魔王も瞬殺……」
『レベル1,000の人間なんていません。レベルは300から400もあれば凄いことです。それでも数十年に1人いるか、いないかです。過去の勇者なら800ほどの方もいましたが……今の魔王も800ほどですから相手にならないかと』
「はぅ……」
『大丈夫ですよ! 貴方なら問題ないですよ!』
 何をもって問題ないと言うのか、理解に苦しむ。


『ゴホンッ。そんなことより今回ここに呼んだのは他でもありません』
 俺にとっては重要なことだと思われるが、そんなことと言われてしまった。
『ラーディアの処分が決まりましたので、貴方にご報告をと思いまして』
 今の俺にはダメ神のことより、自分のことの方がとても重要である。
『ラーディアは降格処分と、地上勤務となりました』
 アフロディーテさんは何か言っているようだけど、俺の耳には届いていない。
『ですから、貴方のアシスタントとして使ってやってください』
「俺は……人外……何が問題ないのだろう……俺は人外……何が問題ないのだろう……」
『えーっと、聞いていますか? ……おーい、クルルギ様? おーーーい、聞いてますかーーー!?』
「え? あ、はい、聞いてますよ!」
『では、そのようなわけで、よろしくお願いいたしますね』
「はい、よろしく? ん?」
 そこで浮遊感を感じ、気づけば河原の岩の下で横になっていた。


「はぁ、人外か……」
 テントから外に出て星空を見た。今日も綺麗な星が光り輝いている。
「ステータスか……レベルのある世界か……明日考えようっと」
 再びテントの中に入ろうとした。その時……。
「ちょっと、私の寝床はどうするのよ」
 いきなり声をかけられ焦って顔を上げた。見ると、金髪の女性が焚火の向こうで立っていた。
「誰?」





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