ジュエリークラフター 【魔物を宝石に変えて魔王も倒せるけど勇者じゃないおっさん】

なんじゃもんじゃ

003C_旅立ちの前

 


 この町には俺が知っているだけで3軒の宝石商の店がある。そして俺が一番信用できそうだと感じた店に宝石を持ち込んだ。
 これはただの勘なので、この店の店主が猫を被っているのかもしれない。それは俺の人を見る目次第なので、あまり信用はできないかな。


「素晴らしいエメラルドです。品質が上質の物ばかりですね。こっちのルビーも上質ばかりですね」
 宝石商は目を細めながらトレイの上に置かれたエメラルド8粒、ルビー5粒を鑑定して言った。
「できるだけ高額の引き取りをお願いします」
「はい、できる限りの金額は提示させて頂きます―――この金額でどうでしょうか?」
 店主は紙にすらすらっと買い取り金額を書き起こして俺に見せてきた。


 ・エメラルド(普通) ⇒ 2粒 銀板貨1枚
 ・エメラルド(上質) ⇒ 6粒 金貨15枚
 ・ルビー(上質) ⇒ 5粒 金貨12枚、銀板貨1枚
 ・合計 ⇒ 金貨28枚


 これが適正価格なのかは分からない。騙されているとしたら俺の人を見る目が曇っていたということだろう。
「いかがでしょうか?」
 にこやかな表情で俺に話しかけてくる初老の店主を信じるしかないな。騙されたら、それは勉強代だと割り切ろう。
「これでお願いします。支払いは金貨27枚と銀貨10枚でお願いします」
「ありがとうございます。では、さっそく代金をご用意しますので、少々お待ちください」
 店主は宝石が載ったトレイを引っ込めると、カウンターの下からじゃらじゃらとお金を取り出した。
 俺の考えだと金貨1枚(1万レイル)は日本円で10万円相当だ。だから金貨28枚は280万円相当になる。これだけの金があれば俺とユキの2人だったら金に困らずに旅ができそうだ。


 店主から金を受け取った俺はユキを連れて露店巡りをした。
 露店は串焼きのような料理から野菜や果物、他にも色々な物が売っているので旅に必要だと思う物を物色しては買い込んだのだ。一番高かったのは服だった。ユキの服もそうだが、俺の着替えも買ったし外套も買った。
 この世界の旅は野宿も普通にあるらしいので、野宿ができるように毛布も購入した。
「結構買ってしまったな」
「ご主人様、ユキの分までごめんなさいなのです……」
 ユキの分もしっかりと買っているので、自分にお金を使っていることにユキは引け目を感じているようだ。
「ユキは俺の家族だ。気にするな」
 そう言って、ユキの頭を撫でてやった。
「かぞく……」
 ユキは何やらぶつぶつ言っている。どうしたのだろうか?
「さぁ、行くぞ」
「は、はいなのです」


 買った物はアイテムボックス(極)に放り込んであるので、荷物はない。だから、このまま旅に出ることができるけど、歩きはきついので馬車に乗ろうと思う。
「駅馬車はどこに行けば乗れるかな? ユキは知っているか?」
「駅馬車でしたら、あちらなのです。でも……」
「ん? どうした?」
「ユキは奴隷なのです。奴隷は駅馬車に乗せてもらえないのです」
 どうも駅馬車は奴隷を乗せないらしい。チャーターなら別だけど、駅馬車と違ってかなり割高になるらしい。


「そうか……それなら歩けばいいさ」
「ごめんなさいです」
 俺はユキの頭をがしがしと乱暴に撫でてやった。
「気にするな。そんな駅馬車なんて、こっちからお断りだ」
 ユキが悪いわけではない。この国の制度が悪いのだ。
「歩いていくとなれば、靴もいい物を買わないとな」
 金はまだあるけど、出費は少しでも抑えたかった。でも、歩くと決めた以上は靴はいい物にしたい。


「靴、めっちゃたけーな!」
 靴は銀板貨1枚と銀貨4枚だった。つまり金貨1枚出すと銀貨1枚がおつりで返ってくる。それを2足買った。外套を買ったときにも思ったが、この世界の服や靴はめちゃくちゃ高い。
「ユキは裸足でいいのです」
「ダメだ。裸足だと怪我をするだろ」
「はぅ、ありがとうございますなのです」


 断るユキに靴を履かせて、最後に武器と防具の店を訪れた。
 歩きともなれば自分の身は自分で護らなければならない。ユキもいるので、とても大事なことだ。
「もしもがあるといけないので、ユキも武器と防具をつけてくれ」
「ご主人様はユキが護るのです!」
「いやいや、もしもの場合に備えてだよ。ユキは俺が護るから」
「ありがとうございますなのです」
 武器は俺がショートソード、ユキが打撃にも使える篭手をチョイスした。
 ユキは篭手を合わせて具合を確かめて嬉しそうにしていた。
 防具は2人とも胸当てと、ユキには脛当てを買った。脛当てにはトゲトゲがついていて、あれで蹴られたら痛いでは済まない気がした。
「ご主人様、ありがとうございますなのです!」
 まだ8歳の子供に武器と防具をつけさせて何をする気なんだと考えないではないが、もしもの時にユキが生き残れるようにしてやらないとな。


「よし、早速町を出るか」
「はいなのです!」
 昼前なので今から旅立っても町のそばで野宿だろう。野宿になれるのには丁度よいだろう。


 

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